「こねこ塾」で伝えたいこと⑦ 犬と猫一緒だと絆が生まれる!

犬に囲まれて育った猫
犬に囲まれて育った猫

 社会化期は本来、動物が仲間との絆を形成する時期です。自然界ではこの対象はふつう母親や兄弟などの同じ種類の動物ですが、我々人間がペットとして飼っている動物は同種動物だけでなく人をはじめとする異種動物との絆も形成していくことになります。

 猫が非常に幼い時期から一緒に飼うと、ネズミや小鳥など本来であれば獲物である動物種とも仲良くなることが知られています。ただしこの場合、最初に会わせるときには猫が追いかけたり傷つけたりしないように、安全を確保した状態で会わせましょう。

 また犬は猫と一緒に飼われることが多い動物ですが、犬と猫の両方が社会化期のタイミングで飼い始めれば多くの場合、仲間として受け入れます。猫が犬と仲良く遊んだり一緒に眠る姿はとてもほほ笑ましく、見ている我々も幸せな気持ちになるものです。

 ただし、犬がすでに大人である場合で、しかも猫と暮らした経験がなければ犬の反応はさまざまです。怖がって逃げたり、無関心なだけなら良いのですが、時には捕食本能を刺激されて追いかけたり、傷つけたりしてしまうこともあるため注意が必要です。犬にリードと口輪をつけるか猫をケージに入れるなどして、安全を確保した状態で会わせてお互いの反応を確認するようにしましょう。最初の出会いがスムーズになるように、あらかじめ寝ている場所の敷物を交換してお互いの匂いに慣らしたり、お互いの匂いのついたタオルの上で好物を与えるなどして、事前に良いイメージを作っておくと良いでしょう。

 一方、社会化期を過ぎると見知らぬものに対する警戒心もより強くなり、仲間以外のものを受け入れにくくなります。猫が大人になってから子犬を飼い始めるというような場合、子犬は猫に興味を持って近づいていくでしょうが、猫は逃げてしまうでしょう。

 野生動物は通常、仲間と認識するのは同種動物だけですし、慣れなければならない周囲の環境もそれほど多様性に富んだものではありません。自然界では社会化期に遭遇する限られた種類の刺激に慣れていれば生活するうえで困ることはほとんどありません。しかし現代の人間社会は非常に多様性に富んでおり、猫が生涯生きていくうえで遭遇することになる刺激は数限りなくあります。

 生涯、犬と一緒に生活することがないとしても、犬のほえ声や匂いなどを経験させておくと動物病院でのストレスを軽減することができます。また大きな音を怖がる猫は少なくありませんが、幼い時期からいろいろな音に慣らしておくと予防効果があります。ただし、極端に大きな音や恐怖刺激は逆効果となるので、子猫の様子をよく見ながら、無理をせず少しずつ慣らす必要があります。怖がる様子がある場合には隠れる場所を与えて安心させたり、刺激から距離を置くなどして、怖がらせないように工夫しましょう。また必ずおいしい食べ物やおもちゃで遊ぶなど、楽しいことと組み合わせて慣らすようにしましょう。

村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
ペットのこころクリニック
犬や猫の問題行動に詳しい獣医師の村田香織先生が、ペットと幸せに暮すためのしつけや飼い方のコツをていねいに解説します。
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