親猫を捜す子猫たち 原発事故の避難者によるミュージカル
東京電力福島第一原発事故の避難者らが出演するコーラスミュージカル「Cats in KOBE いのちと地球の物語」が14日、兵庫県芦屋市で上演される。猫の世界を通し、避難者らの苦悩を表現した内容だ。「奇跡の街合唱団」を主宰し、脚本・演出を手がけた村嶋由紀子さんに、上演に向けた思いなどを聞いた。
――原発事故を題材にした理由を教えてください
阪神・淡路大震災を芦屋市で経験した後、主宰する合唱団で、震災をテーマにした作品を発表してきました。3年前、震災の風化をとりあげた作品を上演した際、招待した原発事故の避難者の一人に「私たちのことも作品にしてほしい」と声をかけられたのがきっかけです。
関西へ避難してきた人たちと交流してきましたが、故郷の人間関係を切って、すべてを捨てて避難する決断がどれだけ大変なものなのか。「子どものために」という親の覚悟に心を打たれました。
避難者の中には、「受け入れてもらえるか不安だから」と、避難していることを周囲に打ち明けられない人もいます。でも、喪失感や孤独をわかってほしいとの思いがあるのも事実。ミュージカルに出演する避難者の思いが、観客に伝われば。出演する子どもたちには、避難を決めた親を誇りに思えるようになってほしいと思います。
――作品で大事にしたことは何ですか
ミュージカルには、放射能で汚染された土地から神戸に避難した子猫と、汚染された土地に残った親猫が登場します。避難した側と残る側、両方の立場を描きたかった。
現実の原発事故でも、放射能の影響を懸念して自主避難した人、地元にとどまる人のどちらも苦しい思いをしている。どんな選択をしても、周りの人はその判断を認める姿勢を持つことが大切です。
観客にとって、ミュージカルが原発事故や避難者について考えるきっかけになり、子どもたちの未来が少しでも安全になってほしいと願います。
(聞き手・岩田恵実)
ミュージカルのストーリーは、さすらいの猫が神戸で子猫と出会い、その親猫捜しの旅に出て、放射能で汚染された街で親猫を見つけるというもの。村嶋さんの夫で、ともに「奇跡の街合唱団」を主宰する檀美知生(だんみちお)さんがオリジナル曲の作曲を担当した。
上演は14日午後3時から、芦屋市業平町の芦屋ルナホール。若干枚の当日券を会場で販売する。大人2800円、大学生・高校生1800円、中学生以下など800円。
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