おもてなしは猫の気分次第 猫3匹がいるレトロなカフェ
富山市の郊外に、3匹の猫がいる「nolla cafe」(ノラカフェ)という店がある。猫カフェだと思っていたのだが、訪れてみると、入口には「ここは猫カフェではありません。お客様の目的が猫とのふれあいにある場合、当店はご期待に添いかねます」との注意書き。想像していた「猫カフェ」とは、どうも違うようだ。
(末尾に写真特集があります)
店主の安達博一さん・郁恵さん夫婦が、富山市内に店を構えたのは2013年7月のこと。博一さんは07年に横浜市内でノラカフェを開いたのだが、結婚を機に郁恵さんの故郷である富山県に移った。
店は空き家だった築50年の建物を夫婦でリノベーションした。内装とインテリアには、使い込んだ木の風合いが活かされている。小学校の教室や工作室にあったような椅子、足踏みミシンの脚を支えにしたテーブルなどが置かれ、「初めて来たのに懐かしい」と感じる空間である。お薦めのメニューは保温効果の高い「はかせなべ」を使って余熱でゆっくりと調理したスープだ。材料を吟味した手作りのパン、ケーキなどもある。
店内には猫の形をした小物が多く、猫に関係する書籍も並んでいる。そんな店内を自由に動き回るのが「八(はち)」「ごるご」「うなぎ」の3匹のオス猫たちだ。
「八」は最年長の7歳で、3匹の中で1番フレンドリーな猫だ。博一さんが八のお尻をポンポンと軽くたたくと、横たわって嬉しそうな様子を見せる。毎日、何度か「お尻ポンポン」をねだってくるらしい。横浜にいた時、友人の家に迷い込んできた子猫をもらい受けたとのことである。
どっしりとした風格の「ごるご」は、長毛の黒猫で胸と足先が白い。横浜時代、スーパーで飼い主募集の案内を見て、博一さんが一目ぼれして、引き取った。まだ6歳だが、胸の白い毛がふさふさとして貫録がある。絵になる猫だ。3匹の中でボスの座に君臨している。
「うなぎ」はまだ1歳。富山市内の警察署に「落とし物」として届けられていたのを迎え入れた。遊びたい盛りで、「以前は、お客さんのコートや靴ひもをかじって飲み込んでしまうので目が離せませんでした。最近は行儀が良くなったので、自由にさせています」と郁恵さんは話す。
魅力的な猫が3匹もいるのだから、「猫カフェ」の看板を掲げてもよさそうなものだが、博一さんは「断じて猫カフェではありません」と強調する。
「私たちは猫を愛しており、常に猫のそばにいたいと思う反面、猫の気分や健康を害すことは何としても避けたい。お客様には猫をできるだけそっとしておいてほしいのです」
その言葉のとおり、猫は客席から少し離れたところで寝ている。また、店の周辺は交通量が多いので、猫を敷地外には出さないが、天気のいい日には上の階のベランダで日向ぼっこをさせるため、客席に猫がいないこともあるそうだ。寝ている猫を起こしたり、無理に抱き上げたりするのは厳禁。この日はたまたま「八」「ごるご」「うなぎ」がそろってご機嫌だったので、猫の方から寄ってきてくれた。客が猫に会えるかどうかは、あくまで「猫の気分次第」である。
客席にはリードもケージもなく、3匹は常に自由だ。気ままにふるまう猫の姿を見ていると、時間を忘れて長居してしまう。気が付けば、外はすっかり薄暗くなっていた。
ちなみに「nolla(ノッラ)」は「野良猫」とは関係なく、フィンランド語で「ゼロ」という意味らしい。猫とコーヒーに癒されてゆったりとした時間を過ごし、気持ちをリセットできる。おかげで悩みはゼロ。だから「ノラカフェ」……なのかもしれない。
(若林朋子)
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