ペットとキスで思わぬ病気! 予防のためには一緒に寝ないで

 猫から「コリネバクテリウム・ウルセランス菌」に感染したとみられる福岡県の60代女性が亡くなった。国内での死亡例は初めてだ。室内飼いが増え、人とペットの距離が縮まる中、過ぎた接触は飼い主に思わぬ病気をもたらす?

 

 

■世話した猫から菌

 厚生労働省によると、女性は2016年5月、呼吸困難に陥り、3日後に亡くなった。血液などからコリネバクテリウム・ウルセランス菌が検出された。女性は屋外で猫3匹にえさをやるなど世話をしていたが、うち1匹から菌が検出されており、猫から感染した可能性が高いという。


 この感染症は、猫や犬のくしゃみや鼻水などからうつる。のどの痛みやせきなど風邪に似た症状が出て、重症化すると呼吸困難などに陥る。国立感染症研究所によると、国内では01年に初の患者が確認され、昨年11月までに25人の感染が報告されている。その多くが猫や犬からの感染とみられる。同省の担当者は「くしゃみや鼻水などの症状がある猫や犬に触れる際は注意し、早めに獣医師の診察を受けさせてほしい」と話す。

 

 

■高まる感染リスク

 動物から人に感染する病気は、「人獣共通感染症」「動物由来感染症」「ズーノーシス」などと呼ばれる。一昨年の夏には野良猫にかまれた西日本在住の50代の女性が重症熱性血小板減少症候群(SFTS)で死亡。マダニにかまれてSFTSウイルスに感染した猫を介し、女性もウイルスに感染したのが原因とみられる。


 こうしたケースはまれだが、猫や犬からうつる病気はほかにもある。最近はかまれたり、ひっかかれたりするだけでなく、動物が持つ菌を口や鼻から取り込んで感染するケースにも注目が集まる。室内飼いが増え、猫や犬にキスをしたり一緒に寝たりする人もいる。獣医師の荒島康友・日本大学医学部助教(臨床検査医学)は「以前に比べてペットと人との距離が近づいたことで、感染のリスクは高まっている」と指摘する。


 中でも代表的なのが「パスツレラ症」だ。病気を引き起こすパスツレラ菌は猫のほぼ100%、犬の7割ほどが口の中に持っている。感染すると傷が腫れて痛んだり、せきや熱など風邪のような症状が出たりする。重くなると髄膜炎や敗血症を起こし、最悪の場合、死亡することもある。高齢者や糖尿病などがある人は重症化しやすい。


「パスツレラ症」の患者は年々増えている。荒島さんが全国の病院に行った調査では、1987年に約35人だったパスツレラ症の患者数は2011年には約700人に増えているという。

 

 

■対策取って予防を

 これらの病気には抗菌薬が効く。ただ、犬や猫は症状が出ず、飼い主も症状が風邪に似ていて、感染に気づかない。医療機関にかかっても、医師も見抜けずに治療が遅れてしまいがちだ。実際の患者数はもっと多いとみられる。


 荒島さんは「どんなに清潔にしていても動物の体液や排泄(はいせつ)物には菌がいる。そのことを理解したうえで接することが大事だ」と指摘。感染を防ぐには、動物とキスや口移しはしない▽同じ部屋で寝ない▽動物の爪をこまめに切る▽動物のフンや尿はすぐに処分する▽動物に触れた後は十分に手洗いをする、などを徹底することが大事という。「対策を取ることで感染のリスクは下がり、ペットとの楽しい生活が送れる」と話す。


(土肥修一)

 

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