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保護猫と家族になろう 正式譲渡の手続きをしたら関係づくりへ踏み出す

 7回にわたって「保護猫の迎え方」を紹介する当連載。第7回は、保護猫とのトライアルを経て正式譲渡を決め、家族になるまでを伝えます。猫を迎えるワクワクした気持ちのなかで、つい忘れがちな生活用品の準備や、安全・快適な居住空間づくりを再確認しましょう。保護猫との距離を縮める接し方や困りごとへの対処法も覚えておくと役立ちます。

家族全員一致で正式譲渡へ

 保護猫との生活体験のトライアル期間を問題なく過ごせて、家族全員が「この子と暮らしたい」と思えたら、保護団体と正式な譲渡の手続きをしましょう。

正式譲渡の手続き

 保護団体と「譲渡契約書」を交わして譲渡費用を支払います。譲渡費用は2〜5万円が相場ですが、医療費などの実費がかかっている場合はそれ以上になる場合もあります。

所有者変更の手続き

 保護団体から「ワクチン接種済証明書」や既往歴などの情報を受け取ります。装着していればマイクロチップの所有者変更の手続きも行います。

終生飼養の心がまえ

 猫を迎えた飼い主には終生飼養の義務が生じます。動物病院に相談しながら健康管理に努め、子猫であれば不妊・去勢手術の時期を検討しましょう。譲渡の際に「万が一飼えなくなった場合には連絡してほしい」と伝えている保護団体もありますが、安易に飼育放棄をするべきではありません。

改めて愛猫の生活環境を見直す

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 面談やトライアルの段階で居住空間を決め、ある程度の生活用品はそろっているはずですが、正式譲渡を経て愛猫として迎えるタイミングで生活環境を見直しましょう。

猫も人も心地よく過ごせる配慮を

 猫がふだん過ごす場所は、人の気配が感じられるリビングの一画や屋外の物音が聞こえにくい静かな部屋を候補にしましょう。猫は生活空間を限定するのが難しいので、もし猫を入れたくない部屋があればドアを閉めておきます。猫は外の景色を眺めたり、ひなたぼっこをしたりするのが好きなので、慣れてケージから出せるようになったら安全な窓辺に猫の居場所をつくってあげましょう。

安全対策のため戸締まりを徹底する

 自宅に来客があるとき、掃除機をかけるとき、ベランダに洗濯物を干すとき……など、猫が怖がったり脱走したりしやすい状況になるときは、猫が安心してこもれる部屋に入れ、ドアや窓を閉めておきます。不安がある場合は、猫の安全のためにケージに入れて布をかけておきましょう。

清潔に使えるトイレを用意する

 猫は汚れたトイレを嫌うため、清潔に使えるトイレを用意することが重要です。飼っている頭数+1個余分に用意しておくのが基本と覚えておきましょう。トイレの数が少ないと汚れがちになるので、こまめな掃除を心がけてください。

家族になった愛猫の備えに眼を向ける

 生活用品をそろえたら防災用品も準備しておきましょう。災害時はペット同行避難が原則ですが、地域の避難所に必ずしも猫連れで入所できるとは限りません。いざというときことを想定することも大切です。

猫の生活用品を優先順にそろえる

 猫の生活用品を優先順に「すぐ使う」「役立つ」「あると便利」の3つに分けて紹介します。「すぐ使う」用品はトライアルの前にそろえておくのも一案です。最初にあれもこれもと用意するより、生活を始めてから必要に応じて買い足していけば十分です。

 保護猫から愛猫へと変わり、必要なものが増えていきます。愛猫との生活をより豊かにする備えを考えることも絆を深めるのに役立つはずです。

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すぐ使う

  • ケージ
    猫が上下に動ける高さのある2〜3段の製品。
  • トイレ
    猫の1,5倍の大きさが目安。猫が余裕を持って入れて、砂をかく動作もできるサイズ
  • トイレ砂
    保護団体に相談して猫が使い慣れたトイレ砂を用意する
  • 食器
    衛生的な陶器製を選ぶ。ひげが当たりにくい形状を選び、猫の好みの高さに調節する
  • 水入れ
    衛生的な陶器製を選ぶ。新鮮な流水を好む猫は自動給水器を検討する
  • 主食のフード
    最初は食べ慣れたフードを与え、変える場合は新しいフードを少しずつ混ぜる
  • 猫がとくに好きなおやつ
    社会化トレーニング(人や物事などに慣れる練習)のごぼうびとして与える
  • おもちゃ
    猫の運動不足の解消や家族とのコミュニケーションツールとして活用する
  • キャットタワー
    限られたスペースで上下運動できるので運動不足の解消に役立つ
  • ベッド
    ケージの中に入れる。タオルで代用できる
  • 爪とぎ
    猫が使い慣れた素材を選ぶ
  • ブラシ
    仲良くなるためのツールに使える。ケアが目的であれば、保護団体に相談して被毛に合わせて選ぶ。
  • キャリーケース
    動物病院を受診するときや出かけるときに使う

役立つ

  • 首輪
    引っかかったときにバックルがはずれるセーフティー機能があるタイプを選ぶ
  • 迷子札
    万が一の脱走に備えて首輪につける
  • 消臭スプレー
    トイレの掃除などに使える。猫がなめても安全な製品を選ぶ
  • ウエットティッシュ
    体が汚れたときにシャンプーをしなくても全身をきれいにできる
  • 季節に応じた用品(寒さ、暑さ対策用品)
    寒さや暑さで体調を崩す猫もいるので用意する

あると便利

  • ケア用品
    歯磨きや爪切りができれば便利だが、苦手な猫もいるうえ練習が必要なので、無理をせず保護団体や動物病院に相談する
  • 消臭袋
    消臭タイプの袋を選べば排泄物のおいが気にならない

譲渡後のアフターフォロー

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 猫の譲渡を受けたあとも、信頼関係を築いた保護団体との付き合いを続けましょう。猫と暮らし始めてから悩みを抱えた場合も、猫をよく知る保護団体に相談できるのは心強いことでしょう。アフターフォローを行うために、飼い主に定期連絡を頼んでいる保護団体もあります。

 最初は気軽に連絡する飼い主が多いものの、徐々に「報告がわずらわしい」「愛猫になった気分がしない」と連絡したがらなくなり、やがて途絶えてしまうこともあります。心配したスタッフが抜き打ちで家庭訪問に行き、信頼関係にひびが入ってしまったという事例もありました。

 保護団体のなかには面談を通じて築いた信頼関係を踏まえ、「困ったときに相談してくれれば十分だから」と定期連絡を頼まないところもあります。アフターフォローに助けられることも多いのですが、譲渡後の付き合い方について気になることがあれば保護団体に相談してみましょう。

保護猫から愛猫へ、そして家族へ

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 猫は基本的に、周りの人や環境に慣れるまで時間がかかります。猫と早く仲良くなりたい気持ちを抑えて、まずは「無害な人」と認識させてから、次に「よいことを提供してくれる人」へステップアップを目指しましょう。

猫がケージから出るのを待つ

 怖がりの猫には「そっとしておいて」というタイプも少なくありません。譲渡後もしばらくはケージの中で家族が生活している様子を見せて、無害であることを伝えましょう。部屋の安全を確認してからケージの扉を開けて猫が出てくるのを待ってみてください。

猫を追い詰めない

 猫は大きい声や急な動作が苦手なので家族全員で注意しましょう。もし猫が人から遠ざかるようなしぐさを見せているなら、追いかけないでください。猫が不安や恐怖を感じることは極力控え、家族に対する好意的な行動を引き出せるように待つことが重要です。少なくとも1カ月程度は気長に様子を見ましょう。

ごほうびで距離を縮める

 次に「おいしい食べ物を運んでくれる人」と印象づけることから始めてください。たとえば手にごほうびのおやつを乗せて、猫に差し出してみましょう。猫がお気に入りのおもちゃがあれば「よいことを提供してくれる人」になるチャンスです。

スキンシップは猫の気持ち次第

 猫が人に寄ってくるときは必ずしもなでてほしいわけではなく、穏やかな雰囲気を好ましく感じているからともいわれています。マッサージを気持ちいいと感じているわけではないかもしれないので、スキンシップは猫の気持ちを尊重しましょう。

フレンドリーな動物の力を借りる

 もし1カ月以上経っても変化が見られない場合、不安や恐怖を強く感じやすいタイプの可能性があります。保護団体に相談して接し方を見直してください。家庭に余力があり、保護団体で多頭飼育されていた場合は、仲の良かった猫を迎えるのも一案です。新たに猫を迎えない場合や保護団体で単頭飼育されていた場合は、ケージで気長に様子を見てください。

多くを求めない幸せもある

 出会った猫と互いに元気で暮らせていることが何よりの幸せと考えて、多くを求めないことも必要かもしれません。保護猫は特別な存在ではなく、あくまでも猫です。なにげない日々を積み重ねてゆるやかに一緒に歩んでいくうちに、いつの間にかかけがえのない大切な家族の一員になれるはずです。

●監修=奥田昌寿(認定特定非営利活動法人 アニマルレフュージ関西
(取材・文/金子志緒)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
保護猫の迎え方
日本には、さまざまな事情から保護された行き場のない猫たちがいます。猫を家族に迎えたいと思ったら、選択肢に保護猫も入れてみませんか?当連載では、7回にわたって保護猫の迎え方を詳しく紹介していきます。
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