猫とウサギ2匹が同居する「まぜこぜ家族」 仲間入りした子猫の反応は?
障害者ダイビングのインストラクターを目指す橋本依舞季(いぶき)さんは、2023年の5月中旬に、友人が保護したメスの子猫を引き取った。すでに先住猫とウサギが2匹いるのだが、先輩たちは子猫に歓迎の様子を見せた。猫とウサギが同居する「まぜこぜ家族」とは?
「ちゃんと面倒見るから」と母を説得
友人から「職場の前に子猫4匹が段ボールに入って置かれていた。インスタグラムでもらい手を探す」と聞いたのは5月上旬のこと。1週間後、「白と黒のかぎしっぽの子が1匹残っている。このままだと大家さんに追い出される」と懇願され、最後の1匹を引き取った。「世話できるの?」と心配する母を、橋本さんは「ちゃんと面倒見るから」と説得した。
かぎしっぽなので名前を「キー(key)」にしようと思ったが、あえて2音で呼ぶ名前にこだわり、フランス語で鍵を意味する「クレ(clef)」にした。先住猫は「ベン」(メス/2歳)、ウサギは「リキ」(オス/4歳)と「モモ」(メス/3歳)である。
クレは生後1カ月ほどで橋本家に来た。保護した直後に動物病院に連れて行くと寄生虫がいることが分かり、感染症のリスクなどもあるため、しばらくはケージに入れていた。その後、ベンにも寄生虫がいると診断されたのでクレをケージから出し、交流させながら一緒に治療している。
「猫同士は最初、シャーと言い合っていましたが、ケージ越しに匂いをかぎ合ったり、様子を気にしたりして、ベンはクレを同居猫として受け入れたようです。初めて一緒にした時、クレは立ち上がって体を大きく見せました。ベンは怖がりながらもクレの頭に優しくペンペンと触れて笑いを誘いました」
ベンはクレを“妹”として認めたようである。
ベンは、2021年秋に家の近くにいた元野良猫だ。橋本さんの母がえさをあげていたところ甘えて来るようになり、「冬になったら寒くてかわいそう」と家猫になった。推定年齢から逆算し、誕生日は7月7日としている。
「男の子っぽい顔をしていたのでベンと名付けたんですが、よく見たらメスだったんです。途中で改名しようかとも思いましたが、すでにベンと呼ぶと反応するようになっていたので、そのままにしました。性格はとにかくビビリです」
独立して家を離れた橋本さんの兄が帰ってくると、すぐ逃げる。毎晩、橋本さんの手を枕にして眠り、1週間ぐらい不在にしたときには、血尿が出た。それからは、まだ2歳だが、腎臓に配慮した食事を与えるようになった。
猫より先輩&年長のウサギたち
橋本家へやって来たのはウサギの方が早い。2匹ともミニレッキスという種類で、ビロードのような光沢のある毛並みが特徴。ウサギの成長は猫より早く寿命7~8年と短いので、リキとモモはすでに壮年期である。橋本さんの母がウサギ好きで、多い時は4匹もいた。
橋本さんによると、リキは「いかにも末っ子という性格。甘えん坊で誰とでも仲良し」とのこと。肝臓に持病があり、1日1回薬をあげている。モモは「お姫様のような性格」らしい。心臓に持病を抱えていて、太らないように食事などの配慮をしている。2匹は同じ部屋で暮らしているが、自分のスペースが確保されていないと安心できないため、柵を置いてそれぞれのスペースを確保するようにしている。柵を外すと走り回るそうだ。
ウサギと猫の距離感は、どうなのだろうか。
「ウサギたちはそれぞれベンに対する態度が違います。リキはベンが近寄ると怒りますが、基本は知らんぷり。でもリキが“なでて”と私の足にすり寄ってくると、ベンも足を挟んで横に座ります。モモはベンを見つけると追いかけているんですよ。クレはウサギに相手にされていないのに、獲物を見るような目で見ています。近寄ってこられると驚いて逃げていますが……」
家の2階には猫部屋とウサギ部屋があり、橋本さんがいるときに猫は自由に行き来できるようにしている。
文京区にオープンした「まぜこぜの居場所」を手伝う
そうこうしているうちに2022年末、橋本さんの母が東京都文京区で、子ども、障害者、高齢者などが一緒に過ごせる居場所「コドモカフェ・オトナバーTummy(タミー)」をオープンした。橋本さん親子の故郷である富山県は、年齢や障害の有無にかかわらず、みんなが一緒にデイサービスを受けられる「富山型デイサービス」発祥の地であり、このような「まぜこぜの居場所」を目指している。タミーでは障害者施設で作られる弁当や惣菜(そうざい)、物品を販売しており、橋本さんは障害のある子どもの世話をするなどして運営を手伝っている。
「私は早番、母は遅番でタミーで過ごし、その後は水泳の指導をして、母よりもひと足早く帰って猫とウサギにご飯をあげないといけません。動物4匹は癒やしをもたらしてくれる家族ですが、それより責任を持ってお世話する対象だと思っています」
橋本さんは、病気を抱えているウサギ2匹、そして偶然の縁で家族になった猫2匹など「まぜこぜの家族」で暮らしながら、「まぜこぜの居場所」で働き、障害者ダイビングのインストラクターという夢に向かって頑張っている。
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