命の教育、新たな試み 出前授業、動物教室 佐世保市

動物教室でウサギに聴診器をあてる児童=佐世保市提供
動物教室でウサギに聴診器をあてる児童=佐世保市提供

 思いやりがあり、深く人とかかわることのできる心豊かな児童生徒を育成したい――。そう願い、長崎県佐世保市は2004年の小6女児殺害事件の後、毎年6月を「いのちを見つめる強調月間」とし、学校と家庭、地域が連携して特別な授業や集会を重ねてきた。繰り返された悲劇を教訓に、新たな試みも始まっている。

出産時の映像

 「命について思ったことを紙に書いて下さい」

 6月下旬、市立祇園小学校。6年生の教室で、佐世保青年会議所のメンバーが児童に呼びかけた。会議所が市内五つの小学校で初めて実施した「命を考える出前授業」だ。

 「大切なもの」「消しゴムで消せないもの」……。子どもたちは思い思いに鉛筆を走らせ、保護者が見守る中、発表した。

 授業では短いドキュメンタリー番組も見せた。出産時の痛みに顔をゆがませた母親が、生まれてきた赤ちゃんを見てうれし泣きするシーン。目を丸くする児童たちに、講師は言った。「これが命。みんながいま生きているのは、両親の愛情のおかげなんだよ」

 こうした出前授業は増えつつある。佐世保青年会議所の森龍二・心の教育委員長(33)は「親は生活の中で子どもが傷つくことを言っていることもある。子どもはそこを見ている。学校側からなかなか言えない、そんな保護者へのメッセージも授業に盛り込んだ」と話す。

聴診器で鼓動

 「うわー、ドキドキしている」「そう、動物にも心臓があって、感情があるんだよ」。聴診器をウサギにあてた子どもたちに、獣医師がやさしく説明した。

 今年の強調月間では、動物教室も目立った。校内で飼育するウサギやニワトリなどの小動物の世話を通じ、思いやりや優しい心を育もうとのねらいだ。市教委が市獣医師会と委託契約を結んで今年度から始め、小学校49校のうち今月も含めて32校が実施する。

 市生活衛生課の担当者は「世話をする楽しさを覚え、動物になつかれれば自尊感情も高まる。飼育活動は情操教育に大きな効果がある」と話す。

 これまでの命の教育の取り組みについて、永元太郎・市教育長は全国調査を基に「佐世保市の児童生徒は、人の気持ちが分かる人間になりたい、といった自尊感情が高まっており、一定の効果があった」と話している。(具志堅直)

(朝日新聞2015年7月23日掲載)

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