「補助犬」知っていますか? 同伴拒否続き、国や自治体がPR

補助犬をPRする(左から)盲導犬、介助犬、聴導犬とユーザーら=大阪市北区
補助犬をPRする(左から)盲導犬、介助犬、聴導犬とユーザーら=大阪市北区

 身体障害者を助ける補助犬の同伴を不当に拒否する事例が後を絶たない。乗車拒否したタクシー会社が行政処分を受けたケースもあった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、関係団体や国は補助犬への理解を深めてもらおうとPRしている。


■盲導犬のほかに、介助犬・聴導犬

 盲導犬と暮らす兵庫県の盲目の男性(45)は9月、会社の健康診断で訪れた指定病院で職員に盲導犬を入り口に預けるよう指示された。「目を奪わないで欲しい」と伝え、同行できるよう交渉したが理解を得られなかったという。

 後日、病院側は受け入れに不備があったとして男性に謝罪。受け入れマニュアルを刷新し、職員教育を行った。男性は「飲食店などでの拒否はままあるが、病院という公共性の高い場所でも拒否がなくならないのが残念」と話す。

 3月には、金沢市で盲導犬を連れた男性がタクシーに乗車を拒否された。北陸信越運輸局石川運輸支局によると、70代の男性運転手が車内が汚れるのではないかと思い拒否したという。同支局は5月、道路運送法の引き受け義務違反で、このタクシー会社の車両を1台分36日間停止とする行政処分を出した。

 公益財団法人「関西盲導犬協会」の藤本喜久男さんは「理解不足は、利用者にとっても受け入れ側にとっても不幸なこと」と話す。

(左から)介助犬、聴導犬、盲導犬のPRイベント=大阪市北区
(左から)介助犬、聴導犬、盲導犬のPRイベント=大阪市北区

 身体障害者補助犬法では、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種を補助犬と定め、公共性がある場所は原則として同伴を拒んではならないと定めている。4月には障害者差別解消法が施行され、補助犬のユーザー(使用者)を受け入れる側は、合理的な配慮をすることも必要となった。ただ、NPO法人「日本補助犬情報センター」などによると、盲導犬以上になじみの薄い介助犬と聴導犬は、さらに理解を得られない場面が多いという。

 介助犬は、手足などが不自由で物を拾ったり扉を開けたりといったことが難しい人を介助する。2002年の身体障害者補助犬法の成立には、兵庫県内で活動した介助犬シンシアが貢献し、JR宝塚駅には銅像もある。

 ユーザーだった木村佳友さん(56)は「補助犬法ができた当時は報道も多く認知度が上がったが、いまは法律の内容も名前も知らない人が増えた」と残念がる。法律の趣旨や対応の仕方について研修する飲食店やスーパーなども最近は減り、補助犬法を知らない店員が入店を断るケースが増えたと感じている。

 聴導犬は携帯電話のメールの着信やインターホン、目覚ましなど、生活に必要な音を知らせる犬。一般社団法人「日本聴導犬推進協会」によると、盲導犬にはラブラドルレトリバーやゴールデンレトリバーが多いが、聴導犬には雑種の小さい犬もいるためペットと思われ、店で同伴を断られることもあるという。

■見かけたら見守って

 厚生労働省によると、全国で活動し、登録されている昨年度末の補助犬は、盲導犬966頭、介助犬73頭、聴導犬64頭だった。10年前と比べると介助犬は2.4倍、聴導犬は5.8倍に増えた。盲導犬はほぼ横ばいだ。

 いずれの補助犬も、不必要にほえたり、じゃれついたりしないよう訓練を受け、一定水準をクリアして補助犬になる。身体障害者補助犬法でユーザーは犬の健康や清潔さを保つことが義務づけられ、定期的に動物病院などで健康診断を受けさせる必要がある。

 実際に補助犬を見かけたら、どうすればいいのか。

 日本補助犬情報センター事務局長の橋爪智子さんは「仕事中の補助犬は、まずはそっと見守ってあげてください」と話す。声を掛けたり、食べ物をあげたりして、犬の注意をひく行為は厳禁。そのうえで、ユーザーには、何か手伝うことがないか積極的に尋ねてほしいという。

 こうしたルールを知ってもらおうと、厚生労働省は10月、大阪市北区の阪急うめだ本店で補助犬3種を集めたイベントを開催。それぞれの役割をデモンストレーションを交えて紹介し、ユーザーは受け入れ拒否で交渉に苦労したエピソードなどを披露した。

 来年1月には、東京オリンピック・パラリンピックに向けて、衆院議員会館などを会場に「ほじょ犬サミット」が開かれる。啓発パレードで補助犬を取り巻く環境改善を訴えるほか、五つの分科会を通じてユーザー、補助犬育成団体、受け入れ側が現状の問題点や解決策などを話し合う。

 事務局の社会福祉法人「日本聴導犬協会」会長の有馬もとさんは「来日する補助犬とユーザーは普段より多いと見込まれる。それまでに補助犬の認知度を上げ、しっかりとおもてなしをしたい」と意気込む。

(後藤泰良)

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<補助犬>

 厚生労働相指定の法人が認定する。ただし盲導犬は当面、国家公安委員会指定の法人が認定する。認定されるには補助能力のほか、不特定多数が利用する施設で周囲に迷惑をかけず、音や他の動物を無視できるなどの能力が求められる。訓練内容は団体によって違い、介助犬はユーザーの障害に合わせた補助をするための訓練を受けるので、できることは個々で違う。育成や普及・啓発に、国は予算をつけている。ユーザー(使用者)を海外では一般に「パートナー」と呼び、最近は日本でもそう呼ぶ動きがある。
朝日新聞
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