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犬や猫の健康診断どうする? まずかかりつけ医を持つことから始めよう

 犬や猫の健康診断はどんな検査項目を受ければいの? 頻度はどれくらい? 動物臨床医学研究所(鳥取県)sippo202110飼い主さんに行った健康診断に関する共同アンケートでは、さまざまな疑問が寄せられました。そこで、石丸動物病院(和歌山市)院長の石丸邦仁獣医師に、健康診断について伺いました。

普段の様子が分からないと異常が分かりにくい

 ――飼い主さんから、健康診断の頻度や検査項目はどうしたら良いのだろうという声が寄せられました。

 第一に伝えたいのは、かかりつけの獣医師を持ってほしいということです。なぜなら普段の様子を見ていないと、なかなか異常が分かりづらいからです。普段の様子を知らない犬や猫で、「今日元気がないんです」とおっしゃられると、困ってしまうことがあります。普段と比べて具合が悪いと分かったときに、聴診や視診、触診で診察して、それで特に問題がないときは血液検査しましょう、というのが大事だと思います。

 健康診断は、若いうちはそれほど受けなくても良いと思います。気になる方は、年に1、2回は狂犬病の注射やワクチン接種で病院に行くと思うので、その時にしていただけたらいいのかなと。動物は7、8歳になると高齢という考え方があるので、7、8歳になったら最低でも年に1回受けてもらうのがいいと思います。

 ――健康診断の回数頻度を考える時に、犬か猫か、そして犬の大きさ別にはどのように考えたら良いでしょうか。

 犬の大きさごとに健康診断をどれくらい、というのは、多分具体的なデータはないと思います。データはないのですが、概して大型犬の方が寿命は短く、小型犬の方が寿命は長いので、どの時期に健康診断をどれくらい、というのはある程度影響してくるとは思います。

 高齢になったら年に1回は健康診断をする、もし何か異常があれば先生と相談して、半年に1回、数カ月に1回、ということになるかもしれません。猫は腎臓病のことがあるので、10歳を超えたら最低でも年に1回は腎臓のチェックをしたほうがいいと思います。

犬や猫のかかりつけ医を持とう(Getty Images)

 ――飼い主さんから見て犬や猫に気になる症状がなくても、健康診断を受けた方が良いのでしょうか?

 受けた方がいいと思います。犬や猫は我慢強い生き物です。調子が悪くても、なかなかその様子を見せません。だから、すごく痩せてきて病院に来たときには、重篤になっていることもあります。病気は早く見つけて、早く治療してあげるのが良いと思います。なので、7、8歳以上になったら最低でも年に1回以上は健康診断をしておいた方が良いと思います。

 ――これまでのご経験で、健康診断で病気が見つかったケースがあったら教えてください。

 猫の腎不全はつかりますね。ひどい状態でなくても、数値が高くなっているというのは多々あります。糖尿病も見つかることがあります。獣医師が体を触って調べることで腫瘍(しゅよう)がわかることもあります。動物は話さないので、こちらで見つけてあげることが必要だと思います。

聴診、視診、触診でわかること

 ――健康診断では、どのような検査を受けたら良いのでしょう。

 一般的には、いわゆる五感に頼る検査から始まると思います。聴診、視診、触診ですね。その上で、血液検査で見つけられる病気も見つけましょうねと。この血液検査も、正常な時のデータがある方がいいのです。血が濃いとか薄いとか、結構個体差があるので、それが分かっているのはメリットになると思います。

 ――五感を使った診察で、どんなことがわかるのでしょうか。

 聴診で心音などが分かります。触診は腫瘍など体表にできているものだったら分かります。専門家として触る部位を理解して触りますので、乳腺に腫瘍ができていたとか、リンパが腫れていた、といった異常が見つかることもあります。

 貧血だと歯茎の色が悪くなります。見ると明らかに貧血という子もいますので、見るだけで分かることもあります。見てもらう、触ってもらう、聞いてもらうというのは、診察の基本中の基本です。

気になる症状がなくても健康チェックを(Getty Images)

 ――血液検査をしている、という飼い主さんもいらっしゃいました。血液検査から分かること、わからないことを教えてください。

 臓器の判断、肝臓が悪いとか腎臓が悪いというのは、血液検査からわかりやすいですよね。血中のホルモンも今は定量化しやすくなり、院内検査でも分かるようになりました。ただ正直に言って、分からないことも多々あります。動物では腫瘍マーカーがまだ一般的ではありません。だから、消化管の腫瘍や肺の腫瘍などは、なかなか分からない。肺に腫瘍ができていても、血液で分かるのは末期になってからなのです。血液で分からないことも多々ある、ということはご理解いただけたらと思います。だから、レントゲンやエコーなどを使っての検査も必要になりますが、健康診断でどこまでやるかは難しい。気になるところがあるなら検査を進めればいいと思います。

 ――CT検査も受けた方が良いのでしょうか。

 レントゲンやエコーで特に異常がなければ、健康診断でCTはいらないのではないかと思います。やったほうがいいという先生もいらっしゃるかもしれませんが、私はそれほど必要ないかと思っています。

 何かあってこの部位を見たい、というときはありますよね。特に頭部はレントゲンでの判断が難しいのです。例えば鼻の中に何かあるというときはレントゲンでは判断がつきにくいのですが、CTは断面の画像が見られます。ただ健康診断でそこまで必要かと言われたら、それほどでもないと思います。

 動物の場合、CTや内視鏡は麻酔をかけて行います。動くと検査ができないので、不動化といって動かなくするための麻酔が重点になります。麻酔をかけることをとても心配なさる飼い主さんも多くいらっしゃいますね。

 ――麻酔の体への負担、危険性はどう考えたら良いのでしょう。

 麻酔のモニターが良くなっていますし、みなさん立派な設備を持っていらっしゃるので、麻酔に対するリスクは非常に低くなっていると私は思っています。もちろん高齢になれば人間でも動物でもリスクはありますが、基本的に麻酔はそれほど怖いものではないです。麻酔ちゅうちょしたために病気が進行するとか手術せずそれが元で……、となるのはナンセンスだと思います。病院の先生が大丈夫とおっしゃるならば、それを信頼して、手術なり検査なりしてもらったほうがいいと思います。

気軽に獣医師相談を

 ――健康診断は、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

 動物病院は公共性が認められておらず、同じエリアでも自由競争でやらなくてはなりません。例えば不妊去勢手術だけでも同じ料金だったら受けやすくなると思っています。

 自由競争なのでいくらぐらいというのは言いにくいのですが、血液検査だけだったら1万円程度で済むと私は思っています。CTは正直高いです。レントゲン、エコーはそれほど高くないと思います。

 動物病院の先生と、ご相談なさればいいと思います。これはいくらぐらいかかるのですかと聞いてもらって全く構わないです。そういうことも気軽に聞ける先生と仲良くなってもらったらいいんじゃないかと思います。

 やっぱり、かかりつけの病院をもって欲しいですね。かあっても、すぐに相談できる。ぜひ気軽に動物病院に来ていただいて、受付の職員さんや動物看護師さんと話をするということでも、何かヒントを得られることはありますし。体重を測りに来ていただくだけでも構わないと私は思っています。

 4~6月ごろは、フィラリアの予防で動物病院に来られる方が多いです。ただそのは、動物病院やはり忙しいのです。一方、1~3月は比較的余裕があることが多いので、そのころに健康診断に来ていただくと、よりゆっくりとお話しできるかなと思います。

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sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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