先住ネコのお導き?! 同じキジトラのオス猫がやってきた

「行くだけ行ってみようか……」 「見るだけ、見るだけね」
2015年6月、ライターの大道絵里子さん(44)は、都内で開かれた保護猫の譲渡会に、夫とともに出かけた。キジトラの模様のメス猫「ドラミ」を3か月前に亡くしたばかり。「新たな猫を迎える」気持ちはまだ固まっていなかった。それでも何か、そわそわした気持ちだった。
(末尾に写真特集があります)
絵里子さんが当時を振り返っていう。
「先住猫のドラミさんは21歳まで生きました。私が上京した20歳の頃からずっと一緒に暮らし、2014年に結婚するまで、“女ひとり猫一匹”、まるで母娘のように寄り添ってきました。ドラミさんがいなくなった後、しばらく次の子を飼うのは控えた方がいいと思って。ところが、気持ちが動く出来事があって……」
最愛の猫を見送った翌月、絵里子さんのもとにひとつの仕事が舞い込んだ。それは「アニマルコミュニケーター」の猫の本を作る話だった。
アニマルコミュニケーターとは、動物の思いや、飼い主への要望などの“言い分”を動物に代わって「通訳する人」。絵里子さんはその存在を知っていたが、実際に会うまで半信半疑だった。本の構成を考え始めると、取材対象の猫が足りないことが分かり、急きょ、ドラミのことも本の章に加えることになった。

「写真をコミュニケーターに渡すと、亡くなった日のことを言われました。預けていた病院に迎えにいった時、ドラミは私が持っていったふわふわの“クリーム色”のブランケット(膝掛け)を見て『家に帰れるので嬉しい』と感じたというんです」
コミュニケーターは、毛布の色を当てた。さらに「夜中に旦那様の帰りを待ってから旅立ったのね。彼を好きだったから」「早く次の子を迎えてと(ドラミが)薦めています」とも言ったという。
それを聞いても、絵里子さんは、すぐに猫を迎えようとは思わなかった。
だが、ドラミが絵里子さんの夫を慕っていたのは事実。その縁を改めて感じた。ドラミは自宅にどんな男性が来ても、「シャーッ」と激しく威嚇して近づかなかったが、その後の夫となる男性には、初めて会った時から、ゴロゴロと喉を鳴らして甘えた。そのため、夫も大の猫好きになっていったのだという。
「その日、帰宅した夫にコミュニケーターの話を伝えると、『本当か?』と驚いたんです。夫がよく行く飲食店のママが、保護猫活動をしていて、『譲渡会に来ない?』と、ついさっき自分も誘われたのだと……。偶然かもしれませんけど、運や縁がすいすい流れるようでした」
こうして出かけた猫の譲渡会。夫婦は目が大きな一匹の猫に釘づけになった。生後2か月のオス猫で、“サバトラ(灰色と黒の縞模様)”が印象的だった。光が当たるとシルバーに見える毛色が美しく、夫婦は猫を譲り受ける決意をして、『銀』と名付けた。ところが1週間後、「銀」が家にやって来ると、その毛色が変わっていた。
「灰色と黒でなく、茶と黒のキジトラでした。急にそんなに色が変わるかしら……それが何よりも不思議でした。もしドラミさんと同じ毛色だとわかっていたら、思い出しそうで選ばなかった……ひょっとして、ドラミさんが魔法をかけたのかな、なんて想像したりして(笑)」

子猫の可愛い仕草や表情に、絵里子さんは夢中になった。銀は、家に来た直後から隠れることもなく歩きまわり、くつろぎ、絵理子さんにベタベタと甘えた。
それから2年。銀はあっという間に成長した。それでも、今も甘えん坊の「かまってちゃん」だ。自分を見てほしい時には、絵里子さんの腕を前足でチョンチョンと叩いて振り向かせる。浴室の扉を頭でぐいぐい押して開けて、お風呂にも入ってくる。一緒に「追っかけっこ」をして遊ぶのも大好きだという。
実は最近、再び絵里子さんの心は揺れはじめている。もう1匹、猫を迎えるかどうか、と考えているのだ。
「一人っ子だと寂しいかな、でも今まで私たちの愛情を一身に受けて育ったので、子猫を迎えたら嫉妬するかな」
そんな思いから、再びアニマルコミュニケーターに、銀の気持ちを聞いてみた。その結果、こんな返事が戻ってきたという。
「べつにいいよ~、女の子ならいろいろ我慢できるから、と。ただ、条件があって、かわいい子で、おとなし過ぎず、ある程度気が強い子。自分と同じ感じで遊べる子がいいみたい。毛色は白とか、薄い色がよくて、濃い色ではない方がいいんですって。わがままな男ですね(笑)」

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