動物の「心の病」を診る 愛犬の死きっかけに獣医に
「動物の精神科医」と言われる認定獣医師がいる。全国で8人しかいない認定獣医師の1人が、岐阜市の奥田順之さん(31)だ。「心の病」などでかみついたり、ほえたりする動物の治療のほか、飼い主を失ったペットの行き場所を用意する取り組みもしている。
獣医師の学会「日本獣医動物行動研究会」が認定する「獣医行動診療科認定医」。2013年に制度が始まり、認定試験は年1回。専門知識を問うほか、カルテをもとに飼い主への追加質問、診断名、対処方法などを答える症例問題などが出る。奥田さんは9月にあった今年の試験で合格。東海3県では初だという。
心の病が原因で「かむ」「ほえる」のほか、尻尾を追ってぐるぐる回る、不適切な場所での排泄(はいせつ)といった問題行動をする動物を治療するのが、この認定獣医師だ。適切な治療がペットの殺処分防止にもつながるとされる。
奥田さんは2012年、犬のしつけ教室「ONE Life」を開設し、14年に「ぎふ動物行動クリニック」を開業した。
飼い主の話を聴き、動物を診る。動物にとって正常な行動なら、教室の家庭犬トレーナーによる飼い主と動物へのトレーニングを勧める。恐怖性攻撃行動や、飼い主から離された時に破壊行動などをする「分離不安」といった動物の精神疾患と診断すれば、投薬などの治療にあたる。月に延べ300~350匹ほどが通っている。
中学生の時、愛犬がフィラリア症で死んだ。予防できたと後で知り、後悔から獣医師を志望。岐阜大の獣医学課程に入学後、動物の殺処分問題の啓発や犬猫の譲渡仲介などの活動をしてきた。
今年4月には、高齢の飼い主の突然の病気や施設入所でペットが行き場を失うことを防ごうと、新たに互助会を作った。会員に対し、老犬老猫ホームなどに必要な飼育費を事前に支払っておく「負担付生前贈与」や、ペットの所有権を相続してもらう「遺贈」の助言などをする。
「とものわ互助会」と名付けた会には弁護士や老犬老猫ホームの運営者、ファイナンシャルプランナーが参加。それぞれの専門知識を生かし、飼い主の希望に沿って相談に応じる。
奥田さんは、認定医になったことが普段の診療やこうした活動に役立つと考えている。「信頼性が高まり、悩む飼い主が安心して相談に来てくれるようになれば」と話す。
互助会の問い合わせは、NPO法人「人と動物の共生センター」(058・214・3442)。
(山岸玲)
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