東尾理子&ラッキー、ゴウ 犬と暮らすことは命を見つめること
子どものころからずっと犬に囲まれてきた。
犬と暮らすことは、命を見つめること。
いま最愛のラッキーとの別れが迫る。
次は保護犬を。そんな思いも芽生えてきた。
文/太田匡彦 撮影/植田真紗美 ヘアメイク/MAO
東尾家には、子どものころからずっと犬がいた。柴犬やヨークシャーテリア、トイプードル……。9匹の犬が同時にいたこともあるという。
なかでも、大学生のころから一緒の時間を過ごしてきたトイプードルのラッキー(オス)には、強い思い入れがある。
「私は海外ツアーなどもあったので、一緒にいる時間は家族のなかで最も短いほうでした。でも、ラッキーは私のことが一番好きなんです。実家で寝ているときは、いつも枕元にいてくれる。部屋の入り口のほうを警戒しながら、見張り番をしてくれているんです」
ラッキーが東尾家の一員になったのは1995年。ちょうど父・修さんが西武ライオンズの監督になった年だ。優勝できるように、という思いを込めて修さんが命名した。
ラッキーは、東尾さんと一緒に出かけるのが大好きな犬だ。いつしか、東尾さんの準備の仕方で、自分が連れて行ってもらえるのかどうかわかるようになったという。たぶん、カバンに詰めるグッズなどを見て判断しているのだろう。連れて行ってもらえそうな時は、玄関に先回りして待っている。時には、適当な大きさのカバンに、自分から入り込んでいる。ところが留守番だとわかると、見送りもしてくれない。
「私についてくるのがとにかく好きな犬。以前、ペットフードメーカー主催のツアーに連れて行ったこともあります。どこに行っても静かにお座りしていてくれる子で、そのときも練習場で私の様子を見守ってくれていました」
子どもと一緒に育てる欧米
2009年に俳優の石田純一さんと結婚すると、ラッキーは東尾さんと一緒に新居に引っ越した。忙しい時は実家に預けたりもしたが、これまでの19年間を、常に寄り添いあいながら過ごしてきた。
そんなラッキーも、もう19歳になった。長男・理汰郎くんが生まれた12年前後から、体調を崩してしまっている。白内障になり、耳もあまり聞こえず、歯もほとんどが抜けてしまった。背中の骨に異常も出て、ちょっとした段差でも上り下りするのが難しくなった。長男の育児とラッキーの介護を両立することが困難なことから、いまは実家に預けて、様子を見守っている。だから、今回の取材にも同行できなかった。
「まだまだ元気で、散歩とかは普通に行けるんです。これだけ長寿なのは、本当にありがたいことです。普段から通っているトリミングサロンが、動物病院に併設されているので、隔月くらいのペースで健康チェックをしてもらっていたおかげかもしれません」
そのラッキーの息子が、今回一緒に取材を受けたゴウ(10)だ。実家で飼われていて、いつも家族にべったりの、シャイで独占欲が強いタイプ。長男の情操教育を兼ねて、よく犬たちとふれあわせに実家に行くが、まだお互いにおっかなびっくりだという。
「欧米では、わざわざ子どもと犬を一緒に育てようとする人が多いですよね。子どもの心の成長のためにいい効果があると聞いています。私自身もずっと犬に囲まれて育ってきたので、子どもを犬と一緒に育てたいという思いは持っています」
犬と暮らすことは、命を見つめることだと、東尾さんは考えている。たくさんの思い出が、東尾さんの中に積み重なっている。小学生のころの東尾さんが清原和博選手(当時)の大ファンだったことから、「カズ」と「ヒロ」と名付けられた2匹の柴犬。修さんは名前が覚えられず、いつも「キヨ」と呼んでいた。だから、2匹は修さんに呼ばれても見向きもしなかったという。
その修さんは、飲んで夜中に帰宅することが多かったが、どんなに遅くなっても、犬たちは玄関まで迎えに出ていた。必ず修さんの隣に座ろうとするヨークシャーテリアもいた。
これまでにたくさんの犬と過ごしてきたわけだが、そのぶんだけ別れを経験してきたということでもある。ゴウの母犬、つまりラッキーのパートーナーのラブとは、不幸な別れ方をしてしまった。
11年夏、いとこが福岡県に帰省する際、一緒に連れて行った。飛行機に預けたところ、熱中症と見られる症状で亡くなってしまったのだ。当時はまだ6歳。天真爛漫な愛されキャラだったという。
「一緒に乗ったゴウくんは問題なかったのに、ラブちゃんだけ。本当にショックでした。完全に自分たち人間の責任なので、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ラブちゃんはちょっと太り気味だったのが原因なのかもしれません。それから、犬たちの健康には本当に気をつけるようになりました」
最後まで見守りたい
次は保護犬を
そしていま、ラッキーとの別れが近づいている。心構えをする一方で、無償の愛を与えてくれる犬たちの命がモノのように扱われ、捨てられている現状が気になって仕方がない。友人が動物愛護の活動を本格的に始めたことも、刺激になっている。東尾さんは言う。
「こんなに大切な存在を、捨てる人がいることが信じられない。しかも理由が、年をとって病気になったからとか、子犬を産んでしまったからとか。そんな時こそ、命の大切さをかみしめるときのはずです。それなのに、殺処分されるとわかっていてなぜ捨てるのか。むしろ、拾ってくる、ならわかるのですが」
いまは、寝ているときも自分を守ってくれていたラッキーを、今度は自分が最後まで見守ってあげたいと考えている。そして次に犬を飼おうというタイミングが来たら、保護犬を引き取りたいという。
「犬は、ストレートに、なんの見返りも求めない愛をくれます。今度、動物愛護センターなどの施設を見にいって、犬たちの現状をもっと知りたいとも思っています。そして、次に出会う犬は、保護犬にしようと考えています」
(朝日新聞 タブロイド「sippo」No.24(2014年10月)掲載)
東尾理子(ひがしお・りこ)
1975年福岡県生まれ。98年、フロリダ大学卒業。99年に日本女子プロゴルフ協会のプロテストに合格し、プロゴルファーとして活躍を始める。2009年に俳優の石田純一氏と結婚。父は元プロ野球選手・監督の東尾修氏
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