そばにいてくれて、ありがとう ペットは「大切な家族」
15歳未満の人口よりペットの飼育数のほうが多い日本。飼い主にとってペットは子どもであり、きょうだいであり、時にパートナーにもなります。今秋、朝日新聞の朝刊「Reライフ(リライフ)」面で、「ペットとの一番の思い出」をテーマに体験談を募集しました。そばにいてくれてありがとう。そんな思いが詰まった声がたくさん届きました。
■避難生活…ぬくもりくれた
2016年4月16日未明、熊本県菊池市内の自宅がグラリと揺れた。震度6強。熊本地震の本震だった。その瞬間、派遣社員の藤田裕子さん(54)が目にしたのは、倒れてくる本棚とその方向に向かって走り出す雌猫・梅子(推定3歳)の姿だった。
直後に停電。「梅子! 梅子!」。暗闇の中で繰り返し名前を呼んだが、鳴き声は聞こえなかった。仕方なく、雄猫・トラ(推定2歳)と庭に避難した。
朝になって屋内に戻ると、家具類はすべて倒れ、窓枠はゆがみ、風呂場の天井が一部落ちていた。倒れた本棚の下に梅子が埋もれているかと思うと、片付ける気力がわかない。庭にとめた車の中で迎えた2日目の朝。開け放っていた車のバックドアから、朝露にぬれた梅子がそうっと入ってきた。
それから約1週間、1人と2匹は屋外での避難生活を続けた。藤田さんはこう振り返る。「2匹とも犬みたいに私につきまとって、離れないんです。余震がなかなかおさまらず私も不安だったのですが、猫たちはそれ以上に不安だったのでしょう」
片付けなどで動き回る藤田さんを追いかけ、2匹はどこまでもついてきた。夜、車内で寝る時は、両腕が猫の枕になった。「2匹からぬくもりをもらい、励まされながら過ごした1週間でした。この子たちがいたから、公的援助のない自宅庭での避難生活を頑張れました。本当に心強かった」
藤田さんの避難生活を支えた2匹は、元は飼い主のいない猫だった。梅子は14年6月、熊本市動物愛護センターから譲り受けた。手のひらに乗るような、小さな子猫だった。トラは15年12月、勤務先に捨てられていたのを保護した。「肉がほとんどついていなくて、スカスカに痩せていました」
最初は2匹を自宅のネズミ捕り要員と考えていた。名ハンターのトラは「ニャッ、ニャッ」と「子猫のような最高にかわいい声」(藤田さん)で鳴きながら、獲物をくわえてきた。トラのおかげか、ネズミの姿が減った。梅子はネズミを追わない猫に育った。今はネズミを追っても追わなくても、2匹ともが大事な家族だ。
2匹は毎日、運動会のように家の中を走り回る。来客があると、人なつこく出迎える。「一人暮らしなのににぎやか。退屈しません。えさ代やワクチン代を稼がないといけないから、張り合いにもなる。大切な同居人たちです」
(太田匡彦)
■「最後までつきあう」と決意
埼玉県で殺処分寸前だったゴールデンレトリバーのコルン。2015年、推定7、8歳で我が家にやってきましたが、心に大きな傷を負っているようでした。
昼夜を問わず家の中を歩き回り、外に出すと脇目も振らず歩き続ける。妻は、体力的にどんなにつらくても「最後までこの子につきあってあげたい」と言い、不思議な行動を見守り続けています。
昨年8月にはガンが見つかって手術。今は老いにつきあっています。
<千葉県 竹花晃さん(70)>
■孤独な冬、乗り切れたのは
夫の転勤に伴って住んだ札幌での3年間が、私と飼い犬をより強く結びつけたと感じています。
未知の土地で友人もいない私。雪深く閉じこもってしまう、寒い寒い札幌の冬。そんな札幌での私を毎日連れ出してくれたのが、トイプードルのムックでした。
ムックなしでは、あの冬の日々を乗り越えられなかったかもしれません。そもそも、ムックがいなければ、札幌へ行こうとも思わなかったかもしれません。
<東京都 小関安子さん(61)>
■私を強くしてくれた彼女
共に暮らした16年間は私の宝物です。私が仕事などで忙しいと、決まって数日後に額がハゲて、動物病院にお世話になりました。
2年前の夏の暑い日、天国に行きました。何事にも逃げグセがついていた私を、人生を共に暮らし、みとらせてくれたことで、強い人間にしてくれました。
先日、いつも彼女がいた場所に座ってみました。ポカポカで気持ちよかった。白い、シュークリームのような匂いがする猫でした。
<茨城県 小林幸子さん(53)>
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