罠で捕獲された野生動物たちの運命は? 考えてほしい命の尊厳

 2014年、鳥獣保護法は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に名前を変え、従来の「保護」施策から積極的な捕獲を促進することを含めた「管理」へと舵を取りました。

 シカ・イノシシについては大幅な生息数・生息域の減少が目標とされ、若い捕獲従事者を確保するために、わな猟・網猟については免許取得年齢が18歳に引き下げられました。

 鳥獣保護法において、狩猟免許は大きく3つに分かれています。「網猟」「銃猟」そして「わな猟」です。このうち、哺乳類を捕獲するのに多く使われているのが、くくりわなや箱わなを用いた「わな猟」です。

くりわなにかかり、うずくまるニホンジカ
くりわなにかかり、うずくまるニホンジカ

 ところで、わなにかかった動物は、その後どうなるのでしょうか。今まで見聞・調査してきた主な処分方法は以下の通りです。

・溺死

 特に、タヌキやハクビシン等の中型哺乳類で行われる方法で、箱わなごと、水に漬けて溺死させる方法です。全国的に広く行われています。

・刺殺

 箱わな或いはくくりわなにかかった中型哺乳類、またイノシシやシカ等の大型哺乳類に行われる方法です。槍やナイフを用いますが、特に中型哺乳類では1回では死なず、何度も刺さなければ殺せなかったという捕獲従事者の話を聞きました。

・撲殺

 くくりわなやトラバサミ(※狩猟では禁止になりましたが、有害駆除では今も使われています)にかかった動物に対し行われることが多いですが、地獄檻(大型の囲いわなのようなもの)で捕獲されたニホンザルに対し行われた事例の記述も残っています。

・頭部強打後の放血殺

 主にくくりわなにかかったイノシシやシカで行われます。殴って失神した動物の頸静脈を切り絶命させる方法です。

・餓死

 くくりわなの見回りを怠ったことにより、かかった動物が結果的に餓死に至った事例もありますが、箱わなにかかったアライグマを意図的に放置し餓死させた事例があることを、農家からも聞きました。その個体は、1ヶ月たっても死ななかったという話でした。

・二酸化炭素ボックス

 アライグマ等の特定外来生物において広く使用されているものです。箱わなごと、ボックスに入れて、二酸化炭素で殺処分します。

・銃による止め刺し

 わなにかかったイノシシ、シカ等で行われている方法です。銃刀法の問題があり、条件付で許される方法です。銃猟免許を持っている狩猟者の協力がないと出来ないため、わな猟だけの免許では不可能です。

・電気ショックによる止め刺し

 現在、全国的に普及しつつある方法で、主にイノシシ、シカ等で行われています。長い棒の先に畳針のような電極をつけて(交流電流を用いる)、心臓を挟むような位置に刺し、意識の喪失を図ります。この後、放血等で絶命させます。撲殺や刺殺に比較して苦痛が少ないと言われますが、幼獣や中型哺乳類では安楽殺に該当しないのではないかという声も多く聞かれます。

・麻酔薬による安楽殺

 一部の研究者や獣医師により推奨されてきた方法です。ケタミン、キシラジンやソムノペンチル等の注射薬、或いはイソフルランとCO2を用いた二段階麻酔によるものがあります。後者は、特にアライグマに関して、複数の自治体で機械を導入して既に実施されています。

 野生動物と人の軋轢の問題については、駆除(個体数削減)だけで解決することはありません、人側の問題(過疎化、耕作放棄地、農作物の放置等)もあります。やむをえず駆除に踏み切らなければならない現状もあることを踏まえ、捕獲した動物の殺処分方法から目を背けてはいけないと思います。

 特定外来生物については、日本獣医師会の「安楽殺処分に関する指針」が策定されています。しかし、狩猟鳥獣の殺処分方法については、鳥獣保護法において福祉的概念が欠落しているのが現実です。自然生態系の中で生きる野生動物は、動物愛護法の対象ではありませんが、残虐かつ著しい苦痛を伴う殺処分方法については、鳥獣保護法内でも規制されるべきと考えます。

 野生動物との共生という大きな課題に向けて、いのちの尊厳を考えながら、今後も一歩ずつではありますが、活動を進めていきたいと思います。

(会報「ALIVE」No.109より)

この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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