ペットと避難① 備えと覚悟が必要 準備のポイントは?

(写真は本文と関係ありません)
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 命の大切さを学んだり、寂しさを癒やしてくれたり――。ペットと過ごすことで得られる効用は、災害時でも心の支えになりうる一方、うまく避難できなかったり、避難所でトラブルを招いたりする可能性もある。必要な備えは。

 

 

■状況は様々、準備できることは――「迷子」に有効、チップや写真/預かり先あれば増える選択肢

 災害時のペットの避難について、環境省がおもに犬や猫を想定して2013年に作ったガイドラインでは、「被災した飼い主の心のケアの観点からも重要」として、「同行避難」を原則としている。


 その前提として、日本獣医師会の村中志朗副会長は「他の人も含め極限状態にある避難生活では、他人のペットは癒やしにもなれば邪魔にもなりうる。ペットが『社会の一員』にもなれるよう、飼い主の備えと覚悟が必要だ」と強調する。


 環境省が飼い主向けに11年に作ったパンフレットなどでは、平時の備えとして、家具や家電の固定の重要性を挙げている。ブロック塀などの近くでは飼わず、窓ガラスが飛散しないよう、防護フィルムを貼っておくと良い。食べ物は5日分以上備蓄し、ワクチンの接種証明やペットと飼い主が一緒に写った写真を用意しておけば、はぐれた場合に役立つ。


 地震発生時にペットが驚いて外に飛び出し、「迷子」になってしまうこともあるので、人に飼われていると示すマイクロチップも有効だ。マイクロチップは直径約2ミリ、長さ約1センチの円筒形で、動物病院で首の後ろなどに注射器で埋め込む。費用は数千円だ。動物病院や警察署にある読み取り機をチップにかざすと表示される15桁の数字を元に、ネットの「動物ID情報データベースシステム」で照合すれば飼い主がわかる。


 すぐに避難できるよう、キャリーバッグは普段から部屋に置いて慣らす。「病院に連れて行かれるかも」と嫌がる場合もあるので、中で好物を与えるなど印象を良くすると、スムーズに運び出せる。猫は首輪が抜けることがあるので、前脚を通すハーネス(胴輪)を使う方法もある。


 自宅の建物に十分な耐震性があり、火災の恐れがない場合や、行政の避難の呼びかけがない場合は、ペットを自宅に残したり、一緒にとどまったりする選択肢もある。親類や友人、地域の人に一時的に預かってもらえる関係があれば、避難所に連れて行かなくても済む。


 飼い主が外出中に被災し、ペットが自宅に残された場合は、慌てて連れに戻らず行政に相談した方が良い。村中さんは「無理をした飼い主を救助する人が二次災害に遭いかねない。人命優先が絶対だ。1人で何匹も飼っている人は、災害時に本当に面倒を見られるかも、もう一度考えて」と話す。

 

 

■避難所で受け入れてもらうには――しつけ・配慮、予防接種も大切/訓練に参加、地域になじもう

 多くの人が集まる避難所では、ペットによるトラブルも起きやすく、注意が必要だ。


 東京大の武内ゆかり教授(動物行動学)は、避難所ではアレルギーのある人や動物嫌いの人への配慮を大前提としたうえで、「ペットに対して中立的な人たちに受け入れてもらえるように、飼い主の普段のしつけやマナーが重要になる」と話す。


 武内さんによると、しつけでは、飼い主以外の人や、ほかの犬猫を怖がったりほえたりしないように社会性をつける。トイレシートなど決まった場所で排泄(はいせつ)できるよう訓練し、清潔にしておけば受け入れられやすいという。


 東日本大震災では、福島県のシェルターで保護した中にパルボウイルスやカリシウイルスに感染した犬や猫もいた。武内さんによると慣れない環境で避難生活を続けると免疫力が落ちて、普段はあまりかからない病気のリスクが高まる。狂犬病をはじめ、予防接種を受けておけば病気を防ぎやすくなる。


 日本獣医生命科学大の水越美奈准教授(臨床動物行動学)によると、ペットも震災のショックで精神的に不安定になり、落ち着きがなくなったり、下痢や嘔吐(おうと)などの症状が出たりすることがある。


 こうした場合、飼い主が落ち着いて接し、遊んだり、好物を与えたりしてペットをリラックスさせると改善しやすいが、症状が悪化するようなら治療が必要だ。


 避難所の中で、ペットと一緒に過ごせるかもポイントだが、環境省のガイドラインに記されている「同行避難」は避難所に来るまでを指しており、中に入れるかどうかは、避難所の運営方針によって異なる。


 昨年4月の熊本地震で避難した377人を対象にした内閣府の調査では、避難所の中にペットを入れることについて「問題ない」と答えたのは14・1%で、「入れてほしくない」は35・5%。最も多かったのは、「問題には感じるが仕方のないことだと思う」(45・9%)だった。


 新潟県上越市で今月14日に開かれたペットの防災講演会では、「ペットを屋外に置くのは嫌か」という質問に、約50人の飼い主のほとんどが手を挙げた。一方、ペットと避難訓練をしたことがある人はいなかった。


 講師を務めた新潟動物ネットワークの岡田朋子代表は「屋内で一緒に過ごすことを期待する飼い主の本音を、避難所を運営する行政や自治会の人たちも知ってほしい。一方で、避難訓練は地域の人や避難所運営者にペットを知ってもらえる意味もあるので、参加したほうが良い」と話す。


 岡田さんによると、飼い主がグループをつくり、ペットスペースの掃除を当番にするなど協力することも、避難所でのトラブルを減らすコツだという。


(竹野内崇宏)

 

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