ペット救うため早朝7時から診察開始 働く飼い主にも好評
昨夜からペットの具合が悪そうだ。でも「ペットの体調」を理由に仕事を休んだり、遅刻したりは出来ない。そんな飼い主たちのために、朝7時から診察を始める動物病院が市にある。今年11月に開業2年を迎えた「西京の森どうぶつ病院」だ。動物たちの命を救うためベストの態勢づくりをと、取り組みを続けている。
6日午前7時。どうぶつ病院の診察が始まった。空はまだ薄暗いが、早速、受付に飼い主が訪れた。近くに住む会社員の宮崎敦子さん(45)。飼っているしば犬のいとちゃん(11カ月)が、ここ数日下痢気味で、出勤前に連れてきた。
院長の脇本雄樹さん(40)は診察台の上にいとちゃんを乗せ、おとなしくなったのを確認してから体温を測った。「よしよし、良い子だ」と声を掛け、背中をなでて安心させる。検温後、便の調子を確認して「おなかはやや緩いですが、平熱ですね」と伝えると、宮崎さんはほっとした様子になった。
「朝、ペットを連れてきて預けてから仕事に行くことも出来るので安心。病気の状態で家に留守番させるのは不安なので」と宮崎さんは話した。
脇本さんは周南市出身。山口大学工学部に入学したが、3年次から休学。その後農学部獣医学科(現・共同獣医学部)に入学し直し、獣医師になった経歴の持ち主だ。
実家は徳山動物園のすぐそばで、幼い頃から家族と連れだって毎日のように通った。加えて母の要子さん(69)は大の動物好き。家では犬やウナギを飼っていた。動物たちの生き死にも間近に見て育ってきた。
大学選びの際は推薦をもらえた工学部に、深い考えなしに進んだ。だが大学1年生の時、高校から続けていたラグビーの試合であごを骨折して2カ月ほど入院した。その間、病院のベッドの上で考えた。卒業して、就職すれば、それは一生の仕事になってゆく。このまま、工学部を卒業してよいのか。本当に自分がしたいことは何なのか。
思い浮かんだのが、動物たちのことだった。「好きな動物たちを少しでも助けることが出来れば」。そう考えて22歳の時、獣医学科に入学し直した。
28歳で獣医学科を卒業。県庁の獣医師として約9年間勤務し、獣医学科時代からの友人の浦野充夫さん(37)と2015年、どうぶつ病院を開業した。
病院は、犬と猫の診察エリアを入り口から分けてある。診察室の部屋の明るさは犬エリアでは明るく、猫エリアではやや暗い。体調を崩して弱っている動物たちが、緊張を強いられず、それぞれにリラックス出来る環境を整えた。
病院で働く人にも気を配った。勤務をシフト制にして長時間労働にならないようにして、看護師やスタッフを多めに確保することで、一人ひとりの負担を軽くした。診察に携わる人たちが疲れたりイライラしたりすると、動物たちにも悪影響を及ぼしてしまうと考えた。
午前7時に診察を始めれば、飼い主の都合で病院に行けずに体調を悪化させるペットも少なくなる。「すべては命を救うため」。大好きな動物たちへの思いを胸に、脇本さんは今日も診察を続ける。
(藤野隆晃)
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