街中の動物愛護センターを杉本彩さんが紹介 「存在を知って」

京都動物愛護センターで保護された猫たち。外から見ることができるゾーンもある=京都市南区
京都動物愛護センターで保護された猫たち。外から見ることができるゾーンもある=京都市南区

 女優の杉本彩(48)は憤っている。なぜ、日本では犬や猫をペットショップで購入するのか。どうして命がこれほど簡単に売り買いされてしまうのか。

 

(末尾に写真特集があります)


「先進国では異常なことですよ。犬や猫を家族として迎えるとき、保護された動物を譲り受けるという手段があることを、もっと知ってほしいんです」

 5月初め、JR京都駅で近鉄電車に乗り換え、たった2駅の十条駅で降りた。駅近くの上鳥羽公園のなかに、保護動物を譲り受けることができる「京都動物愛護センター」がある。京都府と京都市が共同で運営する全国初のシステムだそうだ。


 公園のベンチでくつろぐのは近所の人だろうか。公園の遊具では家族連れが遊び、芝生の上ではワンちゃんたちがセンターの職員と一緒にのんびり散歩していた。そこには、「迷惑施設」として敬遠されがちな雰囲気は一切ない。杉本は言う。「センターがこれだけの街中にあるのは珍しいこと。まずは存在を知ってもらい、足を運んで頂くのが私の役割です」


 杉本は、センター開設当初の2015年から名誉センター長を務める。動物たちの置かれた厳しい現状やペット業界の闇にも、ひるむことなく警鐘を鳴らす姿勢が共感を呼び、女優の異例の就任につながった。


 動物愛護の活動歴は二十数年に及ぶ。みずからも、公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva(エバ)」を立ちあげるほどの筋金入りだ。センターの獣医師、河野誠(35)は「動物好きであるほど直視できないような課題にも真摯(しんし)に向き合い、解決に向けて貢献して下さる。本当によく現状をご存じなんですよ」と評する。

 

<杉本彩(すぎもとあや)>
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1968年、京都市生まれ。公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長。著書に「それでも命を買いますか」「ペットと向き合う」など。
<杉本彩(すぎもとあや)>
1968年、京都市生まれ。公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長。著書に「それでも命を買いますか」「ペットと向き合う」など。

 京都・祇園で生まれ育った。10代で芸能界に入り、学園祭の女王として君臨し、その後はアルゼンチンタンゴダンスのダンサーや小説家としても存在感を示した。11年に結婚と同時に京都へ戻り、いまは東京と京都を行き来する日々を送る。東京では猫3匹、犬1匹、京都では猫5匹、犬2匹と暮らす。そのすべてが保護された犬猫たちだ。


 一緒に生きると覚悟を決めて飼い始めたのに、多くのペットが「引っ越すから」「飼うのにお金がかかるから」などの飼い主側の理屈から簡単に手放されてきた。近年は、譲渡の道も大きく広がっている。それでも、年間8万3千匹(15年度)の犬や猫が全国で命を絶たれているのが実情だ。


 10年間で4分の1以下に減ってはいる。だがこの現実がある限り、杉本の闘いは終わらない。「社会を変えるのは一人一人の意識。地道に訴え続ければ、いつか花は開くはず」=敬称略


(谷辺晃子)

 

 

■ごあんない

「動物愛ランド・京都」の愛称を持つ京都動物愛護センター(京都市南区上鳥羽仏現寺町11、075・671・0336)は上鳥羽公園内にある。1万平方メートルの敷地内に事務所棟と動物棟、3千平方メートルのドッグランや1千平方メートルのふれあい広場などを備える。地震などの災害発生時には、飼い主とはぐれた動物を保護、収容する拠点にもなる。犬や猫のトリミングを有料で行う部屋も。また、京都市獣医師会が運営する「京都夜間動物救急センター」を併設する。午後9時半から午前2時まで年中無休で対応する。

 犬の譲渡会は、原則毎月第2土曜日の午後1時から。譲渡は無償だが、京都府内の人に限定。「飼うなら覚悟を持って」とセンターの職員。

朝日新聞
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