「犬を飼うってステキ?」 啓発活動には限界、法で規制も

「飼う前も、飼ってからも考えよう」
「ほんとうに飼えるかな?」
「犬を飼うってステキです――か?」
これらはある役所がつくった標語です。どこがつくったものか、わかりますか?
犬や動物を飼ってほしくない部署、あるいは動物が好きではない部署がつくったかのようにも思えますが、実は、環境省や東京都の動物愛護管理の担当部署が制作したものです。
犬猫をはじめ動物をペットとして飼う人が増えれば、人の生活が豊かでうるおいのあるものになる。動物を好きな人、動物に優しい人たちが増え、動物に優しい社会になる。そうなれば、確かに理想的かもしれません。
でも実際には、動物のことをよく知らずに安易に飼い始め、または、あまり考えずに飼育頭数を増やしたり、繁殖させたりすることによって問題が生じることもあります。つまり、安易な飼育や繁殖が、ペットの飼育放棄や遺棄を生み出す原因となることもあるのです。
このような問題意識から、国や自治体はずっと以前から、いろいろな手法によって、一般飼い主に対する適正飼養の普及啓発に力を入れてきました。
しかしながら、こうしたメッセージを本当に伝えたい相手というのは、国や自治体がいくら啓発活動をしても、届かないことが多いと思われます。もちろん、国や自治体による地道で継続的な広報活動は、それまで知らなかった中間層に訴えかけ、適正飼養の意識を芽生えさせる可能性があるという点で一定の意義があると思います。それでも、人のモラルに訴える啓発活動には、どうしても限界があるといわざるをえません。
そこで、今の動物愛護関連の法律でも、飼い主に対する法律上の義務や責任が定められています。具体的には、以下のようなものがあります。
●所有者、占有者としての責務(終生飼養、逸走防止、繁殖に関する適切な措置、生活環境の保全上の支障を生じさせないこと)
●災害時の適正管理
●(犬の飼い主について)飼い始めたときの登録義務、鑑札の装着義務、年1回の狂犬病予防注射を受けさせる義務、注射済票の装着義務
●終生飼養の趣旨に反する自治体への持ち込み不可
●多頭飼育の場合の届出義務(条例ある自治体のみ)
ただ、これらの法的規制の多くは、「努力義務」や「責務」といった強制力のない義務とされています。というのも、飼い主はペットに対する所有権を有しています。法律上、所有権は非常に強力な権利と考えられていることから、少なくともこれまでは、飼い主に対する強い法規制は意識されにくかったからだと思われます。
しかしながら、所有権が強いといっても絶対的なものではありません。動物保護のため、あるいは他人の権利を守るために、ペットの飼い主に対して一定の合理的な規制をすることは可能であり、現状よりも強い規制をすることも可能と考えられます。
こうした観点から、将来的に導入を検討されてよい飼い主規制として、例えば次のようなものが考えられます。
●飼い主の免許制度
●ペットに対する課税
●虐待現場での緊急保護、所有権剥奪、飼育禁止命令
いずれも短期間のうちに簡単に実現するものではないでしょう。それでも、不適切な飼い主や飼い方による大きな問題が頻発し、いくら適正飼養の普及啓発をしてもそういった事例がなくならないようであれば、こうした法規制によって、容易にペットを飼えない仕組みが必要になるかもしれません。

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