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【獣医師監修】犬は留守番が苦手 少しでもストレスなく留守中を過ごすための方法とは

目次
  1. 犬が留守番できるようになるには、個々の気質や育て方に大きく左右される
  2. 子犬が留守番できる時間はトイレや食事の頻度で考える
  3. シニア犬の留守番は、体や心の変化を読み取って慎重に判断する
  4. 犬に留守番をさせるにはトレーニングを取り入れ、短い時間から
  5. 犬が留守番中でも安心できる環境作りの方法6つ
  6. 外出時と帰宅時の、犬との接し方で注意すること
  7. 犬が留守番中にトラブルを起こす場合は分離不安症の可能性もある
  8. 犬に留守番をさせないことも大事。知人を頼る、専門サービスの利用も視野に
  9. 留守番中の愛犬の不安や寂しさを理解することが重要

 犬は一人で過ごすことは得意ではないため、留守番は大きなストレスになることもあります。とはいえ、共働きや一人暮らしなど、犬に留守番をさせざるを得ない状況にあることもあるでしょう。

 ここでは、留守番を始める適切なタイミングや環境づくりなど、愛犬の気持ちに寄り添う留守番のコツを紹介します。

監修:獣医師 小林豊和
こばやしとよかず。『グラース動物病院』統括院長。帝京科学大学教授。日本大学大学院獣医学研究科博士課程修了。腹腔鏡手術など最新の獣医療を提供する一方、生活のアドバイスやしつけ教室など、人と動物のよりよい共生をサポートすることにも力を入れている

 犬は本来群れで暮らす動物のため、一人になるのは苦手です。とはいえ共働きで仕事に出る際など、やむを得ず家を空けることもあるでしょう。飼い主は愛犬が留守番中、不安を感じながら過ごしていることを理解して、少しでも精神的な負担を減らせるよう、環境を整える必要があります。

 また犬の気質や育て方でも、愛犬が留守番中に感じる不安の度合いは変わります。過保護や甘やかしは留守番中とそうでない時のギャップが大きくなり、留守番時の不安感や恐怖を助長させることも。そのため普段の生活やしつけも大きなポイントになります。

 子犬期の長時間の留守番はおすすめできません。というのも、子犬の消化機能は未発達なため、生後6カ月頃まで食事は1日3回以上に分けて与えなければならないからです。

 長時間の留守番で空腹が続くと、低血糖になってしまうこともあり、特に小型犬は注意が必要です。では、あらかじめ多めに用意して2回に分けて与えれば良いのでは?と思うかもしれませんが、それもNG!一度にたくさん食べることは、子犬の胃腸には負担が大きく、下痢や嘔吐を引き起こす恐れがあるからです。

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 また、子犬期はトイレの頻度も多く、トイレトレーニングも必要です。トイレシートをケージ等に敷き詰めて留守番をさせると、食糞をしたり、トイレを覚える時期を逃してしまったりすることも。大型犬は頻度もより多いので、トイレトレーニングが終了するまで留守番は慎重に行いましょう。

 一方、シニア犬も注意が必要です。

 シニア犬になると、排泄の間隔が短くなったり、体が不自由になったりすることなどから、留守番が苦手になるケースが増えます。高齢犬は飼い主への精神的な依存度が高くなるという面があり、そのため不安感や分離不安が強くなることがあります。

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 認知症や排泄介助を伴う場合もあるため、シニア犬の留守番は愛犬の心身の変化に合わせて対応していくことが必要です。自身のライフスタイルの変更や、ペットシッターなどのサービスの導入を考える必要も出てくることを、心づもりしておくことは大切です。

 留守番トレーニングのポイントは3つ。

1)飼い始めて最初の一週間ないし2週間は、しっかり家にいてあげる。環境が変わり戸惑う愛犬に寄り添い、むちゃはさせずに静かに見守ってあげること。
2)新しい環境に慣れたら、トイレトレーニングやケージやサークルに慣らすトレーニングを早期の段階で導入する。「自立」の第一歩として、これらは大変有効。飼い主さんと一緒にいる時にも、サークルで過ごす時間を作っていくようにしましょう。
3)生後3カ月を過ぎた頃から、ケージやサークルトレーニングと同時に、短時間の留守番トレーニングを開始。まずは数分間、隣の部屋に出ていき、その後すぐに戻る、ということを繰り返しましょう。慣れてきたら10分、20分……と徐々に留守番間隔を長くしていきます。ただし、長時間の留守番は体力がついてからが鉄則です。

 犬が留守番できるかどうかは、飼い主との信頼関係が大きく関係してきます。犬が「飼い主が出ていっても、また戻って来て遊んでくれる」という認識ができるようになると、留守番を我慢できるようになります。

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 また、留守番に慣れさせるためにといった理由から、普段から専用の部屋に犬を閉じ込めておくようなことは避けましょう。犬は群れで過ごす動物のため、リビングなど家族が集まる場所で一緒に過ごすことが望まれます。トレーニングの際は「飼い主が出ていく」という方法をとりましょう。

 とはいえ、忘れてはならないのが留守番中の環境づくりです。

 犬の安全と安心を確保するため、また少しでも犬に留守番をポジティブに捉えてもらうための環境作りについて紹介します。

1.犬の留守番は、犬の安全を確保した状態であることが大前提

 留守番中、愛犬をフリーの状態で過ごさせるのであれば、外出前は室内にイタズラや誤飲誤食につながるものがないか、必ず確認しましょう。コンセント等も外しておくのがベターです。

 また事故を防ぐため、首輪は外すか、着用するなら足や口が引っかかるサイズ・形状をしていないことが求められます。リードで係留することは、事故の恐れがあるだけでなく、現代における「犬も家族」という考え方からも、奨められることではありません。リードて繋がれて行動を制限されることは、犬にとってストレスになることを知っておきましょう。

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 特に子犬の場合、安全を確保する意味でも留守中はケージやサークルに入れた方が安心です。犬にとっても穴ぐらに近い、狭い場所があったほうが安心して過ごせます。ただし、体を動かすことができるサイズであることが前提です。

 サークルの中にクレートを配置するなど、留守番中に犬が安心できる環境を作ってあげましょう。

2.留守番時には、犬が快適に過ごせる場所に居場所を設置

 ケージやサークルに入ってしまうと犬は自分で移動できないため、設置場所には注意が必要です。直射日光やエアコンの風が直接当たらず、風通しが良い場所に置くようにしてください。また、窓の近くは音や光など外からの刺激が多いため、ストレスや無駄吠えに繋がることも。落ち着いて過ごせる場所に設置してあげましょう。

3.犬の留守番時の室温・湿度は、普段から愛犬を観察し、個々に合わせて設定する

 犬の快適な室温は22~24度、湿度は50%前後と言われています。ただし、パグなどの短頭種は暑がりですし、チワワは寒がりといったように、犬種や性質によっても快適な温度は違います。愛犬に合わせて設定するようにしてください。

 また、エアコンの温度設定は実際の室温とは違うことも。飼い主自身が実際にその部屋で過ごし、愛犬の様子を観察しながら、適温かどうか確認することが大切です。

4.犬が留守番を受け入れられるよう特別なおもちゃを用意する

 愛犬が留守番を少しでもプラスな体験と捉えることができるように、「特別なオモチャ」を用意してあげるのもおすすめです。ポイントは、「留守番時にだけ遊べる」という点。留守番が終わったら回収し、愛犬に特別なおもちゃと認識させてあげましょう。

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 ただし、間違って飲み込んだり、首に絡まったりするような事故の危険があるおもちゃは避けてください。かじって食べるガムのような、事故の危険性のあるものを与えて家を出るのはご法度です。

5.留守番の様子を確認できる見守りカメラがあると安心

 留守番中、愛犬がどんな風に過ごしているのか心配!そんな人におすすめなのが、ペット用の見守りカメラ。スマートフォンと連携しておけば、外出先でも愛犬の様子を確認することができます。中にはカメラ越しに話しかけたり、フードやオヤツをあげたりできる機能が搭載されたものもあります。留守番中の愛犬の、つまらない・さみしい気持ちを軽減してくれる場合もあるので、使ってみるのも良いかもしれません。

6.留守番中の食事に自動給餌器を使うなら注意が必要

 帰宅時間がどうしても愛犬のご飯の時間に間に合わないという時は、自動給餌器も有用です。ただし大型犬の場合、イタズラで破壊してしまい、破片などを誤飲してしまう場合もあるので、在宅時に使ってみるなど十分な注意が必要です。

 留守番への不安感を煽らないようにするためには、留守番前と後の接し方にポイントがあります。まず、出かける直前は、必要以上に愛犬に過度に声をかけたり構ったりしないようにしましょう。また抱きしめて声をかけるなどの「別れの儀式」をしてしまうと、かえって留守中の犬のさみしい気持ちを助長してしまいます。特別なことは何もせず、淡々とした態度で出かけていきましょう。

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 帰宅した際も一番に犬のところに駆け寄るのではなく、まずは洗濯物を取り込む、テレビをつけるといったルーティンを行い、留守番が「当たり前のこと」であることを意識させましょう。例え犬が興奮して駆け寄ってきても「さみしかったね」「留守番頑張ったね」といったような声かけやご褒美はNGです。

 ポイントは、外出時や帰宅時と、留守番時のギャップをできるだけなくしてあげるということなのです。

 ただ、これらを行っても留守番中やその前後はいつも大騒ぎ……そんなワンちゃんは、もしかしたら「分離不安症」かもしれません。

 分離不安症とは、犬が愛着のある人や場所から離れることで強い不安を感じる精神障害のひとつです。飼い主の不在中に問題行動になって現れることがあります。

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分離不安症の場合に愛犬が起こす行動

 典型的な症状としては、以下の行動が挙げられます。

  • 飼い主の外出を、体を張って阻止しようとする。
  • 吠え続ける。
  • ティッシュや新聞紙などをバラバラにする。クッションや家具などを破壊する。
  • 足を舐め続けるなどの常同行動や自傷行動。

 また、留守番中の問題行動は、留守番開始30分以内に特に出やすくなると言われています。

分離不安症は苦手克服トレーニングが大切

 分離不安症はエスカレートする場合もあるため、兆候が現れたらトレーニングやしつけのし直しが必要です。①クレートトレーニングをし直す②在宅時でも愛犬と離れる時間を増やす③外出時に飼い主自身が行う行動を変える、といったことを取り入れていくようになりますが、子犬期から時間が経っている場合、飼い主一人で行うのは困難を伴います。専門家に相談し、プロの知見を借りながら一緒に取り組んでいくことが推奨されます。

 愛犬に留守番をさせる機会をなるべく減らすことがベストですが、宿泊を伴う出張や旅行、また身内の不幸やもしもの災害時など、何かあった時に頼れるツテを準備しておくのも飼い主の責任です。

「ペットシッターサービス」や「犬の保育園・幼稚園」、「ペットホテル」などさまざまな選択肢があるので、愛犬に合ったサービスを利用しましょう。ただし、最初はそれ自体に犬が戸惑いストレスを感じることもあるので、普段そうでない時でも利用して、愛犬に慣れさせておくことも大切です。

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 また、日頃から愛犬家同士や世帯の異なる家族と交流しておくのもおすすめです。頼れる「犬友」や家族の存在は、飼い主にとっても犬にとっても大きな助けとなるでしょう。

 ただし、犬を預けているときにケガをしたり、具合が悪くなることもあります。対処方法については、必ず双方で確認しておきましょう。

 愛犬の留守番について、導入の仕方や適切な環境、専門セービスやグッズの利用方法などさまざまなコツをお伝えしてきましたが、大切なのは何と言っても「愛犬の寂しさや不安を理解すること」です。

 どんなに犬を飼いたいと思っても、一人暮らしで毎日の仕事が長時間に及ぶような暮らしでは、「飼いたいけれど、今は飼わない」という選択師をとることも、大切なことかもしれません。

 犬は留守番が苦手な動物であること、犬の留守番は100%飼い主の都合であることを十分理解し、愛犬の気持ちに寄り添い、できるだけのケアと配慮を行ってあげましょう。

 日頃から愛情を注ぎ、犬が幸せであること、そして信頼関係を築いていくことが大切です。

(取材・文/植松玲奈)

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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