飼い犬が人に怪我をさせた 万一のために保険も

 前回、飼い犬が人をかんでケガをさせた場合、高額の損害賠償責任を負う可能性があるという話をしました。

 環境省の統計によると、犬の咬傷(こうしょう)事故は、2013年度には年間で4443件発生しています。以前に比べると徐々に減少していることが読み取れますが、今でも日本のどこかで毎日10件以上の事故が発生しているということです。自治体には報告されず、統計にあらわれていない数もあるかもしれません。

 理想的には、万が一にも咬傷事故が起こらないように様々な手立てをすべきですが、犬は動物であり、不測の事態が生じることもあり得ます。人にケガをさせてしまった場合の備えとして、被害者への損害賠償金を支払ってくれる保険があることを知っておいてもいいでしょう。

 日常生活において他人に危害を加えた場合の賠償責任保険は、自動車保険や火災保険などの特約として加入するケースが多く、クレジットカードに自動的に付帯していることもあります。保険料は、保険の上限額にもよりますが、年額で1千円台の商品もあり、安いです。

 保険料負担の少ない特約であるため、加入したかどうか普段から意識しにくい保険でもあります。咬傷事故がおきた際には、ご自分や家族の各種保険をよく調べ、賠償責任保険の加入の有無を確認することが重要です。

 もちろんこうした保険の加入は任意ですが、海外に目を向けると、例えばドイツでは、犬の種類を問わず、飼い主に対人賠償責任保険の加入が義務づけられているようです。

 ペットによるもの以外の事故に目を転じれば、日本でも、すべての自動車に自賠責保険の加入が義務づけられており、違反者には刑罰もあります。また昨今、自転車の運転マナーも問題視されるようになっています。兵庫県では、自転車事故によって9500万円もの賠償が必要であるのに全く支払いができない事案が発生したことを受け、被害者を救済するために、自転車の運転者に賠償責任保険の加入を義務づける条例が2015年にできました。

 人間社会におけるペットの地位を向上させるため、官民問わず、各自がさまざまな啓発活動を展開することは非常に大切であり、意味のあることだと思います。

 ただ一方で、飼い主が一定の責任を果たすこと――咬傷事故による賠償責任の局面でいえば、犬の飼い主が当然のように賠償責任保険に加入するような風潮をつくることも、また大事です。飼い主の多くがペットに対する義務や責任を果たし、それが当たり前だという社会になれば、ペット飼育に対する社会全体の理解が得られ、ペットの社会的地位が向上するのではないでしょうか。

2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペットの法と政策研究会代表、ペット法学会会員。

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