犬猫殺処分減、愛護団体が頼り 2017年度初めて5万匹下回る
環境省は今月、全国の自治体で殺処分された犬猫の数が2017年度、初めて5万匹を下回ったと発表しました。一方で、朝日新聞の調査からは、動物愛護団体の活動が、殺処分減少の原動力になっている実態が浮かび上がってきました。
収容後、多くの自治体が「団体譲渡」
環境省の発表によると、17年度に全国の自治体で殺処分された犬猫は4万3227匹(負傷動物を含まず)。この5年で、3分の1に減少した計算だ。13年に施行された改正動物愛護法は「殺処分がなくなることを目指す」という目標を初めて盛り込み、多くの自治体が、殺処分減少に向けて本腰を入れ始めている。
しかし、朝日新聞が動物愛護に関する事務を所管する全国の都道府県、政令指定都市など計115自治体全てを調査したところ、16年度では90の自治体が、収容した犬猫を動物愛護団体(個人ボランティア含む)に引き取ってもらう、いわゆる「団体譲渡」を行っていることが分かった。
団体譲渡した犬猫の数を集計できている83自治体を合計すると、少なくとも犬は8300匹、猫は1万2929匹が動物愛護団体に引き取られていた。一方で環境省が集計した同年度の全国の合計譲渡数は犬1万7868匹、猫2万9551匹(負傷動物を含む)。譲渡によって殺処分を免れた犬の少なくとも46.5%、猫の少なくとも43.8%が、動物愛護団体に救われていたことになる。
団体譲渡の割合が都道府県で最も高かった茨城県では、犬で97.9%(880匹)、猫で100%(597匹)に達していた。同県動物指導センターの担当者は「収容数が多いため、譲渡活動を自分たちで行う余裕がない。動物愛護団体の皆さんに譲渡後のアフターフォローも含めてかわりにやってもらう形になっており、申し訳ない気持ちだ。本当にありがたいし、頭があがらない」という。
収容した犬猫をどれだけ殺処分したかを、「殺処分率」として自治体ごとに見ても、団体譲渡の実施が殺処分の減少に効果をあげていることがわかる。団体譲渡を行う90自治体の殺処分率は犬で23.8%、猫で47.3%。一方で団体譲渡を行わない25自治体では犬で32.8%、猫で64.7%と高かった。
無理重ね努力/「蛇口」対策を
ただ、受け入れ先の動物愛護団体には大きなしわ寄せがいっている。
埼玉県内で保護猫カフェ「ねこかつ」を運営する梅田達也さんは、17年4月から複数の団体と連携し、茨城県動物指導センターに収容された猫を全て譲り受ける「全頭引き出し」を始めた。今年度も10月までに、子猫を中心に270匹を引き受けている。
乳飲み子の場合、生後3週ごろまでは3時間おきに哺乳が必要。離乳しても子猫のうちは下痢をしやすく、それがすぐ脱水症状や死につながるため、頻繁に動物病院に駆け込む。こうして子猫であればおよそ2カ月、成猫の場合は半年から1年ほど世話をし、人慣れさせて、ようやく譲渡会などに出せるようになる。新たな飼い主が見つかるまで、長いと3~4年かかる猫もいる。梅田さんは「1匹でも多く救いたいが、人手も資金も限界がある」と話す。
神奈川県は17年度まで4年連続で犬猫の「殺処分ゼロ」を達成してきたが、やはり団体譲渡率は高く、犬で91.5%(162匹)、猫で98.2%(608匹)に達する。
公益財団法人「神奈川県動物愛護協会」代表の山田佐代子さんは、「自治体から団体譲渡を受け、血のにじむような努力をして新たな飼い主を探している団体がたくさんある。悲願である『殺処分ゼロ』を達成するため、皆ものすごい無理を重ねている」と打ち明ける。全国的に見ると、収容能力を超える数を引き取り、虐待的な環境に犬猫を置いてしまう事例も出始めている。
いま山田さんが求めるのは、殺処分される犬猫の譲渡数を増やすことにとどまらず、そもそもの収容数を減らす取り組みだ。「国や自治体は急ぎ、世の中に犬や猫をあふれさせている悪質なペットショップや繁殖業者への規制強化などに取り組み、供給の『蛇口』を閉める対策に乗り出してほしい」と話す。
今年度は、動愛法の5年に1度の改正期にあたり、超党派の国会議員らが現在、自治体による犬猫の「引き取り拒否」規定の強化や、犬猫の販売業者による飼育・販売方法の適正化をはかるための数値規制導入などを検討している。
(太田匡彦)
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