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左からマース ジャパン栄さん、井上さん、NPO法人DOG DUCA代表の高橋忍さん、マース ジャパン長井さん
左からマース ジャパン栄さん、井上さん、NPO法人DOG DUCA代表の高橋忍さん、マース ジャパン長井さん

問題行動の犬も見捨てない、保護犬の「最後の砦」 DOG DUCAが守るもの

 ペットフードメーカーのマース ジャパンとsippoによる連載「犬猫の命をつなぐ特派員レポート」が始まりました。人と犬猫がともに幸せに暮らせる社会の実現を目指し、マース ジャパンではこれまで保護団体支援活動を続けてきました。今回の連載では、社員自身が全国の保護団体に足を運び、団体の取り組みや活動する人々の想いを取材。取材を通じて見えてきた犬猫を取り巻く現状や、命をつなぐための取り組みをレポートします。

 第1回は、愛知県を拠点に譲渡が難しい犬たちに寄り添うNPO法人DOG DUCA(ドッグデュッカ)を、私たちマースジャパンの栄、井上、長井が訪ねました。DOG DUCAは、問題行動や高齢などを理由に行き場を失った犬たちと向き合いながら、人と犬が再び共に暮らせる関係づくりにも力を注ぐ保護譲渡団体です。

問題行動の根本にある、本当の課題とは 

 DOG DUCAは、ひどくほえる犬や、かみぐせが強い犬、深いトラウマを抱えた犬、高齢犬など、愛護センターや他の保護団体でも引き取りが難しい犬を保護している。いわば「最後の砦」だ。

 保護活動というと「捨てられた犬を助ける」という印象が強いが、ドッグトレーナーでもあるDOG DUCA代表の髙橋忍さんが最も重要だと考えているのは、その根を絶つため、「安易に手放される犬を減らすこと」、そして「捨てない飼い主を増やすこと」だという。

 高橋さんのもとには「手に負えないので犬を引き取ってほしい」という相談が日々寄せられる。だが、すぐに引き取ることはしない。プロの視点で、問題行動の背景を探り、犬と飼い主との関係改善を目指す。「犬の問題行動のほとんどは、恐怖と不安から生まれる。犬のトレーニングだけではなく、飼い主さん側の理解も必要です」。

NPO法人DOG DUCA代表の高橋忍さん

 犬は、人に叱られたり、怖い思いをしたりすると、人や特定の状況に強い警戒心を抱くケースがある。また、飼い主自身の不安や緊張が、リードを通じて犬に伝わっていることも少なくない。

 犬がなぜ問題行動を起こすのか分析し、接し方を変えたことで、また犬と暮らすことができるようになった家族は、数多くあるという。DOG DUCAは犬を保護する団体であると同時に、人と犬の壊れた関係を修復する役割も担っている。

わんわん保育園の犬と戯れるマース ジャパンの長井さん

その子に合う家族を見つけるために

 DOG DUCAでは、活動を始めた2001年から2025年12月末までに、1002頭の犬を保護・譲渡・終生飼養してきた。高橋さんは譲渡の際、面談を重視する。希望者の生活状況や希望の犬のタイプを聞き取り、合いそうな犬を選ぶ。その際、尊重するのが犬自身の意志だ。

「相性がいい場合、犬はその人に自然と寄っていく。犬が人を選ぶんです」。
犬が発するサインを信じ、面談を通して感じた人柄を信じてゆだねる。それが、944頭を譲渡して、戻ってきたのは3頭だけという高い定着率につながっている。

 また、高齢者が安心して犬と暮らせる社会を目指し、「シニアドッグ・サポーター制度」を作った。犬の所有権を団体に残したまま、高齢者に飼育を預託する仕組みだ。入院時は一時的に預かり、万が一の際には団体が無償で引き取り、最期まで世話をする。「もし飼えなくなったら、必ず戻してほしい。この子の幸せは私たちが必ず保証する」と高橋さん。この確かな約束が、120組以上のマッチングを成立させた。温かい家庭で穏やかに余生を送る犬と、再び生きがいを見つける高齢者、双方への幸せにつながっている。

保護犬たちは、わんわん保育園DUCAに通う一般の預かりの犬と過ごし、社会性を磨く。

保護犬支援の枠を超えて 命を発信する場所へ

 髙橋さんの活動は、犬を救うことだけに留まらない。その先にある「命の大切さを伝えること」にこそ、活動の大きな目的がある。小中学校で「命の授業」をし、虐待されたり遺棄されたりした犬の話を通じて、命の重みを伝える活動を続けている。
「講演会を通して一番望むことは、若い子の自殺をゼロにすること。DOG DUCAは犬を助けるだけでなく、『命』を発信する実家のような場所でありたい。犬猫に対して優しい社会は、きっともっと人にも優しくなれる社会。僕が目指す「心の豊かさ」とは、そういうことです」。
 高橋さんが始めたDOG DUCAの活動は、保護犬支援の枠を超え、人と動物が共に幸せに生きられる未来を創造する挑戦である。

DOG DUCA設立の源になった、高橋さんの愛犬「DUCA」(上段左)と、これまで看取った保護犬たち(一部)

【編集後記】
現場で命と向き合い続ける髙橋代表の覚悟に圧倒されました。印象的だったのは「犬を助けるのではなく、命の大切さを伝えている」という言葉。「悪い犬はいない」と信じて心を開かせる姿勢は、孤立しがちな現代人の心を救うヒントにもなり得る。動物に優しい社会は、必ず人にも優しい社会になる。犬たちの澄んだ瞳と代表の情熱に触れ、私たち人間がどう生きるべきかを深く考えさせられる貴重な時間となりました。
NPO法人DOG DUCA(ドッグデュッカ)
名古屋市守山区を拠点に、かみぐせやトラウマのある犬、高齢犬など、受け入れが難しい犬の保護・トレーニング・譲渡に取り組む。2001年にドッグトレーニングを始め、2010年にNPO法人化。わんわん保育園DUCA株式会社と両輪で、しつけ教室、犬の保育園、トリミングサロンも運営している。
ウェブサイト:https://dogduca.com/
Instagram:@dog_duca
支援の方法:寄付金、支援物資、クラウドファンディングなど。保育園やトリミングの利用も、売り上げの一部が保護活動に充てられる。

写真・取材・文:マース ジャパン 栄、井上、長井

編集:朝日新聞社sippo編集部

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