「忠犬」と人の物語に魅せられて…全国の犬像を撮影する写真家
全国各地を訪ね歩き、「犬の像」の写真を撮り続けているカメラマンがいる。埼玉県狭山市の青柳健二さん(59)。アジアを中心に国内外の棚田の美しい写真を発表してきた写真家だ。戌(いぬ)年を迎えるのに合わせて来年1月、犬像の写真展を開く。
(末尾に写真特集があります)
■忠犬がたくさん
青柳さんが犬像と出合ったのは2009年。妻の直子さん(48)、愛犬のビーグル犬・ヴィーノとともに、車で日本一周旅行をしている最中だった。
北海道小樽市で見たのは消防犬「ぶん公」像。消防車に一番に乗り込み、火災現場ではやじ馬の整理をし、絡まったホースを直したというエピソードを知った。「こんな犬の像が、全国にどのくらいあるのだろう」。興味を持って調べてみると、次々に出てきた。
死んだ主人を10年間も待ち続けたという東京・渋谷駅前のハチ公に負けない忠犬が多い。
新潟の雪山で雪崩に遭った主人を2度も救ったタマ公。テレビのアニメでとり上げられた盲導犬サーブは、名古屋市と岐阜県郡上市に像がある。迷った登山客を山小屋や登山口まで送り届けた大分のガイド犬、平治……。それぞれの像が大切にされていた。
中でもお気に入りは、江戸時代、主人に代わって伊勢神宮にお参りした「おかげ犬」だ。像は、三重県の伊勢神宮近くにある。
犬のお伊勢参り。にわかに信じがたい話だが、青柳さんは「伊勢神宮の方向に歩く犬がいれば、『感心な犬だ』とさい銭や食費を渡す人がいた。犬は人について歩き、人は犬をかわいがる。人と犬との、ほのぼのとした関わりが感じられる」。香川県琴平町の「こんぴら狗(いぬ)」も同じような「代参犬」だ。
■人との物語重視
写真ガイドブック「日本の棚田百選」などの著者として知られる青柳さん。東南アジアなどの棚田の写真を撮影するときも、常に現地の人の営みに思いをはせてきた。犬像も同じだ。像そのものより、背景にある物語を楽しんでいるという。「結局は人がどう関わったかの話。棚田も犬像も同じなんです」。今年、逸話をまとめて「全国の犬像をめぐる・忠犬物語45話」という本を出版した。
青柳さんによると、全国には計600体ほどの犬像があるというが、これまで撮影したのはまだ120体ほど。戌年の来年も各地で撮影を続けていくつもりだ。認知症に近い症状が出ている10歳のヴィーノも連れていく。「ヴィーノに導かれて犬像に出合った気がする。今後も犬の視線で犬像を撮影し続けたい」
「全国の犬像をめぐる」と銘打った青柳さんの写真展は来年1月4日から16日まで(10、11日は休み)、さいたま市浦和区岸町のギャラリー「楽風(らふ)」である。入場は無料。
(恵藤公浩)
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