犬の記憶力 いくつかに分けられる記憶の種類

犬ってどれくらい記憶力があるの?過去を思い出すことはあるの? 音も記憶できるの? など、犬の記憶については謎が多い。動物や犬の記憶に関する画期的な実験を成功させてきた、京都大学心理学研究室の藤田和生教授に、犬の記憶について伺ってみよう。

 記憶は短期記憶と長期記憶がある。人の名前や思い出など我々が想像する記憶は長期記憶。大きく2つに分けられる。


宣言的記憶にも2つある 動物たちの記憶は複雑だ

 手続き的記憶と、宣言的記憶は、犬や人を含めた動物全般が持つ記憶だ。

 手続き的記憶は、動作の記憶である。同じことを何度も繰り返し、体で覚えているもの。人間の生活で例をあげると、自転車に乗る、などだろう。

 続いて、宣言的記憶。これは、意味記憶とエピソード記憶の2つに分けられる。エピソード記憶は偶然経験したことを覚えたもの。昨日、どこで、何をした、という記憶。

 意味記憶はいわゆる知識。コンピューターはどうやって動かすか、りんごは赤い、など。学校の勉強には、これが大切。

 最も犬が覚えやすいのは、手続き的記憶だと思う。犬をよく観察すると、パターン化された行動を覚え、考える前に体が勝手に動いているように見えるケースがよくある。オテ、オスワリのセットでコマンドを教えると、オテとだけ言ってもそのあと、座ってしまうことが多いのは、こういう記憶が関係しているのではないだろうか。

 また、ちょっと文脈からはずれるが、メタ記憶というものもある。これは、記憶の記憶と呼ばれているもの。例えば、"ある店の電話番号を知っている"ことを知っていると、電話帳で調べなくてもよいと認識できるので、スムーズに電話できる。犬もこの記憶を持っているだろうと考えられる。この記憶が役立つのは、例えば散歩中。2つに別れている道に遭遇した時、"左にいくと怖い犬がいるという記憶がある"ことを記憶していると、スムーズに右に行くことを選べる。


犬が使っている記憶

記憶の種類を理解するのも、説明するのも難しい。ちょっとわかりにくいと思うので、意味記憶や、エピソード記憶、手続き的記憶などの違いを図にまとめてみたぞ。

①繰り返すことで体が覚える 手続き的記憶

 いわゆる、何度も何度も繰り返すことで体で覚える記憶である。スポーツや楽器演奏の領域では、この記憶を定着させるために、反復練習をすることが多い。犬の場合も、例えば走ったり、歩いたりという生きていくうえで重要な動きを、スムーズに行えることに、この記憶が大きく貢献しているらしい。

②2つの記億に分けられる 宣言的記憶

・意味記憶

 物事の意味を表す一般的な情報の記憶。例えば、「地球は丸い」「犬は人間と同じ脳のメカニズムを持つ」などが意味記憶にあたる。

・エピソード記憶

 例えば、「昨日、公園でコーギーと遊んだ」という思い出。覚えようという意識せずに記憶し、それを思い出せるという働きを持つ。

監修:藤田和生教授

京都大学文学部心理学研究室教授。多様な動物の認知、知性、感情の働きを分析し、相互に比較することを通して、心の進化を明らかにすることを目指している。主な著書に『誤解だらけのイヌの気持ち』など。

★実験参加犬募集★

 藤田教授はCAMP-WANというプロジェクトを主宰している。人と犬の関係をさらに深いものにするために、犬の行動や知性について調査している。CAMPWANでは調査に協力してくれる日本犬を募集している。

https://sites.google.com/site/kyotocampwan2/home

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