ペットの命を守るのは飼い主。災害に備えましょう。
ペットの命を守るのは飼い主。災害に備えましょう。

愛犬・愛猫を守り災害に備える! ペットのための防災の心得と必要な避難グッズ

目次
  1. 災害時、犬や猫もパニックになる
  2. クレートトレーニングをしておこう
  3. ペットと避難、必要な持ち物リスト
  4. ペットの命を守るのは飼い主

 地震や大雨に備えて、防災グッズの定期的な見直しが欠かせません。愛犬や愛猫の状況に合わせたアイテムを揃え、安全を確保するための準備を日頃からしておくことが大切です。そこで今回は、ペット災害危機管理士の関糸子さんに、ペットのための防災の心得と必要な避難グッズを伺いました。

 災害時には、普段とは異なる環境や状況になるため、人間だけでなく犬や猫もパニックになる可能性があります。これにより体調を崩したり、逃走するなどの行動を引き起こし、その結果、生き延びることが困難になるケースがあります。

 そのため飼い主は、ペットをどのように避難させるか、命を守るための適切な方法について考えなければなりません。事前に災害時の行動をシミュレーションし、どのようにペットを守るかを具体的にイメージしておきましょう。

 一部の自治体や動物愛護団体では、ペットとの防災訓練として、例えば、クレートにペットが入る訓練や、避難時の手順を学ぶ防災訓練が行われているので、そういった訓練やイベントに参加して知識をつけておくといざというときに安心です。

事前に災害時の行動をシミュレーションしておきましょう(Getty Images)

 ペットの安全確保のために、普段からクレートに入る練習をしておくことはとても大切です。災害時にペットと避難しやすくなるだけでなく、多少固い物が落ちてきても、クレートに入っていれば身を守れるからです。もし飼い主が不在でペットだけが家にいる状態であっても、ペットの安全を確保できる可能性があがります。

 普段から行っておくことは、合図をしたらクレートに入る練習や、扉を閉めたクレートの中で静かに過ごせるようにするトレーニングです。もっとトレーニングができるようなら、緊急地震速報の警報音が鳴ったらクレートに入る、揺れを感じたらクレートに入るなどができると理想的です。

 クレートは家の中の安全な場所に、扉を開けて設置しておきましょう。ペットが日常的に「クレートは落ち着ける場所」だと認識してくれて、自発的に入る習慣をつけることで、災害時の安全性が高まります。素材は、プラスチック製のしっかりしたものがよく、ソフトクレートは身を守る点では不十分な場合があります。

 中・大型犬の場合、避難時に一緒に歩いて避難することが考えられますが、クレートは用意しておきましょう。

 また、猫は犬と違い、クレートトレーニングが難しいことが多いため、普段の隠れ場所としてクレートや段ボール、紙袋などを用意しておくと良いでしょう。もし大きな地震などがきて猫が驚き、家具などの隙間に入ってしまうと、猫も飼い主も逃げるのが遅れてしまいます。そのため、猫が自発的にその隠れ場所に入る習慣をつけておくと、連れ出すときも素早く行動ができます。

 避難所では、犬も猫もケージが必要とされる場合があります。各避難所によって条件は異なるので、近くの避難所のルールを事前に確認しておくと安心です。避難時にすべての用品を持ち出せなくても、後から家に取りに戻る計画も立てておきましょう。

クレートやケージ、猫は段ボールなどでもいいので、何かあったらすぐに入れる落ち着く場所をつくっておきましょう(Getty Images)

 ペットと共に安全に避難するためには、非常用グッズを事前に準備しておくことが大切です。しかし、持ち出したいものは数多くある一方で、大人1人が持ち運べる量は10~15kgが限界といわれています。ペット用と人間用の非常用グッズをすべて持ち出すことは難しい場合があるため、「命に関わるもの」を最優先に考えましょう。持ち物に優先順位をつけ、現実的な量と重さを考慮して、持ち出すものを整えましょう。

■優先順位1(最優先で持ち出す物)

① ペットとの移動時に必要なもの

・キャリーバッグやハードタイプのクレート
 猫の場合は洗濯ネットに入れてからキャリーやクレートに入れるといいでしょう。多頭飼育の場合、キャリーは頭数分用意しておくのが基本です。ひとつのキャリーに複数頭入れる場合は耐荷重をオーバーしないように注意しましょう。

・首輪やハーネス、リード
 首輪やハーネスは緩んでいないかを確認し、装着した状態でキャリーやクレートに入れます。リードは伸縮しないものを使用します。迷子札をつけた首輪は、普段からつねに付けておくことがおすすめです。

<注意!>
 ペットカートで避難場所へ行くのは可能ですが、道の状態によって押していけないことが考えられます。また、避難先ではペットの健康や安全上、カート内で過ごさせることはできません。

② 非常用の持ち物

・予備の首輪とリード
 予備の首輪やリードも用意しておきましょう。カラビナやカフェリードがあれば、犬をどこかに繋ぐ際に便利です。首輪などに迷子札も付けておきましょう。

・フード、療法食
 5~7日分用意しておきましょう。1食ずつ小分けにしておくと便利。療法食を食べている場合は、10日分用意するのが理想です。

・水
 ペットの体重に合わせた1日分の水分量を計算して、5日分以上を目安に用意します。1日分の水分量は、犬は体重(kg)の0.75乗×70×1.6、猫は体重(kg)0.75乗×70×1.2が目安。また、水に代わる水分補給食品として、パウチや缶詰のフードやスープなども準備しましょう。特に猫は、もともと水分をとらないことが多いので、注意が必要です。

・薬
 服用している薬があれば、忘れずに持参します。犬の場合、避難時のタイミングによってフィラリア予防薬やノミ・ダニの薬なども必要です。

・食器、水入れ
 食器は普段使っているものと異なると食べなくなる場合があるので、月に1回は避難時用の食器で食べる練習をしておくと良いでしょう。

非常時のお皿を使う練習もしておきましょう(Getty Images)

■優先順位2(できれば待ち出す物)

・ペット手帳
 健康状態や薬の情報を記録した手帳を持参しましょう。療法食を与えているならその商品名を、環境変化に敏感な猫の場合は、トイレの猫砂の商品名も手帳に記載しておきます。

・プリントした写真
 ペットの顔、全身、飼い主と一緒に写っている写真をプリントしておき、ぬれないように密閉できるビニール袋などに入れておきましょう。災害時には、ペットが脱走して離ればなれになる可能性もあります。プリントしておく理由は、捜索用のチラシを作る場合に電気やプリンターが使えなくなる可能性があるため。また、飼い主と一緒に写っている写真は、ペットが見つかった時にすぐに飼い主を確認できるようにするためです。

 発災時に飼い主が外出中でペットだけが家にいる場合も考慮し、日頃から迷子札の付いた首輪や鑑札を付けておいたり、マイクロチップの装着が重要です。

・排泄物の処理用具
 過去の災害時に被災した犬や猫の飼い主から一番要望が多かったのが、排泄物の処理用具(ウンチ袋、ビニール袋など)です。ニオイがもれない防臭袋があると重宝します。犬の場合は、ペットシーツ、猫の場合はトイレ容器、トイレの砂があるといいでしょう。他にも犬猫ともにマナーベルト、おむつなども用意しておきます。普段から装着の練習をしておくと良いでしょう。

■優先順位3(あれば便利、あとから持ち出す物)

・服(抜け毛、汚れ防止や防寒のため)
・ブラシ
・拭き取り用のボディシートや水のいらないシャンプー
・おもちゃ(ペットが安心できるため)
・新聞紙
・ビニール袋

 災害時にペットフードや療法食が手に入りづらくなく可能性があります。そのため、2カ月分を目安に家にストックしておくことがおすすめです。普段、手作り食を与えている場合でも、防災用としてペットが食べられるストック用のフードを用意しておき、賞味期限内に買い替えるようにしましょう。普段食べているものと違うフードを用意しておく場合や避難時にフードを変えると、ペットがおなかを壊してしまうこともあるため、整腸剤も用意しておくと安心です。

 さらに、避難所に入る際には、ワクチン接種や狂犬病予防注射をしていないと入れないことがあります。犬の鑑札やワクチン証明書も持ち出せるよう、防災用品の中に普段から入れておくといいでしょう。

 また、不妊去勢手術を受けていないと、避難所に入れない場合もあるため、事前に準備しておくべきです。避難所はペットにとって普段とは異なる環境であり、ストレスが大きくなります。不妊去勢手術は発情期の興奮を避けるため、ペットの精神面でもとても重要です。

 地震や災害が起きた際には、避難所に行くかどうかも重要な判断になります。必ず避難所に行かなければならないわけではなく、もし家で安全に過ごせるのであれば、その方が良い場合もあります。その際、家の中で過ごすのか、車の中で過ごすのかによって、対応も変わってくるでしょう。

 もう一つの選択肢として、ペットをどこかに預けることも考えられます。例えば、避難所に連れて行くのが難しい場合、家に置いておくのが危険だと思うなら、被災地から離れた友人や親戚に預けることも検討するべきです。

 避難所に避難する場合でも、人とペットが同じ空間で過ごせるかどうかは、各避難所により異なります。避難所によっては、ペットを連れて避難した人のための専用スペースが用意されるかもしれませんが、基本的には別々に過ごすことを想定して準備をしておくのが安心です。また、避難所には動物が嫌いな人やアレルギーのある人もいるため、ペットと一緒に避難する際には、その点を配慮した準備と心構えが必要です。

 ペットの命を守れるのは飼い主です。事前にしっかりと備え、万が一の際には冷静に対応できるようにしておきましょう。

小見山友子
2020年4月~sippo編集部に所属。 ファッション業界に従事後、オウンドメディアの編集長をする傍ら、2014年にWEBマガジン「INUTONEKOTO」を主宰。2015年にフリーライター・編集者として独立。ペット、ファッション、旅、サーフィン関連の執筆、編集をしている。instagram @tomokokomiyama

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