共感を育む動物福祉教育セミナーを開催

 第4回短期研修会に引き続き、2014年11月29日にRSPCAのポール・リトルフェアー氏には、動物福祉教育について講義をしていただきました。今回、初めての試みでしたが動物福祉教育というものに関心を持たれている沢山の方々にご参加いただきました。RSPCAの使命は、「全ての生き物の虐待を防止する」「やさしさを推進する」「苦痛を取り除く」が三大目標です。「やさしさを推進する」ということは、動物福祉教育と非常に密接にあります。共感を育てるとはどういうことなのか、加えて今の世の中で重要な価値観を教えるカリキュラムの中でどのようなものがあるのか理論・実践をご教授いただきました。

AWE(動物福祉教育)

 各国の倫理教育課程には動物が深く関わっています。動物関連のテーマは、敢えて取り上げなくても自然と教育課程に取り込まれているのです。それは日本の学習指導要領にも取り込まれています。RSPCAは基本的に、学校内に動物を持ち込むことは反対しています。敢えて飼育しなくても、自然観察を通じて十分に学ぶことができると考えているからです。子供たちが昆虫などを興味深く観察する行動は、人間にとって一番素晴らしい瞬間です。そういった自然の産物への純粋な好奇心・生命を尊重する気持ちを長く持てることが子供の教育なのではないかと考えています。だからといって、動物が好きである必要はありません。動物に対して道義的・倫理的責任が客観的に何であるか、(動物を活用する時)?に何が妥当かを議論できる社会であることが重要なのです。

共感とは、他人の立場を尊重し物事を考えることができること

 動物福祉教育では、4つの大切なポイントがあります。

・必要な知識を与える
・知識を基に理解をさせる
・観察の仕方などの技術を取得する
・動物に対する適切な価値観が動物を尊重する適切な態度を育てていく

 この4つのポイントを実証した一つの例として、小学校低学年の子供たちに、ごく身近で命を感じ取れる場所として、自然観察を体験させた話をしていただきました。子供たちにはまず必要な知識、観察方法を教えます。観察させる場所には、予め、実物大でリアルな模型の”ミニ・ビースト(昆虫)”たちを設置しておきます。本物でなくても、子供たちの純粋な好奇心は興味を持つからです。そして、自然にはミニ・ビーストがいること、ミニ・ビーストにはミニ・ビーストの世界があり、ルールがあることを理解させます。観察中は「ゆっくり、静かに行動すること」「捕まえたりしない」など行動規範を作り、何故それをしてはならないのかを考えさせ、そこから湧き上がってくるものを感じさせるのが重要なのだそうです。そうすることで動物に対関する価値観を発展させていき、自然と態度に表れてきます。観察をしている子供たちの中で騒ぐような子がいれば、周りが自然に注意をするという行動を見せます。それが子供たちが昆虫の命を尊重している証であり、優しさや配慮が育まれたことの現れなのです。

動物福祉教育をするための適切な教材とは

 子供たちへの教材、資料で気をつけることは、年齢層を考えてそれにふさわしい資料を選ぶことです。酷い虐待事例の写真を見せる必要は全くありません。なぜなら、みせることによって、大人が行ってしまった悪事を罪のない子供たちに押しつけるとともに、自分は何もできないという無力感を無駄に与えるだけだからです。子供達の感受性の一番強い時期に、社会はこんなに酷いということを敢えて教える必要はないのです。また、動物が擬人化されているキャラクターグッズは、生命尊重の教育には教材として相応しくありません。動物福祉教育の資料としては、その種にとって適切な行動が表示されているか、または、人間と動物の関係が適切に表記されているかを配慮することが大切です。

 動物について話をする際は、子供たちが経験したことをきっかけに話を始めることが、子供たち自身で無理なく考えるきっかけを与えることになります。子供達は、想像力が豊かなので本物の生き物を使わなくても、ぬいぐるみで十分な効果が得られます。その際、教える側も本物の動物を扱っているようかのようにぬいぐるみを優しく扱ってください。大人の行動や言動が、そのまま子供たちの模範となるからです。

 総合的に学校の敷地が動物にとって住みやすい環境作りをし、他の動物が入りやすいようにする「アニマル・フレンドリー・スクール」(動物に優しい学校づくり)を心掛けることで環境や環境にいる生物を守ることを身につけさせることに繋がっていくので。

共感を育む授業

 低学年の子供達の共感や理解を育む授業の一つとして、「もし、急に他人に次のような態度をされたら自分はどう思うか?」を一緒に考えてもらいます。

1、誰かににいきなり怒鳴られる。
2、誰かから知らないうちに後をつけまわされる
3、一緒に遊んでいる人があなたに乱暴をし始める
4、一日中お水をもらえない
5、疲れていて休みたいのに、休ませてもらえない。
6、家で過保護にされる

 上記のことを、やられる側=動物の視点で考えさせることが大切で、この方法がいじめ対策にも繋がっている。

学校飼育動物について

 英国では、基本的に学校での動物飼育は反対しているが、以下の条件を満たす場合のみ飼育を認めています。

条件1 年間(休みも含め)を通して、一人の責任者を必ずつける。
条件2 動物のストレスに配慮し、子供が動物を触れる時間を制限する。いつでも、触れるような状況にはしない。
条件3 動物福祉法で定める飼養管理基準をみたしていること。

 学校で動物を飼養した場合、理想的な飼い方をしなければ、misteachになることを忘れてはなりません。

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この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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