「殺処分ゼロへ、県内の犬全頭保護」 ピースウィンズ・ジャパン
NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、本部・神石高原町)は3月30日、犬を保護する新犬舎4棟が4月中下旬から6月にかけて順次完成するとして、「4月から行き場のない殺処分対象の犬を全頭引き取る」と発表した。記者会見した大西健丞(けんすけ)代表理事(48)は「県内の殺処分をゼロにできる。次はゼロを維持することに挑戦していく」と話した。
PWJは国内外での災害支援や災害救助犬の育成に取り組み、2012年6月から犬の保護を始めた。「飼えなくなった」と持ち込まれたり、迷い犬になったりして県動物愛護センター(三原市)などで殺処分された県内の犬・猫が11年度に8340頭(犬2342頭)と全国最多になったことを受け、16年6月までに県内の犬の殺処分をゼロにする目標を掲げた。
これまでに神石高原町上豊松に約240頭を保護できる施設、広島市や神奈川県には新しい飼い主を見つける譲渡施設を設置。今年2月までに567頭を保護し、うち293頭を新たな飼い主に譲渡したり、元の飼い主に返したりした。
さらに神石高原町相渡に計約360頭保護できる犬舎4棟(床面積計1260平方メートル)を建設しており、完成すれば、上豊松の施設と合わせ、計約600頭の保護が可能になるという。
県内では、県動物愛護センターと広島と福山、呉各市の施設で引き取り手がいない犬を殺処分してきた。県によると、14年度の殺処分数(保護後の病死など含む)は計1292頭。15年度は4~12月に566頭(速報値)と月平均60頭余りまで減っている。飼い主への説得など各自治体の取り組みに加え、PWJや動物保護団体の活動が減少につながっているとみられ、かつて年100頭以上を殺処分していた広島市動物管理センターでは、13年9月から殺処分ゼロが続いているという。
殺処分の減少も踏まえ、PWJは、4月から県、福山、呉の施設の引き取り手のいない殺処分対象の犬をすべて保護できるとみる。全頭保護を続けるため、譲渡活動をより活発に展開し、必要があれば犬舎を増築するという。
環境省によると、全国で殺処分された犬は14年度に2万1593頭。PWJの犬の保護活動のリーダー大西純子さん(44)は「取り組みをモデルケースとして全国に広めたい。飼い主は犬の正しい飼い方を、これから飼う人は保護犬の引き取りができることを知ってほしい」と話す。
■資金に「ふるさと納税」活用
PWJが保護活動を強化できるのは、資金面のめどが立ったからだ。
活動には、スタッフの人件費や犬の医療費、えさ代などが必要で、今年度は約2億4千万円かかったという。このほかに新たな犬舎4棟の建設費が約1億5千万円に上る。保護する犬が増えるため、4月から世話するスタッフも現在の15人から25人に増やすという。
資金集めに活用されたのが、町内のNPO法人を寄付先に指定すると、寄付額の95%が渡される神石高原町のふるさと納税制度。町によると、今年2月までにPWJを指定したふるさと納税は計約4億3500万円に上るという。
大西健丞さんは「支援に感謝しています。殺処分ゼロを維持するため、また猫の殺処分を減らす取り組みも考えているので、今後も協力をお願いします」と話した。
(竹久岐史)
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