ライオンはネコより安い 書籍『岐路に立つ「動物園大国」』で浮き彫りになる動物園

 動物園で生まれた動物の赤ちゃんたち。その行く末を考えたことがありますか? 2016年3月、中部地方で起きたグランドシマウマの脱走劇。グランドシマウマはいったいどこから来て、なぜ死ななければならなかったのか――。

 このグランドシマウマの取材をきっかけに、動物園で生まれたものの余ってしまった「余剰動物」がいることを知った朝日新聞社の太田匡彦記者、そして北上田剛記者、鈴木彩子記者(いずれも朝日新聞社)の3名の共著『岐路に立つ「動物園大国」』(現代書館)が発売中です。

 本書は、2020年9月から朝日新聞と朝日新聞デジタルで展開した連載「動物たちはどこへ 変わりゆく動物園」と同年11月に朝日新聞に掲載した「フォーラム 動物園、どう思う?」の記事を大幅に加筆し、再構成したもの。日本初の動物園開園から140年。北は北海道から南は鹿児島まで全国の動物園を取材、「余剰動物」たちの現実をあぶり出し、日本の動物園の「いま」を浮き彫りにしています。

 グランドシマウマの取材から、地方自治体と動物商が交わした「動物交換契約書」を目にした太田記者。そして、動物園で生まれて祝福されるのもつかの間、様々な事情から飼いきれなくなって、動物園の外へ運び出されていく動物たちがたくさんいることを知ります。

「いったい日本の動物園では何が起きているのか。動物たちの園内外への移動を追うことで見えてくるのではないか」、そう考え2019年夏に、全国76自治体(84園)に対して情報公開請求を行い、動物たちの搬出・搬入にかかわる公文書を入手するところから、一連の取材が始まりました。

 そうして見えてきたのが、誕生してから140年が経った日本の動物園は、大きな岐路に立っているということ。14年度から18年度までの5年間で4978頭の動物が動物園から運び出されていたのです。その内訳は「タダで譲る」無償譲渡が最も多く、続いて動物同士の交換、繁殖のための貸し借り、売却などでした。

 本書では、無償譲渡の背景、動物たちの移動にビジネスとして関わる「動物商」とは何か、数が減りつつある国内の動物園動物たちの全体像と日本動物園水族館協会が取り組む「計画的な繁殖」について、また、動物福祉の向上のために向けた各地の取り組みを取り上げ、これからの動物園のあり方、そして朝日新聞読者らのアンケート結果を収録し市民にとって動物園はどうあるべきかを探っていきます。

 今、大きな岐路に立つ動物園は、生じたひずみを乗り越えていけるのか、動物園とそこに生きる動物たちのことを考えるきっかけを作ってくれる1冊です。

岐路に立つ「動物園大国」: 動物たちにとっての「幸せ」とは?
著者:太田匡彦、北上田剛、鈴木彩子
発行:現代書館
単行本:208ページ
本体価格:1,980円(税込み)
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小見山友子
2020年4月~sippo編集部に所属。 ファッション業界に従事後、オウンドメディアの編集長をする傍ら、2014年にWEBマガジン「INUTONEKOTO」を主宰。2015年にフリーライター・編集者として独立。ペット、ファッション、旅、サーフィン関連の執筆、編集をしている。instagram @tomokokomiyama

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