犬の中毒は、家の中のモノで起きる!? こんなにある危険物 

犬が中毒を引き起こすものにはいろいろある。愛犬がうっかり口にしてしまわないためにも、どんなものがあるのか、詳しく知っておきたい。
Text:Hiromi Mizoguchi
Illustration:Yoko Yamada


中毒事故はいつ起こるかわからないので注意したい

 中毒を引き起こすため犬には食べさせてはいけないものとして有名なタマネギやチョコレートなどは、多くの飼い主も認識していることだろう。もちろん、そうしたものを、犬の手の届く範囲に置かないことは大切だ。


 だが、中毒を引き起こすものは、それらだけとは限らない。普段、家の中や屋外で、何気なく使っているものや置いているものなどにも中毒の可能性があるということを忘れてはならない。


 人間ならば、中毒のような症状を起こして具合が悪くなった場合、もしかしてあれを口にしたから、とか、あれに接触したかもしれない、などと原因となるようなものを思い浮かべることもできる。しかし、犬の場合は、犬が実際に口にしたところを飼い主が見ていなければ、判断できないこともあると高崎先生は言う。


「中毒による事故は、飼い主さんが気づかないところで起こっている場合が意外と多いものです。それだけに具合が悪くなって動物病院へ連れてきても、すぐに中毒が原因と結びつけることは難しい場合もあります」


 中毒の症状にもいろいろあり、ものによっては命に関わることもある。犬に中毒を引き起こす可能性があるものは、身近にいる飼い主がきちんと把握し、管理しておくことが大切だ。


 そのためには、どんなものに気をつけたらいいのか。またもし、愛犬に中毒が疑われる場合、どのような対処をすればいいのか。中毒にまつわるあれこれを詳しく紹介していこう。

 

何気なく置いているものにくれぐれも気をつけよう

 グラフにもあるように、日頃よく使っている家庭用品によって中毒を引き起こす場合は多い。

 

 室内で気をつけておきたいものは、実にたくさんあることがわかるだろう。日頃、何気なく置いているものの中にも、万が一、犬が口にすると中毒を起こす危険が、これだけ多くのものに潜んでいるのだ。


「最近、比較的多いと感じるのは、飼い主さんが自分の薬を置いたままにして、愛犬がうっかり食べてしまうというケースです」と高崎先生は言う。


 人間用の薬に含まれる成分によっては、中毒の症状が軽度のものから、重篤なものまでと違ってくる。特に注意しておきたい主な医薬品については表の通り。もちろんこれら以外の薬でも、犬が誤飲すると危険なものはある。薬を飲んだら、テーブルの上など犬が届く場所には置かず、きちんと保管しておくようにしたい。

 

中毒危険のある医薬品

人間の薬の中でも、犬が中毒を起こす危険のある種類について知っておこう。

 

・非ステロイド消炎鎮痛剤

イブプロフェンやナプロキセンなどはNSAIDsと言われ、市販の消炎剤や解熱剤に含まれている。10kgの犬が8錠飲むと腎臓障害を引き起こす。

・アセトアミノフェン

消炎解熱剤として、頭痛や発熱を抑える薬に含まれている成分。犬が摂取すると肝臓障害を引き起こす。4〜5錠程で深刻な状態になる可能性が。

・エフェドリン系

鼻水、鼻づまりを抑える花粉症の薬などに含まれている成分。犬が飲むと心拍数や血圧を上げ、心臓に負担をかける。基礎疾患を持っている犬は要注意。

・抗うつ剤

麻酔系の薬であり、気持ちを落ち着かせる作用がある。そのため、犬が多く摂取すると吐き気や動きたがらない(無気力)などの症状を引き起こす。

・ビタミンD誘導体

人間の皮膚炎治療などの外用薬に含まれている。犬が摂取すると吐き気、食欲不振を引き起こし、量が多くなると腎不全を引き起こすことになる。

・糖尿病の薬

糖尿病治療のためにインシュリンと併用して血糖降下剤を使うケースはよくある。血糖降下剤は、犬が摂取すると極度の低血糖になる危険があるため注意。


 また、紹介しきれなかったものの他にもいろいろある。例えば、乾燥剤。シリカゲルであれば、中毒の危険性はほぼない。だが、タンスや押し入れに入れる塩化カルシウムが含まれた乾燥剤は、飲み込むと食道などがただれてしまう恐れがる。


 室内犬として人間と生活している場合は、これらのものにくれぐれも注意しておくことが大切だ。

 

①食器用洗剤

特に注意すべきなのが、食洗機用洗剤。強酸やアルカリの腐食性物質が含まれていると中毒を起こす可能性がある。

②石けん

界面活性剤が含まれるものは胃腸の炎症を起こす。固まりで食べて胃腸内のどこかにつまると、潰瘍を起こしてしまう恐れが。

③保冷剤

含まれているのがプロピレングリコールであれば毒性は弱い。ただ、多く摂ってしまえば中毒を引き起こす可能性あり。

④スプレー殺虫剤

ディートが含まれているものについては、犬の場合、皮膚につくと炎症を起こしたり、摂取すると嘔吐などを起こす。

⑤歯磨き粉

キシリトールが含まれている場合、はっきりとは言われていないが、犬だと肝障害や腎障害を起こす可能性がある。

⑥シャンプー・リンス

石けんと同様、界面活性剤が含まれているものは、消化管をただれさせ、胃腸に炎症を引き起こしてしまう。

⑦柔軟剤

柔軟剤やジェルボールタイプの柔軟剤入り衣類用洗剤などで界面活性剤が含まれているものは、胃腸に炎症を引き起こす。

⑧漂白剤

次亜塩素酸ナトリウムは腐食性物質のため、それが含まれた漂白剤は口腔内や消化器官に炎症を起こすなどの可能性がある。

⑨お菓子

チョコレートはもちろんNG。また輸入もののお菓子には甘味料にキシリトールが含まれていることが多いので要注意。

⑩アロマオイル

中毒を起こすものの報告として多いのがティーツリー。アロマオイルを吸入した場合、肺に蓄積されると慢性中毒の恐れが。

⑪衣類用防虫剤

においのあるタイプの多くにパラジクロロベンゼンが含まれており、食べてしまうと1時間以内に嘔吐などが見られる。

⑫ボタン電池

誤飲してもそのままうんちに出てくれば問題ない。だが、消化管に留り消化液で腐食してくると消化管に穴が空いてしまう。

⑬サプリメント

犬にどのような影響があるのかは種類によっても違う。鉄分が含まれている場合は、胃に炎症を引き起こす可能性がある。

⑭除光液

蒸気を吸っただけで、嘔吐や頭痛などを起こすことがある。多く吸えばふらつく場合も。皮膚に付着すると皮膚炎を起こす。

⑮化粧品

過ホウ酸ナトリウムが含まれているものは中毒を起こす危険がある。入れ歯洗浄剤にも多く含まれているので注意したい。

⑯お酒

人間はアルコールを分解する力があるが、犬はその力が弱い。アルコール消毒スプレーも同様に気をつけておきたい。

⑰タバコ

まだ吸っていないタバコよりも吸い殻を水に入れた状態のものを口にしてしまうと、ニコチンの吸収が早く大変危険。

⑱使い捨てカイロ

未使用のカイロの中身を食べてしまうと熱を発生する可能性があり、口の中が熱でただれる。使用後のものなら問題ない。

⑲香水

揮発性を持たせるためアルコールが含まれており、犬はアルコールを分解する力が極端に弱い。飲んだ場合、中毒の危険がある。

⑳置き型殺虫剤

誤飲事故は多いので気をつけたい。中でもホウ酸を高度に含むゴキブリ用殺虫剤は、中毒症状を引き起こす可能性が高い。

㉑クレヨン

最近のクレヨンは有害なものは含まれていないので安心。だが昔のクレヨンで鉛が含まれている場合、中毒を起こす可能性が。

監修:高崎一哉先生

高円寺アニマルクリニック院長。治療のみならず、食事や飼育環境の改善など飼育指導にも積極的に取り組み、ドッグトレーナーと連携してしつけの指導にも力を入れている。
高円寺アニマルクリニック 東京都杉並区高円寺南2-14-14 
TEL:03-3311-1014
http://koenji-ac.com/


資料提供:公益財団法人 日本中毒情報センター
http://www.j-poison-ic.or.jp

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