犬が顔を背ける!? 目をそらすときの気持ちは?
じっとこちらを見上げてくる愛犬のキラキラした目に、思わずキュンとしてしまうという飼い主は多いと思います。好きな相手と視線を交わすことは、人間同士だけでなく、人間と犬にとっても、とても幸せでうれしい時間です。ところが、人間側が好意を持って見つめてみても、なかなかこちらを見てくれなかったり、目をそらしてしまったりする犬もいます。これはいったい、どうしてなのでしょうか?
目をそらすのはストレスから逃れるため
電車の中で、ふと視線を感じることはないでしょうか。そういうとき、私たちはいきなり視線の主を探すのではなく、窓に映る様子を眺めたり、何気ない仕草で周りを見渡したりします。これは、「こちらを見ている相手と正面から目が合ってしまうと気まずい」という思いがあるためです。
もしも、自分の方を見ていた相手に、こちらも正面から視線を合わせて、そのままずっとそらさずにいたら、どうなるでしょうか。「なんでこっちを見ているんだろう?」「感じの悪い人だな」と感じるのではないでしょうか。好きな人同士であれば、いくらでも見つめ合っていたいけれど、不快な思いをする相手とは、なるべく視線を合わせないようにするのは、私たちが普段から自然に行っていることなのです。
これと同じように、犬が視線を外すのも、ストレスから逃れようとする行為といえます。目をそらすときの犬は、相手に対して「敵意を持ってはいないよ」ということを示し、「だから、あなたも私に注目しないでね」と伝えているのです。これに気付けずに、じっと犬を見つめ続けたり、「どうしてこっちを見てくれないの!」と、顔を無理矢理自分の方へ向けようとしたりすると、犬は強いストレスを感じてしまいます。
犬の視線をそらす行為は、相手に敵意がないことを伝えます。これはつまり、「怖い」と思われている可能性があるということでもあります。もしも、飼い犬がそのような仕草を見せたときは、自分が犬にとって「怖い存在」になっていないか考えてみましょう。
また、犬はストレスを感じているときも同じように目をそらすため、トレーニング中にこのような仕草が見られたときは、要求が難しすぎたり、トレーニングをすること自体にストレスを感じたりしている可能性があります。
背中を向けることも
トレーニング中にストレスを感じた犬の中には、目をそらすだけでなく、背中を向けてしまう犬もいます。これは、「視線をそらしてもストレスから逃れられず、それどころか、より強いストレスがかかってしまった」というときなどに見られる行動です。
強い口調でトレーニングを行ったり、力ずくのしつけを行ったりすると、犬にストレスがかかります。このようなやり方でのトレーニングを続けていても、犬と良い関係を築くことはできないでしょう。
犬のストレスを察知して、トレーニング方法を見直したり、その犬のペースに合わせたしつけを行ったりすることが大切です。
初対面の犬とは視線を合わせないことも大切
初対面の犬など、信頼関係を築くまえの犬に対しては、視線を合わせたり、正面から顔をのぞき込んだりしないように気を付けましょう。正面から視線を合わせ続けていると、それだけで「怖い」と思われてしまうことがあるからです。
犬好きの方は、かわいい犬を見かけると、ついつい大声を上げたり、走り寄ったり、上から覆い被さるように両手を差し出したりしてしまうことがあります。ところが、これらはすべて、犬にとって恐怖の対象となる行為です。まずは、自分が敵でないことを教えるためにも、顔を向けないで、ゆっくりと近づいてみてください。
犬と素早く打ち解けるためにも、犬が伝えようとする行為を理解し、人間側もその行為を上手に使いこなしましょう。
著者:西川文二
発行:SBクリエイティブ(サイエンス・アイ新書)
価格:952円+税
オールカラー、224ページ
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