ペット保険、どう選んだらいい? サービスを比較、解説

「国民皆保険」の人間とは違い、獣医療は自由診療。犬と猫の平均寿命が14歳を超え、高齢化も進む。医療費がかさむとき、頼りになるのがペット保険。多様化する商品の中から、どれを選べばいいのか。
文=角田奈穂子


(iStock.com/Halfpoint)
(iStock.com/Halfpoint)

長寿にともなって高額化する医療費

「ペット保険に入ってよかった」と話すのは、12歳のイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルを飼っている東京都に住む女性(52)だ。

 前に飼っていた犬ががんにかかり、病気が発覚してから亡くなるまでのわずか半年ほどの間に、ベンツ1台が買えるくらいの医療費を支払った。診療費が高い動物病院だったこともあるが、検査や投薬で一度に5万円以上、お金が出ていくこともあったという。

「その恐怖感から今の子は5歳になったとき、医療費の70%まで支払われるペット保険を契約しました。今のところ、大病はしていませんが、3週間に1回受けている皮膚病対策の薬浴などに適用されているので、元は取れています」

 いまやペットも長寿の時代。犬の平均寿命が14歳を超え、猫が14~15歳まで延びている。それに合わせて病気やケガの医療費も増加。2014年のデータでは年間で猫は4万9875円、犬は8万912円になっている(アニコム損害保険調べ)。

 そうした医療費を補償するペット保険はどういうものなのだろう。ファイナンシャルプランナーでFPユニオンLabo代表取締役の宮越肇さんはこう説明する。

「ペット保険は、医療費をカバーするので生命保険のように見えますが、損害保険の一つ。車や家と同じく、ペットは被保険者の所有物という扱いなんです」


見直しやすい1年更新の契約。補償の総額で比較を
ペット保険は車と同じ考え方の損保商品

 ペット保険は、病気やケガを損害と考えて作られている。そのため、ほとんどの商品が1年契約。人間の生命保険のように、死亡時にペットの生命に保険金が支払われることはなく、補償対象になるのは入院や手術、通院だ。

「ペット保険には大きく分けて、損保会社が運営しているものと、少額短期保険会社が運営しているものがあります」(宮越さん)

 損保会社と少額短期保険会社の大きな違いは、破綻したときの補償の対応と保険料の額だ。損害保険契約者保護機構に加入している損保会社であれば、一定の条件で保険金が補償される。少額短期保険会社には、破綻時の補償はないが、保証金の供託制度はある。

「とはいえ、ペット保険の補償期間は多くが1年更新の掛け捨て。支払う保険料や受け取る保険金もそう高くはありません。加入前に経営状況は調べたほうがいいですが、万が一、破綻したとしても、人間の生命保険のようなダメージは受けないと思います」(宮越さん)

 それよりも、ペットが抱えるリスクと補償額、保険料のバランスで考えたほうがいいと宮越さんは話す。そこで、損保会社のアニコム損害保険、少額短期保険会社のペットメディカルサポートに、それぞれの商品の特徴を聞いてみた。

「商品には保険の対象となる診療費の70%、または50%を限度の範囲内でお支払いする二つのタイプがあります」(アニコム損保経営企画部課長の塩澤みきさん)

「ふぁみりぃ50%プラン」は、支払い割合が診療費の50%。限度額は通院と入院では1日あたり最高1万円まで、手術は1回あたり最高10万円まで。1年間に利用できる日数は、通院と入院がそれぞれで20日まで、手術は2回まで利用できる。支払い割合が70%になるプランもある。

「新規契約の対象年齢は、保険契約が始まる日で7歳11カ月までですが、継続契約は原則として一生、続けることができます」(塩澤さん)

 保険料は猫は1種類だけだが、犬は犬種によって五つのクラスに分けられている。たとえば、1歳で50%プランに加入した場合、チワワは月払いで2340円だが、ドーベルマンでは3630円になる。

「犬種によってかかりやすい病気のリスクが異なります。アニコムは体の大きさだけでなくリスクに基づき、保険料を決めているので、犬種で差が出るのです」

 アニコムならではのメリットもある。アニコムの保険に対応している病院であれば、窓口に「どうぶつ健康保険証」を提示するだけで保険金の請求が完了する。他の損保会社や少額短期保険会社では、動物病院の領収書を保険会社に送る必要がある。受理されてから指定口座に保険金が振り込まれる仕組みだ。

 一方、少額短期保険会社のペットメディカルサポートの商品「PS保険」の場合、特徴的なのは、保険料が安いこと。1歳のチワワの保険料は月額1500円で済む。

「我が社は、販売はインターネットが基本で、対面販売の代理店制度は採用していません。また、本社も東京のみで、人件費やオフィス代などの経費がかからないようにしています。それが、保険料の安さにつながっているのです」(ペットメディカルサポート取締役の猪又司さん)

 動物病院の領収書をペットメディカルサポートに送付し、保険金を請求する手続きは必要だが、補償内容は損保会社と肩を並べる。通院の補償は1日あたり1万円まで、限度日数は年20日、入院は1日あたり2万円までで限度日数は年30日まで、手術での限度額は1回あたり10万円で異なる手術2回まで請求ができる。


加入年齢の制限や品種のリスクも考えて検討したい
補償の総額でまずは比較してみる

 前出の宮越さんは、ペット保険を比較するとき、まず補償額を足し、総額で比べるとよいとアドバイスする。たとえば、支払い割合が70%プランで通院・入院が1日あたり最高1万4千円まで、利用日数は年20日、手術1回あたり14万円で2回まで利用できるという商品の場合、受け取れる総額は、最多で56万円になる。

 次にチェックしたいのが保険料だ。年払いやマイクロチップをつけていると割安になる会社もある。また、保険の利用状況によっては、継続加入した場合、翌年の保険料が安くなることもある。

「マイクロチップ割引は装着・登録を推奨する目的もあります。装着していれば万が一、迷子になっても帰ってくる可能性が高くなります。また、所有者が明らかになりますから、責任を持ってペットを飼うという飼い主様の意識の高さの証明にもなります」(アクサ損保の渡邊静さん)

 補償と保険料が把握できたら、さらに加入できる年齢や継続契約した場合に終身かどうか、保険請求の方法、特約の有無を検討していこう。ペット保険の中には、入院と手術に特化し、通院は保障しない商品や、1回の限度額、加入できる年齢が違う商品もある。

 健康相談ができるなどの付帯サービスにも注目しよう。

「アクサ損保のペット健康相談サービスではケガや病気、しつけなどの相談を受けつけています。動物病院が診療時間外の朝や夜間にご相談を受けるケースが多いですね」(渡邊さん)

 気をつけたいのが、商品によって待機期間があること。ペット保険は健康な犬や猫が対象のため、保険契約が始まる日から、待機期間が設けられている。この期間に発症した病気は保険の対象とならない場合があるので注意が必要だ。

 ただ、ペット保険のいいところは1年で契約の見直しができること。若い頃は保険料が安いタイプ、そろそろ加入の限度年齢になる5~6歳になったら補償が手厚いタイプに入る手もある。

「若くて元気なうちは保険の必要性を感じないかもしれませんが、いざ保険に入ろうと思った時に、病気にかかったり、加入できる年齢を過ぎていたということも。いざというときに医療費が足りないといったことを避けるためにも、加入の検討をおすすめします」(塩澤さん)

※保険料はトイプードル(0歳)で月払いする場合で試算。
※新規加入の年齢は保険期間の初日時点での満年齢。
※掲載情報は各保険の特徴的なポイントです。詳細は各保険会社の商品案内でご確認ください。

*保険料の情報等は2015年11月5日現在のデータです。

引受保険会社 アイペット損害保険 損害保険会社

保険料

930円(うちの子ライトプラン/ WEB割引)

補償内容

(通院)対応プランなし (入院)手術を含む連続した入院を10日間まで補償(手術)手術1回あたり50万円までを年2回補償(支払対象診療費が3万円以上に限定)

特約・付帯サービス

ペットが他人にケガをさせたり、他人のものを壊した場合に補償する「ペット賠償責任特約」を付帯可能/多頭割引/継続契約で過去1年間支払いがなかった場合、翌年の保険料が5%割引

注意事項

新規加入は12歳11カ月まで。申し込みを受け付けた日から保険責任が開始するまで1カ月~1カ月半ほどの審査期間・待機期間あり(期間は支払い方法で異なる)

特徴

手術と手術を含む入院に特化

問い合わせ先

コンタクトセンター 0800-111-1525(月~土10:00~18:00)

http://www.ipet-ins.com/

引受保険会社 アクサ損害保険 損害保険会社

保険料

2020円(プラン50 /マイクロチップ装着なし)

補償内容

保険の対象となる診療費の50%が支払い限度の範囲内で支払われる。保険期間中の支払限度額は50万円。支払限度額内であれば、保険金の支払回数や1回あたりの支払額に上限はない

特約・付帯サービス

ペットが他人にケガをさせたり、他人のものを壊した場合に補償する「ペット保険賠償責任危険補償特約(示談交渉付)」を付帯可能/インターネット割引、マイクロチップ割引あり/24時間365日対応の「ペット健康相談サービス」の無料利用

注意事項

新規加入は生後90日齢から満13歳まで/新規加入は初年度契約に限り、保険契約の始期日から30日間等の待機期間がある

特徴

通院、入院、手術に対応/継続は終身も可

問い合わせ先

カスタマーサービスセンター 0120-324-384(月~金9:00~19:00/土・日・祝9:00~17:00)

http://pet.axa-direct.co.jp/

引受保険会社 アニコム損害保険 損害保険会社

保険料

2680円(ふぁみりぃ50%プラン)

補償内容

(通院)(入院)保険の対象となる診療費の50%が支払い限度の範囲内で支払われる。1日あたり最高1万円まで。1年間に利用できる日数は20日まで(手術)1回あたり最高10万円まで。1年間に利用できる回数は2回まで

特約・付帯サービス

ペットが他人にケガをさせたり、他人のものを壊した場合に補償する「ペット賠償責任特約」を付帯可能/多頭割引/継続契約は保険の利用状況によって割増引あり

注意事項

新規加入は7歳11カ月まで。初年度契約に限り、保険契約の始期日から30日間の待機期間がある

特徴

支払い割合70%のプランもあり/全国の動物病院の診療費に対応。「どうぶつ健保」対応病院の場合は、窓口に専用カードを提示すれば請求が完了

問い合わせ先

あんしんサービスセンター 0800-888-8256(月~金9:30~17:30/土日祝9:30~15:30)

http://www.anicom-sompo.co.jp/

引受保険会社 au損害保険 損害保険会社

保険料

1170円(コース50)

補償内容

(通院)対応プランなし(入院)(手術)保険の対象となる診療費の50%支払い。年間の支払限度額は50万円

特約・付帯サービス

24時間365日対応の「獣医師による電話相談サービス」付き

注意事項

新規加入は生後30日から10歳まで。初年度契約に限り、保険契約の開始日から30日以内にかかった病気には適応されない

特徴

支払い割合70%のプランもあり/入院・手術を補償する保険/年間支払額内なら1回あたりの支払限度額なし

問い合わせ先

カスタマーセンター 0800-700-1122(9:00~18:00 年末・年始を除く)

http://www.au-sonpo.co.jp/pc/

引受保険会社 PS保険(ペットメディカルサポート) 少額短期保険会社

保険料

1500円(50%補償プラン)

補償内容

(通院)1日あたり1万円まで。1保険契約の限度日数は20日(入院)1日あたり2万円まで。1保険契約の限度日数は30日(手術)1回あたり10万円まで。1年間に利用できる回数は異なる手術2回まで

特約・付帯サービス

ペット用車椅子費用最大10万円自動付帯/ペット葬儀費用最大3万円付帯可能

注意事項

新規加入は生後120日以上、9歳未満/申込日の翌々月1日から補償開始/年間の通院・入院・手術を合わせた限度額は100万円

特徴

支払い割合100%、70%のプランもあり/請求書類到着日から指定口座に振り込まれるまで平均3.6日(2015年度上半期平均)

問い合わせ先

わんにゃんいいわコール 0120-12-1856(月~金9:30~17:30)

http://pshoken.co.jp/

引受保険会社 FPC 少額短期保険会社

保険料

1590円(0~4歳) 2390円(5~8歳)

補償内容

(通院)1日あたり1万2500円まで。年間30日まで (入院)1入院あたり12万5000円まで。年間3入院まで(1入院は入院から退院まで)( 手術)1手術あたり10万円まで。年間1手術まで

特約・付帯サービス

なし

注意事項

新規加入は生後30日以上、9歳未満の犬猫が加入可能/ワクチン接種証明書、マイクロチップ証明書、販売契約書、血統書のいずれかが必要

特徴

通院・入院・手術に対応する50%補償の保険/8歳まで犬猫とも同じ保険料。9歳以降は猫は年齢、犬は分類と年齢で変わる/継続は終身も可

問い合わせ先

0120-56-3912(月~金10:00~17:00 )

https://www.fpc-pet.co.jp/

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この連載について
from AERA Mook「動物病院 上手な選び方」
AERAムック「動物病院上手な選び方」(朝日新聞出版)に掲載された、ペットの飼い主に役立つ記事を集めた連載です。
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