PR by ネコも動物病院プロジェクト(協賛:ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン株式会社)
例えば、エンジンを切った車の中でおやつを食べられるようになることからゆっくりと慣れていく、そんな積み重ねが、いざという時の愛猫の通院ストレスの軽減につながる
例えば、エンジンを切った車の中でおやつを食べられるようになることからゆっくりと慣れていく、そんな積み重ねが、いざという時の愛猫の通院ストレスの軽減につながる

愛猫の通院ストレスを軽減させるために 飼い主さんと病院にできること

 大切な愛猫にできるだけストレスを感じさせず、動物病院を受診させたい――。多くの飼い主に共通する願いです。猫が動物病院を苦手にならないために、飼い主や動物病院にできることはたくさんあります。その「できること」を多くの人たちに伝えようと、奮闘する人たちがいます。動物看護師、キャット・インストラクター、動物向け製薬会社に所属する獣医師。3人がそれぞれの立場から、「できること」のヒントを語ってくれました。

坂崎清歌さん
キャット・インストラクター( D.I.N.G.O. 認定)、愛玩動物飼養管理士2級、CATvocate。病気の愛猫を看取った経験から猫のことを学び始め、獣医師や行動分析学の専門家に師事。飼い主と猫がより楽しく幸せに暮らすための情報を主宰するトレーニング教室 Happy Cat を通して発信中。
堀 奈保子さん
そらいろ動物病院(福島県南相馬市)動物看護師。JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)認定のこいぬこねこ教育アドバイザー。東日本大震災で多くの患者(特に猫)が動物病院に来られないまま亡くなった経験から、より良い獣医療ケアを受けさせる工夫について学ぶ。坂崎さんの講座を病院スタッフ全員で受講し、院内でさまざまな取り組みを実践している。
佐藤藍子さん
ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン株式会社コンパニオンアニマル事業部マーケティング&テクニカルサービス部治療・ワクチングループ。動物医療に携わる企業内獣医師として、猫がより気軽に動物医療ケアを受けられるように、動物病院と飼い主を支援する事業を展開中。Fear Free® Certificate Veterinarian、AAFP Cat Friendly Veterinarian

※2022年6月22日7月10日に行ったsippoのアンケートでは、「猫を動物病院に連れて行く時に心配なこと」として、58%の飼い主が「猫のストレス」と回答(回答数313人)。愛猫を思う姿が浮かび上がりました。

「心にワクチン!」で苦手にさせない

佐藤:猫の通院ストレスを減らすには、飼い主さんが「普段からできること」を実践しておく必要があります。そして、その「普段からできること」を動物病院が飼い主さんに伝えていくことも大切です。つまり、病気になる前の普段から、飼い主さんと動物病院が連携できていることが重要です。

堀:「普段から」というのは本当に大切ですね。猫が病院に嫌な気持ちを持たないですむように、普段から飼い主さんが愛猫の様子を観察して様々なトレーニングを行うことも重要です。病気にかからないように健康な時からワクチン接種をすることと同じで、病院に対する苦手意識を防ぐために、あらかじめ心に効くワクチンを打ってあげるようなものです。

 飼い主さんと動物病院の連携もとても重要です。例えば、うちの病院では、まずは飼い主さんとしっかり話してからでないと、キャリーから猫を出さないのが基本です。猫も飼い主さんの表情や口調や緊張感をすごく気にするものです。

 初めて来院された飼い主さんは「どういう先生なんだろう?」と緊張することが多いので、その状態で猫をキャリーから出すとブルブル震えてしまいます。そのまま体重を測り、問診して……と進めると、注射の時には緊張が最大に。そうならないように、たっぷり話して飼い主さんの緊張がほぐれた後に、キャリーから出てきてもらいます。

病院スタッフも飼い主も「Cat'Xpert」に

佐藤:私は企業の立場から、飼い主さんと動物病院の距離を縮められるような事業を進めることで、両者の橋渡し役になりたいと思っています。そこで、今年から「Cat'Xpert(キャットエキスパート)」を増やしていくプロジェクトを始めました。直訳すれば「猫の専門家」ですが、猫にとってより良い医療やケアを提供する病院スタッフさんだけでなく、愛猫により良い医療や日常のケアを受けさせたいと思う飼い主さんにも「Cat'Xpert」になってほしいと願っています。

「Cat'Xpert」というのは、誰か特定の人を指すのではなく、猫に関わる人たちみんなで、猫がより良い日常を過ごし、より良い医療を受けられるように連携していく活動を支援する枠組みのようなものです。来年には本格化させる予定です。

ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンによる「Cat'Xpert」を増やしていくプロジェクトのロゴ

坂崎:私も、まずは飼い主さんが動物病院に慣れることが大切だと思います。もし猫が嫌がって連れて行くことが出来ないのであれば、まずは飼い主さんだけで行って、先生や動物看護師と話すことから始めてください。愛猫の状態を正しく説明することで、病院側はいろいろなことを教えてくれますから。そのためには、飼い主さんは普段から愛猫を観察して、それを記録しておくことが大切です。

堀:それぞれの猫に合った治療をするためにも、私たち病院側も普段の様子を知りたいですね。でも、病院にいる猫は緊張しているので、その子の普段の状態は飼い主さんに教えてもらうしかないんですよ。

佐藤:食事や飲み水の量、排泄(はいせつ)、体重などの健康に関する状態を記録しておいて、病院と共有するのもよいですね。

堀:うちの病院は猫専用の待合室スペースがあり、たくさんの猫のぬいぐるみが置いてあります。飼い主さんが「この病院は猫のことが好きで、めっちゃ考えているじゃん」と思ってもらえるように。そうすれば、飼い主さんが先生や動物看護師に質問しやすくなると思うんですよね。

堀さんが働く「そらいろ動物病院」の待合室には猫専用スペースも。ぬいぐるみやブランケットが置かれている(堀さん提供)

診察しない「おやつ外来」って?

堀:10年ほど前から子犬を対象に「パピークラス」を始めました。そのプログラムの中で、犬が診察台に慣れる練習があります。診察台の上でおやつを食べて、診察台や動物病院スタッフに恐怖感を持たないようにする練習です。

 動物病院が苦手になる前の子にはもちろんですが、すでに苦手になってしまった子にもこの練習から始めてもらおうということで 、新たに「おやつ外来」も始めました。動物病院に来てもらい、可能であれば診察台に上がり、大好きなおやつを食べる。それだけです。その間に私たちは飼い主さんとお話をする。普段の生活、好きなもの、困っていることなど、何でも話します。当初は犬を対象に始め、その後、猫にも広げました。

佐藤:猫でも「おやつ外来」を始めたきっかけは何ですか?

堀:坂崎さんが主宰する 「Happy Cat」の猫の飼い主さん向け講座 「web猫がくしゅう塾」を知り、飼い主さんがどんなことを学ぶのかを知りたくなって、受講しました。そこで、猫の特性や行動学に基づいた接し方を学んでいくうちに、犬だけでなく、猫も対象にできそうだなと思ったんです。

坂崎:「おやつ外来」はとてもいいですね。普段通りの行動が病院でもとれるかどうかは、病院での猫の緊張をはかるいいバロメーターです。ですので、大好きなおやつを食べることができるかというのは、ひとつのバロメーターになりますね。

坂崎さんの愛猫ピコちゃん(19歳)。診察台の上で大好きなおやつをもらう(坂崎さん提供)

佐藤:そらいろ動物病院では、ほかにもいろいろな工夫をしていますよね。

堀:飼い主さんが待っている間も自然と学べるように、飼い主さんに気にして欲しいことを書いたポスターを掲示しています。待合室でも飼い主さんとのコミュニケーションを大切にしています。例えば、看護師がある飼い主さんにフィラリア予防のご案内をしていると、それを隣の飼い主さんがこっそり聞いていて、あとで「フィラリア予防ってやったほうがいいんでしょうか……」と相談してくれることも。

そらいろ動物病院内に貼られたポスターの一例。おすすめのおやつなど、飼い主さんに役立ちそうな話題をスタッフが手描きで紹介している(堀さん提供)

佐藤:「Cat'Xpert」プロジェクトでも、「おやつ外来」や待合室での取り組みのようなものを含めて、動物病院や飼い主さんに届けていきたいと感じました。そして、もし愛猫が病気になったとしても、「もっとキャリーでのお出かけに慣れてもらっていれば通院のストレスが減らせたのに」とか、「おやつやフードを使って投薬の練習をしておけば、治療のストレスを小さくできたのに」と飼い主さんが後悔しないですむようになってほしいです。

 さらに言えば、飼い主さんだからこそできる、愛猫の暮らしをより良いものにできるような工夫を飼い主さんにたくさんお届けし、飼い主さんが「やっておけばよかった」と悔やむのではなく、「やっておいてよかった!」と思えるようにしていきたいです。

動物病院も学んでいます!

堀:実は、うちの病院はスタッフ全員が坂崎さんの講座「web猫がくしゅう塾」を1年間、受講したんですよ。坂崎さんの講座を受けてからは、みんな、たくさんの荷物を持って診察室に入るようになりました。バスタオル、ブランケット、おやつ、食事しやすい器……。どれも飼い主さんにオススメしたいものなんですけど、「どこ行くの?」ってくらいの荷物量です(笑)。猫は何かの入れ物に入ると落ち着くので、すっぽり隠れることができるような物も必須ですね。

そらいろ動物病院での子猫の診察風景。堀さんが子猫におやつをあげている間に獣医師の診察が進んでいきます(堀さん提供)

 講座は院長主導で全員で受けることになりました。そのおかげで、全員一丸となって猫のことを考える体制に進化できました。以前は、ちょっと気難しい猫が来たら、猫に慣れている私が担当していましたけど、今はスタッフ全員が猫について学ぶ姿勢ができているので大丈夫です。トップである院長が「全員で受けよう」と言い出してくれたからこそ、病院全体の意識や姿勢が変わったのだと思います。

坂崎さんが理事をしているFAES(一般社団法人「家庭動物共生教育支援フォーラム」)の講演会の様子 (坂崎さん提供)

すでに「苦手」がある猫のためにできること

佐藤:「苦手」をつくらないためには、子猫のうちから少しずつ慣らしておくのが理想ですが、そうもいかないケースもありますよね。

坂崎:すでに病院が苦手だったり、キャリーが怖くなったりした猫であれば、まずはかかりつけの動物病院や行動診療科などで専門家の力を借りて、適切に対処することが大切ですね。苦手を克服することはとても大変なことで、方法を間違えると悪い方向に向かうことさえあります。だからこそ、できるだけ早くから「苦手」をつくらないことが大切なんです。

 通院のためにキャリーに入って外出の練習をするのではなく、一緒に「楽しい遊び」や「楽しいお出かけ」として、キャリーに入ったりキャリーで運ばれたりすることを始めてみる。それが、結果的に「通院手段」の練習にもなるんです。苦手を乗り越えるための練習ではなく、愛猫と一緒に日常を楽しみながら自然と練習にもなっているようなイメージです。

坂崎さんは愛猫のピコちゃんと毎日を仲良く楽しく暮らす中で、一緒にキャリーやカートでのお出かけも楽しんでいる(坂崎さん提供)

堀:まずは、愛猫にとっての「スペシャル」=「大好きなおやつ」を探すところから始めてみるのもいいですよ。

坂崎:そうですね。ただ、もちろん、おやつを与えすぎるのは良くないです。適切に食事を管理した上で、最小限のおやつを「どう使うか」が大事。むやみやたらに与えては効果がない。好きな食べ物にランキングをつけておいて、状況に応じて使い分けたりするのも手です。

 水分が不足しがちな猫に、普段から水で薄めた液状おやつをシリンジで与えると、ただの水より喜んでくれます。そして、外出先(病院)では、原液のままの液状おやつを猫にとっての「スペシャル」としてあげて、たくさん褒めてあげる。そんなやり方もありますね。

堀:以前、体重10キログラム超の猫の食事管理をしていたことがありましたが、触らせてもくれない子でした。何度も通ってもらい、「診察室で飼い主さんと食事指導について会話して、体重を測るだけ」を何度も繰り返したら、ある日突然、診察台の上でおやつを食べてくれたんですよ。その日を境に、とてもフレンドリーな猫になって、今は体重も6キログラム台になりました。

坂崎さんの愛猫だいきち君は、診察台の上で得意のハイタッチ。診察台がへっちゃらだからこそ、普段通りの行動がとれる(坂崎さん提供)

佐藤:動物病院の受診で完全にストレスをなくすことは難しいと思います。それでも、今より少しでも軽くしてあげられるなら、それは猫にとっても飼い主さんにとってもうれしいこと。どうしたらそれができるのか、それを教えてくれる動物病院が全国に一軒でも増えてくれたら。そんな思いで、「Cat'Xpert」プロジェクトを進めていきます。

(文:浅野裕見子)

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