末広がり八の字まゆ、福を招く たばこ屋の看板猫「ハチ」
茨城・水戸にある糸久たばこ店の看板ネコ「ハチ」。その名の通り、顔に「八」の字の模様がある。ハチがテレビや新聞などで取り上げられると、瞬く間に有名となり、今では全国からファンが訪れるという。
仕事のついでにハチに会いに来たという東京の男性に、県外からハチに会いに来た親子、たばこや宝くじを買うときに、「ネコちゃんはいる?」と、うれしそうに店内を見回す地元の人など、糸久たばこ店にはひっきりなしに客が訪れる。
「『ハチノミクス』なんて言う人もいるんです」
そう笑いながら話すのは、ハチの飼い主で、編集プロダクション代表の前田陽一さん。
前田さんとハチとの出会いは、震災直後。3・11の日、水戸市は震度6弱の揺れに襲われ、大きな被害が出ていた。幸い前田さんにケガなどはなかったが、近所にある居酒屋など飲食店が並ぶ宮下銀座商店街は、酒瓶が割れ、あたり一面、酒の匂いが漂った。店の再開は遠く、暗い雰囲気に包まれた。
水戸生まれ、水戸育ちの前田さん。何かできないかと考えていた。そんなときに前田さんの友人から、「面白い模様の子ネコが生まれたから、飼わないか?」ともちかけられた。見ると、顔に八の字模様がある。
「このネコが明るくしてくれるかもしれない」
そう直感した前田さんは2011年6月、ハチを引き取った。
毎日抱かれて出勤
会社の事務所で飼うことにしたが、取材で前田さんが留守にすることも多い。子ネコのハチを一匹にさせるのはかわいそうだと、以前からの知り合いの糸久たばこ店に、留守の間ハチを預かってもらうことにした。
前田さんの肩に抱かれ、毎日ハチは“出勤”するようになった。糸久たばこ店は宮下銀座の入り口にある。ハチが話題になると、自然と人が周辺の店にも戻ってきた。糸久たばこ店の店長、長谷川香さんも終始笑顔だ。
「ハチが街を明るくしてくれました。それにハチが来てから、うれしいお手紙やお声掛けを、たくさんいただくようになったんです」
長谷川さんのもとには、「初めて宝くじを買って当たった」というものから、「受験に合格した」「彼氏ができた」「就職が決まった」「結婚できた」「病気が治った」というものまで、明るい話が舞い込んでくるという。
たばこ屋の看板ネコは、今日も福を招く。
(AERA増刊「NyAERA」から)
(文:AERA編集部・大川恵実、写真:今村拓馬)
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