映画「東の狼」、猟犬シロも出演 ニホンオオカミを求めて森へ

映画に出演した猟犬シロと辻保春さん=奈良県東吉野村
映画に出演した猟犬シロと辻保春さん=奈良県東吉野村
 ニホンオオカミの最後の捕獲地、奈良県東吉野村を舞台にした映画「東の狼(おおかみ)」が完成した。撮影隊への炊き出しやエキストラ出演には村民を挙げて協力。役者らとの交流は村民にとっても思い出深く、「映画の一部を担えて感激です」と喜ぶ。

 

 キューバ出身のカルロス・キンテラ監督が今年4月、東吉野村とその周辺で撮影した。世界の若手監督に奈良で映画を制作してもらう企画「NARAtive(ナラティブ)」の一環で、奈良在住の映画監督、河瀬直美さんがプロデューサーを務める。


 今夏に完成し、9月の「なら国際映画祭」でも上映された。藤竜也さん演じる猟師会長が、絶滅したとされるニホンオオカミを求め、取りつかれたように森深くへと入り込んでいく物語だ。


 スタッフへの炊き出しは地元の女性らで担った。水本秀美さん(60)によると、昼食をのべ780食提供したという。村の山々を映し出した空撮映像には「わー、こんなに美しいところに住んでいるんだ」と感じたといい、「改めて村を見直しました」と話す。


 藤さんに猟師の指導をしたのは地元猟師会の副支部長、辻保春さん(67)だ。辻さんが10年間飼っている猟犬シロとともに、映画にも地元の猟師役で出演した。


 藤さんは撮影が休みの日もシロに餌をやってスキンシップを取り、猟師になりきっていたという。「プロの役者魂はすごい。映画を通じていろんな人と出会え、私の一生の宝物です」


 村民への上映会が9月下旬、村民ホールで開かれた。人口の3分の1に当たる約600人が詰めかけた。

 

舞台あいさつをする河瀬直美さん(右)と藤竜也さん=奈良県東吉野村
舞台あいさつをする河瀬直美さん(右)と藤竜也さん=奈良県東吉野村

 河瀬さんと藤さんも駆け付けた。河瀬さんは、初めて東吉野の山を見たカルロス監督が動けなかったことを明かした。「何か魂のようなものを感じたんだと思う。みなさんのふるさとを誇りに思ってください」と語りかけた。


 藤さんは取材に対し、撮影時には村営住宅に泊まり込み、毎晩のように村民と杯を酌み交わした思い出を楽しそうに語った。「毎日同じ釜の飯を食い、みんなとは友だちになった。来年も映画の同窓会をやるなら村に来ます」


 東京の映画配給会社ファントム・フィルムによると、2017年に全国公開を予定している。


(菱山出)

朝日新聞
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