「学校から解剖実習をなくして!」 文科相に署名提出
小・中・高校(以下、学校)において、いまだ生徒たちにカエルやネズミ、魚などの動物を殺させ、内臓を観察させるといった解剖実習を行っているところが数多くあります。
現在、学校に対して解剖実習の実施は義務付けされていないことから、すでに廃止している学校も少なくありません。しかし、禁止もされておらず、学習指導要領解説の理科編には、「動物の体のしくみ」などの課題を学ばせる方法の一つとして解剖実習が例示されていることもあり、理科や生物の担当教師の一存で安易に解剖実習を実施する学校もあるのが現状です。
動物をモノのように切り刻むのが解剖なのですから、生徒たちが「かわいそう」「気分が悪くなる」というのは人間として当然持つべき心情であると言えます。それにもかかわらず、成績に影響するのではないか、先生に嫌われるのではないかといった不安から、生徒たちは泣く泣く解剖に参加しなければならないのです。このような動物にとっても、生徒にとっても残酷な解剖実習をすべての学校からなくすため、JAVAは「学校から解剖実習をなくそう!キャンペーン」を展開しています。
その一環として、昨年から集めていた文部科学大臣宛ての「学校における解剖実習の廃止を求める署名」19,108筆を、6月21日(火)、JAVAの理事、スタッフ、会員ら7人が、馳浩文部科学大臣に面会し、提出しました。また、子どもさんたちから寄せられていた「学校から解剖をなくして!」という思いのこもったサイン、メッセージも手渡しました。
私たちからは、馳大臣に次のような解剖実習のデメリット・廃止すべき理由をお伝えしました。
■解剖体験で、多くの子どもたちが傷つき、苦しんでいます
「解剖した動物が、かわいそうだった」「残酷なことをしてしまった」などの理由から、後悔と自己嫌悪に陥る子どもも少なくなく、これまでJAVAには「辛かった」「解剖なんか二度としたくない」といった声が数多く寄せられています。しかし、どれだけ「やりたくない」と思っても、子どもたちは「成績に影響したら困る」「先生に嫌われたら学校に行けなくなる」といった不安から、それを言い出せず、気持ちを押し殺して解剖実習に参加し、深く傷ついているのです。
■解剖実習は、児童生徒に悪影響があります
命を軽視した兇悪犯罪が頻発し、陰湿ないじめが社会問題となっている今、命の大切さや他者を思いやる心を育む教育が求められています。解剖実習は倫理観を低下させ、まさに道徳教育の妨げになるものであることから、速やかに止めるべきなのです。
解剖が与える子どもたちへの悪影響に関しては、いくつもの学術論文や書籍でも指摘されています。たとえば学術誌「Journal of Contemporary Ethnography」にも、「解剖を行わせることが、児童生徒たちに動物や自然に対して何も感じない冷淡な感覚を育ててしまう危険性がある。解剖のショックから、科学の道に進もうという意欲をそぐことにもなりかねない」という論文が掲載されています。
■動物を犠牲にしない代替法があります
動物を用いずに動物の体の仕組みなどを学ぶ方法には、コンピュータシミュレーション、動画、精巧な3D模型など様々な代替法があり、それらを使用すれば、何回でも繰り返し学習でき、また自分のペースで行うことができるなど、多くのメリットがあります。解剖を行った場合と代替法で学んだ場合では、その知識に差はない、もしくは、代替法で学んだ方が知識が身に付くことが、数多くの研究で証明され、論文が発表されています。
■多くの国では、解剖実習を禁止しています
初等中等教育での解剖実習については、英国、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、スイス、フランスなどでは、生体解剖を法律で禁止する等の規制を設けているほどです。
そして、解剖を行っている学校は、理科の学習指導要領の解説にある解剖実習を学習方法の一つとする例示を解剖を行う理由にしていることから、これ以上、解剖の犠牲になる動物、解剖実習に苦しむ子どもたちを増やさないために、学習指導要領の解説から解剖の記述を削除していたただきたい、と強く訴えました。
馳大臣は、私たち一人一人の声に耳を傾け、要望を重く受け止めてくださったと感じました。
「学校から解剖実習をなくそう!キャンペーン」は、この署名提出がゴールではありません。解剖実習をなくすことのできる学習指導要領とその解説の改訂実現に向けて、取り組みを進めていきます。
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