筋肉の病気は治りにくい 柴犬の筋肉を学ぶ④
マッチョな人が好き、筋肉に惚れ惚れしちゃう……ってな人も意外と多いようだが、愛犬の筋肉について意識したことはあるだろうか。犬の筋肉はどんな役割をしているのかなど、筋肉にまつわるアレコレを詳しく学ぼう。
Text:Hiromo Mizoguchi Illustration:Yuko Yamada
監修:高崎一哉先生
筋肉の病気
筋肉に関する病気にはどのようなものがあるのだろうか。それぞれの主な症状や原因、治療について知っておくと安心だ。
筋肉の病気は発症すると治らないものが多い
筋肉だけではなく関節疾患なども含めると、さまざまな病気があるが、筋肉のみの病気は、そう多くはない。
「重症筋無力症、筋ジストロフィー、ミオパシーは、いずれも先天性や遺伝性によるものです。生まれた時からすでに症状が出ていたり、生後3~4ヶ月、あるいは1歳までに発症するケースが多く、そして発症すれば根治はできません。人間では難病といわれているものがほとんどです」と高崎先生。
これらの筋肉に関する病気は、食道であったり、食べ物を飲み込む筋肉に影響を及ぼすと、食事から栄養を摂ることができなくなってしまう。生まれたばかりの子犬であれば、上手くおっぱいが飲めず、そのまま命を落としてしまうことも少なくない。
また、本来、食道へ行くはずの食べ物が気管の方へ行ってしまうこともある。そうなると誤嚥性肺炎を起こす。
「筋肉のケガを除いては、どの病気も柴犬ではそんなに多くはありません。でも、全く発症しないわけではないので知っておくことは大切です」
重症筋無力症
筋肉の疲労や脱力を起こす病気
神経から筋肉への伝達が上手くできなくなってしまうことで、筋肉の疲労や脱力を引き起こしてしまう病気。先天的な問題といわれている。主な症状として、よだれが異常に出る、食べるのが遅い、上手く食べられない、食べ物が胃まで入らず吐出する、常にまぶたが落ちて眠そうな顔をしている、筋力が落ちるなど。
治療 投薬による緩和や対処治療を行う
神経伝達物質のアセチルコリンを攻撃する免疫物質であるアセチルコリン抗体を測定し、診断する。基本的には治らない病気であり、適切な投薬によってアセチルコリンの量を維持していくしかない。また症状によって、誤嚥性肺炎の予防と治療、胃チューブなどで食事を送り込むなどの対処が必要となってくる。
ジストロフィー
オスに発症することが多い病気
筋肉の細胞骨格を形成するたんぱく質が不足し、そのために筋肉が正常に構築されず、働かなくなる病気。遺伝性疾患であり、性染色体に原因があるのではといわれている。メスはほとんど発症しない。主な症状として、成長が遅い、筋肉が少ない、筋肉を触ると萎縮しているような感じで固い、あまり動かないなど。
治療 緩和する薬はなく対処療法のみ
治らない病気であり、症状を緩和する薬も今のところはない。生後3~4ヶ月頃に発症することが多く、そう長くは生きられない。筋肉が少ないため、食べ物を上手く飲み込むことができなくなってしまう。誤嚥性肺炎の予防と治療、胃チューブによって食事を補助していくなどの対処を行いながら、見守っていくしかない。
ミオパシー
筋肉が萎縮してしまう病気
ミオパチーと呼ぶこともある。ラテン語でミオは筋肉、パシーは苦痛や病の意味であり、筋肉の病気を総称している。筋肉の萎縮が起こる遺伝性の疾患。全身に起こるケースもあるが、多いといわれているのが咀嚼筋や目の周りの筋肉、皮膚の下の薄い筋肉の皮膚筋など。萎縮した部分は炎症を起こし、痛みを出す。
治療 ステロイドなどの薬で緩和させる
問題の起こっている筋肉を採取して、病理検査によって診断していく。根治は難しい病気であるが、ステロイドや免疫抑制剤などによって症状を緩和することは可能だ。ただし、薬は一生続けていかなければならない。食事を飲み込 むなどに関連した筋肉に問題がなければ、命に関わることはなく、生きていくことができる。
筋肉のケガ(切断)
犬同士のケンカには気をつけて
思わぬことで、身体のどこかをケガした際に筋肉を切ってしまうこともある。考えられるとすれば、犬同士のケンカによるもの。ドッグランなどでは、きちんと管理されていることが多いので、めったに起こることはない。例えば、同居犬同士でじゃれ合っている最中、エスカレートしてケガをしてしまうなどがあげられる。
治療 傷の大きさや場所に合わせて治療
傷の大きさや場所によって、治療は異なってくる。大きな傷であれば外科手術によって縫合が必要になる。小さい傷であれば包帯などで傷口を保護することで治っていく場合も。あとは犬が傷口を舐めてしまうかにもよる。傷が治るまで長期間カラーをつけるのが犬にとって苦痛であれば、手術で早めに治すという選択肢も。
もっと知りたい筋肉のコト Q&A
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- :筋肉の中でも犬が生活する上で重要な筋肉はどこでしょうか?
- どの筋肉も生活する上で重要です。しいてあげるならば、四肢の筋肉であり、その中でも犬にとって前足は重要です。前足は頭と身体を支えるだけでなく、ゴハンを食べたり水を飲んだりなどの姿勢を変える際も前足の筋肉の働きが大きいといえるからです。
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- :犬も人間が運動した後に起こるような筋肉痛になりますか?
- :なるとは思います。ただ、人間と比べると犬は痛みに対して強い動物です。人間が感じるような筋肉痛程度で、歩き方などに変化が見られるとは限りません。ただ、なんとなく元気がなくなっていることもあるので、犬の様子に気づいてあげることが大切です。
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- :人間が筋肉をストレッチするように犬も自分でほぐすのでしょか?
- :伸びをしたりなどのストレッチを犬もやっている可能性はあります。どんな動きが自分にとってラクなのかは、これまでの経験によって犬は学習するものです。スキンシップができるのなら、犬の様子を見つつ、飼い主さんがマッサージするのもひとつです。
まとめ
愛犬の筋肉をよりよくするのは飼い主さんの努力次第
犬の筋肉のしくみを理解して健康的な筋肉を目指そう!
いかがだっただろうか。筋肉にもいろいろな種類があり、どの筋肉も犬が生活する上で欠かせないものばかりだ。そして愛犬が持って生まれた筋肉をどれだけ成長させ、活かすことができるのか。それをどこまで維持させてあげられるのかは、毎日の運動と食事がとても大切だというのを忘れてはならない。愛犬の筋肉をよりよいものにさせてあげるのは、飼い主さんの努力次第といえる。これらをよく理解したうえで、しなやかで強靭な筋肉作りを目指そう。
監修:高崎一哉先生
高円寺アニマルクリニック院長。治療のみならず、食事や飼育環境の改善など飼育指導にも積極的に取り組み、ドッグトレーナーと連携してしつけの指導にも力を入れている。
高円寺アニマルクリニック 東京都杉並区高円寺南2-14-14
TEL03-3311-1014
http://koenji-ac.com/
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