ペットも「夏バテ」する夏が到来! 対策に中医学を取り入れよう

 梅雨から夏にかけての季節に体調を崩すのは人間だけではありません。食欲が落ちたり、だるそうにしたり、いわゆる“夏バテ”のような症状に陥るペットが増えてきます。その原因は「湿気」と「暑さ」です。大切なペットに元気に夏を過ごしてもらうためには、食事や散歩など毎日の生活の中での工夫が欠かせません。中医学を取り入れた獣医療を行っている2人の獣医師の先生にこれからの季節に飼い主にとって必要な心構えをお聞きしました。

 

 

湿気と暑さが引き起こす様々な不調


 中医学では、「湿(湿気)」と「熱(暑さ)」が結合した病を引き起こす原因を「湿熱」と呼びます。


「特に日本の夏は『湿熱』による不調がとても多くみられます。特に梅雨に入って増えてくるのが皮膚病。外耳炎や胃腸炎、さらには嘔吐や下痢など胃腸障害で来院する犬や猫も増えてきます。いつもより食べる量が少ない、散歩に行きたがらないなど、普段と異なる様子があれば“夏バテ”の可能性があります」


 と、沢村獣医科病院統合医療センターの澤村めぐみ院長。2017年5月に開院したばかりの同センターでは西洋医学に鍼灸や漢方、手作り食などを統合した“オーダーメイド獣医療”を提供しています。

 

沢村獣医科病院統合医療センター院長・澤村めぐみ先生
沢村獣医科病院統合医療センター院長・澤村めぐみ先生

「初診の方には、まず体質診断チェックシートでペットの体質を確認してもらっています。体質は親からの遺伝がある一方、環境や生活習慣によっても変わるもの。それぞれの体質と四診(望診・聞診・問診・切診)による診断、そして西洋医学の検査結果などから薬や鍼などより良い対処法を考えています」

 

鍼灸治療に通っている、松本はれるんくん(15歳)。
鍼灸治療に通っている、松本はれるんくん(15歳)。

体の中で互いに影響し合う「五臓」


 中医学のベースにあるのは、世の中のあらゆるものは五つの属性に分類し、それらが相互に密接な関係を持っていると考える古代中国の思想「五行説」です。中医学でも内臓や体の働き・機能を「心・肝・脾・肺・腎」という5つのグループに分類、「五臓」と呼ばれるこの5つは互いに助けたり抑制したりしながら働いています。(※図1参照)


「五臓のバランスが崩れると不調が表われます。五臓の働きは体質と同じくそれぞれ個体によって異なります。夏に注意が必要なのは『心』の弱い子。暑さで心臓に負担がかかりやすくなるので、急に暑い場所に出かけるのは避けましょう。また『脾』の弱い子は急激に冷たいものを飲むと胃腸をこわすため、水分補給の際は一度に大量の冷水をあげないなどの工夫が必要です」(澤村院長)

 

【図1】互いに助けたり(相生)、抑制したり(相克)しながらバランスを保っている「五臓」
【図1】互いに助けたり(相生)、抑制したり(相克)しながらバランスを保っている「五臓」

食事や運動の習慣も夏仕様に見直しを


 大切なペットを夏バテから守るには、いつもの食事や運動の習慣を見直すことも考えなければなりません。


「一番重視すべきは暑さそのものの対策です。そこを疎かにして水分補給を云々するのは的はずれです。特に散歩は早朝や夕方から夜にかけての涼しい時間帯を選ぶこと。かんかん照りの中の散歩は、強い日差しとともに地面からの熱を受けるのでかなり危険です。人間の都合だけではなく、愛犬にとっても安全な散歩を心がけましょう」


 と注意を促すのは、あおぞら動物医院の佐藤希樹院長です。湿度の高い梅雨時には、ペットフードの品質管理も重要になってきます。


「ドライフードはカビないと思い込んでいる人が多いようですが、開封したドライフードは劣化してカビます。微細なカビに気づかず与え続けたペットフードが体調不良の原因だったケースもありました。せめて湿気が気になる季節には、短期間で食べ切れる小さな包装のものを選んで下さい」

 

あおぞら動物医院院長・佐藤希樹先生
あおぞら動物医院院長・佐藤希樹先生

“いつもの状態”をしっかり把握すること


 さらに気をつけなければならないのは、持病のある子や高齢のペットたち。


「夏は心臓病の症状が悪化するケースが増えてきます。てんかん様発作の既往がある子も夏に症状が悪化するケースが少なくないので、気をつけて見守る必要があります」


佐藤院長がこの時期に強く感じるのは、ペットも年をとることを忘れている飼い主さんが多いことだといいます。


「『去年までは大丈夫だったのに』とおっしゃる方が多いのですが、犬や猫は人の4倍くらいのスピードで年をとるもの。見た目以上に老化は進んでいるという感覚を持って接するようにしましょう」


 具合が悪いことを言葉で言えないペットの場合、それを推し量ることができるのは飼い主である人間です。


「私たち獣医師はその時の症状を診ることはできますが、いつもとの違いをペットから聞き出すことはできません。それがわかるのはいつも一緒にいる飼い主さんだけ。健康なうちから愛犬や愛猫の“いつもの状態”をしっかり把握し、異常があるときには早めに診察を受けるようにしてください」

 

澤村めぐみ 沢村獣医科病院統合医療センター院長

【沢村獣医科病院統合医療センター】
〒260-0813 千葉県千葉市中央区生実町1704
http://www.jyu-i.com/tougouiryou/index.html

佐藤希樹 あおぞら動物医院院長

【あおぞら動物医院】
〒989-2459 宮城県岩沼市たけくま1-18-9
http://aozora-vc.com

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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