猫と暮らす人専用の賃貸マンション、キャットウォークも完備
JR総武線の小岩駅近くの住宅街に、猫と暮らす人に特化した賃貸マンションがオープンした。ここの大家であり管理をするのは、都内で不動産業を営む加藤三奈さん。2年前に譲渡会で2匹の猫を引き取って以来、自身の仕事を通じて猫のための社会貢献ができないかと考えてきた。
「猫の殺処分の背景を調べていると、都内に猫を飼える物件自体が少ないということがわかりました」と、加藤さん。また、都会の猫の多くがストレスのたまりやすい住環境で生活していることにも気づく。こうした問題意識から、猫と快適に共生できる住まい作りを思い立った。
そこで加藤さんは、ある学校の寮だった建物を買い取り、猫との暮らしを前提に全室をリフォーム。こうして猫専用マンション「イーストハウス」ができた。入居条件は、現在猫を飼っているか、直近に猫を飼う予定があること。
4匹まで飼えるという約28㎡の1Rに入ると、部屋の真ん中には、大工さん手製の登り木がまず目に入る。その先端近くにはキャットウォークがあり、壁際の天井全体に張り巡らされている。壁に目を落とすと、爪研ぎされにくい素材が貼られ、床材はオシッコの染み込まない継ぎ目のないものを使用。玄関には脱走防止扉も付いている。約16㎡の1Kも同様の作りで、屋外の共有スペースには、上にネットを張った猫の遊び場を完備。キャットウォークの掃除もできるように脚立を建物で共有する。猫用の設備は、今後も入居者の要望を聞いたり、建築士との相談を重ねながら、改良を加えていくそう。
また、住民の猫は、入居時に大家に登録するシステムで、オプションとして長期間の外出に備えた餌やりサービスも行う。ソフト/ハード両面に猫との暮らしへの配慮が行き届く。
「多くの大家さんがペットを敬遠しがちですが、原状回復しやすい対策は、限られた予算でも可能です」と語る加藤さんは、あえて相場よりも高く家賃を設定したという。「少し高めの家賃を払ってでも猫をのびのび飼いたいという需要があるとわかれば、空室に悩みながらも、ペットを受け入れられないオーナーさんの考えも変わるかも」というのがその理由だ。
今後は「ここでの試みを他の不動産業者やオーナーさんに見てもらうことで、猫と共生できる物件をもっと増やしていきたい」と意気込む。地域との連携をはかりながら、入居者と猫との出会いをコーディネートすることも考えている。
こうした住まいを増やす試みは、猫を飼いたいと思っている多くの人の夢を叶えるだけでなく、猫の幸せにもつながるだろう。
(写真・芳澤ルミ子/文・斎藤実)
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