警察犬が足りない! 高齢者の捜索で出動急増、負担も大きく

沢田拓士巡査部長とバリー号=横浜市栄区
沢田拓士巡査部長とバリー号=横浜市栄区

 行方不明になった人などを捜索する警察犬の出動が急増している。認知症などで行方不明になる高齢者が増加していることも一因にある。一方、神奈川県内の警察犬の頭数は10年前から変わらないまま。犬への負担が大きくなるなか、県警は訓練内容などを模索している。

 昨年11月、冷え込みが厳しくなってきたある日、川崎市内で90代の女性が行方不明になった。午前11時半に姿を消してから約5時間が経過。捜索していた沢田拓士巡査部長(31)とラブラドルレトリバーのバリー号は、女性の自宅から70メートルほど離れた民家のガレージで女性を発見した。真っ暗な中、駐車中の車の下に潜り込んでいた。女性は認知症を患っており、なぜ自分が車の下に入ったのか覚えていないという。沢田さんは「誰も気づかないまま車を発進させていたら、大変なことになっていた」と振り返る。

 警察庁によると、全国で認知症またはその疑いによる行方不明者数は、2012年の9607人から年々増加しており、16年には1万5432人にのぼった。県内でも同様に増加傾向にあり、県警によると、捜索にあたる警察犬の出動件数も併せて増えているという。警察犬が高齢者の捜索にあたった件数は、07年に70件だったが、17年には4・8倍の336件になった。

警察犬出動件数(県内)と認知症の行方不明者数(全国)の推移
警察犬出動件数(県内)と認知症の行方不明者数(全国)の推移

警察犬の訓練も手探り続く

 しかし、県警が直轄する警察犬の頭数は、10年前から変わらず15頭のまま。「正直余裕はない」と鑑識課で計14年間警察犬係を務める赤坂一彦警部は話す。出動要請が連続で来たり、昼夜を問わずに出動したりと、警察犬への負担が大きくなっているという。

 鑑識課も警察犬の訓練内容を変え始めている。これまで主流だった犯人の足跡を追う訓練から、行方が分からなくなってから時間が経ち、足跡のにおいが消えた後でも、漂ってきたにおいを嗅ぎ分けられるようにする捜索訓練を増やしているという。「もっといい訓練方法がないか、常に模索しています」

 だが、訓練を重ねても、発見するのはかなり難しい。出動要請が来るのは、家族や署員が捜して、それでも見つからなかった場合。姿を消してから何時間も経っていて、においはほとんど残っていない。警察犬が捜索可能なのは数百メートルの範囲までだが、高齢者でも10キロ以上先まで歩いていることもある。昨年は336件の高齢者の捜索のうち、発見につながったのはわずか9件だった。

高齢者のネット登録呼びかけ

 近年では、携帯電話やGPS機能がついたグッズを持った不明者もいる。昨年11月には、葉山町で70代の女性が行方不明になったが、家族が靴につけていたGPSにより、鎌倉市内で発見された。「自宅周辺から捜索を始めていたら、見つからなかったでしょう」と赤坂さんは話す。

 また、県内の各市区町村は、「徘徊高齢者SOSネットワーク」への登録を呼びかけている。認知症などにより、1人で外出して行方が分からなくなる恐れがある高齢者の名前や連絡先、身体的特徴などを事前に登録すると、行方不明になった際、警察の他、地域包括支援センターや公共交通機関、郵便局、コンビニエンスストアなどの協力機関が連携し、一刻も早い発見を目指す仕組みだ。登録は各市区町村ごとに受け付けている。

(佐藤栞)

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