「犬のしぐさや表情で気持ち読み取る」 警察犬を40年訓練
警察犬を育てて40年。訓練士の須永武博さん(62)がしつけた犬は、県内外で活躍している。全国的な警察犬の競技会では上位入賞の常連で、関係者の間では知られた存在だ。長年の功績が評価され、14日に群馬県警から表彰される。
太田市の自宅は、須永さんが所長を務める「群馬ドッグセンター」の訓練所を兼ねている。事務所の壁には、警察からの感謝状がずらりと並ぶ。群馬県警以外の名前も増えてきた。全部で80枚くらいあるという。
物心がついた頃には犬の世話をしていた。学校をさぼって友だちの家の犬小屋で寝ていることもあった。
高校卒業後の進路を考えていた時、飼い犬が死んだ。犬がいない生活は初めてで存在の大きさに気づいた。「犬と一緒に生活したい」と県内のベテラン訓練士の元で住み込みで働き、21歳で嘱託警察犬の訓練士の試験に合格した。
その後独立し、現在は須永さんを含めて3人の訓練士が、須永さんの犬や飼い主から委託された30~40頭をしつけている。
しつけで大事なのは、犬のしぐさから気持ちを感じることだという。犬に話しかけ、その表情から感じ取る。「人が人と話すとき、相手の反応を見ます。それと同じです」
これまで殺人事件の現場や行方不明者の捜索など「千回まではいかないけど、数百回」出動した。他県の警察からも、須永さんが育てた犬をほしいと声がかかる。
警察が直接管理する直轄警察犬では、1都1道3県で活躍している。警視庁には2頭おり、今年1頭が上級試験に合格して現場デビュー、もう1頭も試験に向けて訓練中だ。鑑識課の担当者は「よく訓練されている。本格的な訓練にスムーズに入れるのでありがたい」。北海道警には1頭おり、「賢い犬で意欲もある。まだ2歳と若いので今後の活躍が期待できる」と担当者は話す。
1月、桐生市内で高齢女性が行方不明になったと連絡があった。現場に駆けつけ、犬ににおいをたどらせると女性の家のまわりを1周した。「これは近いな」。家族が1回探した場所を回ってみると、畑の畝(うね)の間に女性が小さくうずくまっていた。
警察庁によると、全国の警察犬の出動回数は、2008年に犯罪捜査の数を、行方不明捜索の数が上回り、毎年差が開いている。
県警の鑑識課の担当者は「早い段階で行方不明者がどちらの方角に向かったのかを示してくれる。犬の嗅覚(きゅうかく)の代わりになる機械はない。容疑者の追跡でも警察犬は不可欠」と話す。
出動に深夜も雪の寒い日も関係ない。「ほとんどボランティア」という。それでも続ける理由は「犬が好きで始めた仕事。それで人助けになるのなら」。
今後も体力が続く限り、警察犬を育て続けるつもりだ。
(角詠之)
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