相撲部屋の猫親方 甘えん坊のムギ、力士の上でお昼寝
「猫親方」こと雑種の雄猫モル(11歳)が、稽古場で力士たちに睨みを利かせる相撲部屋の荒汐部屋。飼い犬の三吉(雄、13歳)もいるが、ほかに、もう一匹、猫がいる。それは雑種の雄猫ムギ(7歳)だ。
(末尾に写真特集があります)
近くの駐車場にうずくまっているところを力士が保護した。体はモル以上に大きいが、気はとても小さい。
「ムギは3階で力士と暮らしていて、シャイで一歩も部屋から出ません」
と、おかみさんの鈴木ゆかさん(54)。荒汐部屋は、1階が稽古場、2~3階が力士たちの部屋、4~5階が親方夫妻の部屋となっており、4階には三吉も住む。もう一匹の猫であるモルは稽古場から外まで、どこでも自由に行き来する。
一方のムギは甘えん坊で、寝る時は力士のおなかに乗ったり布団に潜ったり。あろうことか、昼寝中の力士の顔の上にお尻と尻尾を載せて眠ることもある。その仲良しの「寝姿」をツイッターにアップした三段目の福轟力さん(28)はニコニコして話す。
「ムギは僕のことが一番好き(笑い)。いやたぶん皆、自分こそ一番だって思ってるはず」
ムギは怪我した力士に寄り添って寝ることもあるそうだ。
モルも、ムギも、皆を愛し、愛されているのだ。
稽古後に2階で食事をする他の力士たちにも猫について聞いてみると……
序二段の廣瀬さん(27)は「時々踏みそうになるけど踏んだことはない」と笑いながら、こう話す。
「7年前に部屋に来たとき、もうムギがいた。夜、一緒に寝る時がある。でも、私の腕にムギが手をかけるので爪が当たって痛い。痛いけどうれしい(笑い)。実家にいた犬を思い出すんで」
序二段の力山さん(22)も、入門したとき、すでにムギがいた。
「もう空気っていうか、いるのが当たり前で、ペットというか仲間みたいです」
女将のゆかさんは、しみじみと言う。
「男所帯の勝負の世界。時に殺伐として言葉も足りない。そんな中でムギやモルが果たす役割は大きいのでは。家族と離れ、ペットとも別れてくる子にとっては安らげる存在でしょう」
犬猫たちが、人と人の「クッション」の役割も果たしている、とも見る。たとえば、入門したてで緊張続きの子が、「厳しい先輩が猫と触れ合っている姿」を見て、そうか、こういう面もあるんだな、と心をほぐす瞬間があったという。三吉も、日に2回の散歩は力士たちが交代でする。猫と犬が皆をつなげ、ひとつの大きな輪となっている。
さて、大相撲五月場所は8日から22日まで。地方開催の本場所の場合は三吉だけ連れて行き、モルやムギは留守番だ。だが今回は両国なので、傍らで見守ってくれる。
勝ち星をいっぱい頼むよ!
猫親方はそう願っていることだろう。
(藤村かおり)
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