里山にペットと一緒に眠れる、樹木葬の寺 墓守は7匹の猫たち

 家族として過ごしてきた犬や猫と、死後も一緒に過ごせたら……。そんな願いが叶う樹木葬の禅寺が、房総の美しい里山にあると聞き、訪ねてみた。

(末尾に写真特集があります)

 樹々が日に日に葉を広げゆく丘に、里山の風が吹き抜ける。スミレやマーガレットの咲く小径を、猫たちが愉しげに散策している。まるでイングリッシュガーデンに迷い込んだような錯覚さえ覚えるが、よく見れば、花々の下には御影石の小さなプレートが点在している。

 そこには、人の名前と共に「タロウ」「ミケ」などと、ペットと思われる墓碑銘が彫られている。
そう、ここは、ペットも「家族」の一員として、飼い主と共に同じ土に眠ることができる樹木葬の墓苑なのだ。樹木葬とは、お骨を自然に還す「自然葬」のひとつで、近年、人々の関心を集めている。

季節の花に囲まれた墓碑銘
季節の花に囲まれた墓碑銘

ネズミよけの猫「南無」

 湾岸には京葉工業地帯の工場群が立ち並ぶが、内陸に入ると、里山風景が広がり、野菜作りや酪農も盛んな千葉県袖ケ浦市。そののどかな里山に建つ瓦谷山(がこくさん)真光寺は、460年の歴史を持つ曹洞宗のお寺である。

「20年前、縁あって東京からここに来たときには、寺は丘の下にあり、庭は草だらけで虫やヘビがうようよ。本堂はネズミの糞だらけで、『これは猫でも飼わなきゃ』と、すぐに愛護センターから子猫をもらってきたんです」

 ご住職・岡本和幸さんの奥さまである貴久代さんは、そう語る。

「南無(なむ)」と名づけたその猫のおかげで、荒れ寺暮らしは、ずいぶんと楽しくなったそうだ。
ご夫妻は、檀家さんたちの協力を得て、年月をかけ、汗水流して寺や周りの自然を補修再生していった。もともとは、美しい自然に恵まれた里山だったから、手を入れると、みるみる甦っていった。

 迷い猫、押しかけ猫、通い猫……猫たちも増え、にぎやかになった。タヌキもイノシシもモグラも鳥も虫もみな土に還るこの地に、寿命を終えた愛猫たちを葬った。

「人も動物たち草木もみな、地球という大自然に生かされ、やがて土に還っていく、等しいいのち。それが仏教の教えです。私たちも、先だった猫たちと同じ土に眠ることにしています。ちょっと楽しみなくらい」と、貴久代さんは微笑む。

住職夫人貴久代さんと野道で遊ぶ猫たち
住職夫人貴久代さんと野道で遊ぶ猫たち

ペットも一緒に

 周りの植生と連なるよう、計画的に植樹をしていき、里山の一部としての小高い丘を樹木葬の墓苑として開いたのは、13年前のこと。

 そのとき、「ペットも一緒に埋葬できませんか」と問われ、「いいですよ」という返事がごくごく自然に出たのだという。

 貴久代さんは言う。

「今でも稀有ですが、当時、ペットも同じ土に埋葬をする寺はどこにもなかったと思います。でも、『家族として暮らしてきた犬や猫たちと一緒に眠れたら』というのは、とても素朴な感情だと思いますし、仏教本来の教えにもそぐうことでしたから」

 以来、墓苑の案内資料にも「ペットも家族として埋葬できます」と明記。見学に訪れて「こんな美しい自然の中で共に眠りたい」と申し込む人が増えていった。「先だった愛猫たちが待っていてくれると思うと、死がちっとも怖くなくなった」「墓参が一家の楽しみ」と大好評だ。

 かつて荒れ寺だった面影はどこにもない。新築された大伽藍は手入れの行き届いた丘の上に建ち、里山を望む。

猫7匹がお墓を見守る

 現在の寺猫は7匹。田んぼに落ちていた「リオ」。「おいら、今日からここの子になる!」と押しかけてきた「アトム」と「モキチ」。お外が大好きな野性3きょうだいの「ワカメ」と「ヒジキ」と「クマチ」。ほぼ山猫の「カミ」。寺猫たちは、気が向けば、墓苑の入り口で受付をしたり、道案内をしたり、墓守をしたり……。「寺は、自然との共生活動から学ぶ場所」という住職夫妻の思いを、猫たちも共有しているのだ。

 共によりよく生きるための開かれた寺をめざし、地域の人々や子どもたちと里山再生活動などの社会活動を続ける真光寺では、「保護猫・保護犬の里親探しをする会にも場所を提供したい」としている。

墓苑を案内してくれたクマチ
墓苑を案内してくれたクマチ

 猫たちと共に、墓苑をひと巡りした。跳びはねる木漏れ日はもう初夏のようで、野スミレがびっしりと咲く足元をピカピカの目をしたカナヘビの子が元気よく走っていった。夏には田んぼにホタルが飛ぶそうだ。大きな自然の巡り、万物のいのちの巡りが、ここにあった。

 愛猫と抱き合って眠る土の上で、寺猫たちが遊び回る図を想像し、愉しくなった。いちばんつつましい「野花の苑(にわ)」区画を申し込みたい気持ちが日に日に膨らんでいる。

佐竹 茉莉子
人物ドキュメントを得意とするフリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。著書に「里山の子、さっちゃん」「猫だって……。」など。Webサイト「フェリシモ猫部」での「道ばた猫日記」連載は8年目。

虹の橋のたもとに行った大切なペットを送るお手伝いをいたします。24時間365日全国対応します。お気軽にお電話でご相談ください。

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この特集について
猫のいる風景
猫の物語を描き続ける佐竹茉莉子さんの書き下ろし連載です。各地で出会った猫と、寄り添って生きる人々の情景をつづります。
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