地域猫活動って何をするの? 周囲と協力して、できることからやってみよう

白黒猫
元地域猫の「かっぱ」ちゃん。今は亀山さんの家で穏やかに暮らしています(ねりまねこ提供)

 地域猫活動という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 東京都練馬区のNPO法人「ねりまねこ」副理事長の亀山嘉代さんは、2010年に区保健所が公募する「地域猫推進ボランティア」に応募し、行政と協働して地域猫活動を行ってきました。地域猫とはどんな猫なのか、そして地域猫活動の具体的な内容について伺いました。

(末尾に写真特集があります)

――地域猫とは、どんな猫なのでしょう。野良猫との違いは何でしょうか?

 野良猫は、外で暮らしているために繁殖したりごみをあさったりと、様々なトラブルが起きることがあります。野良猫を適正に管理することでトラブルを防ごうというのが、地域猫活動です。地域に趣旨をご理解いただいた上で、不妊去勢手術や適切な餌やりで管理された猫が地域猫です。

 野良猫はどんどん繁殖します。そうすると糞尿(ふんにょう)も増えるし、餌をやる人も増える。すると人間同士のトラブルにつながってしまうこともあります。まず猫を避妊去勢手術して、繁殖を抑制することが第一です。そして猫に餌をやる方にはマナーを守っていただくことが必要ですので、猫に関わる人たちのマナーも向上させていく。猫の側、関わる人間の側、両方に目を配り、トラブルを減らして平和なまちづくりをするのが地域猫活動です。

――地域猫活動は、具体的にどんな活動をするのでしょうか。

 私が住んでいる東京都練馬区の場合だと、区に登録している「地域猫推進ボランティア」として活動しています。まず、保健所の職員と一緒に、地域の町会長や自治会長のところへ趣旨の説明に伺います。そこでご理解いただいた上で、対策が始まります。

 実際の対策は、猫がいるエリアのお宅約10~20軒に直接伺って、どんな猫が来ているか、猫でどんな困りごとがあるかを詳しく教えてもらい、私たちの対策について説明します。さらにその外周エリア、30~50軒ぐらいにチラシを配布して、作業のお知らせをします。

捕獲器
捕獲作業に使う捕獲器(ねりまねこ提供)

 その後、捕獲作業が始まります。捕獲器というかごを用意して、猫がいるエリアのお宅に使い方を説明し、置かせてもらいます。猫を捕獲するときは、寒い時期だと捕獲器に布をかけてもらったり、玄関などでひと晩預かってもらったりするよう、お願いをすることもあります。捕獲した猫は翌朝、私たちが引き取り、動物病院で不妊去勢手術をして一泊させた上で、また同じ場所に戻します。練馬区は登録したボランティアグループが飼い主のがいない猫の不妊去勢手術する場合に、費用を助成しています。

 不妊去勢手術が終わった猫は、その印として片方の耳先をV字形にカットしてあります。活動が終わったら、どんな猫を捕獲して不妊去勢手術が終わったか、写真付きのチラシを地域に配布します。野良猫の糞尿で困っている方には、野良猫のトイレ設置の仕方もご紹介します。

――地域猫活動のなかで、猫に餌をあげることはあるのでしょうか?

 あまりないですね。実際、猫たちは誰かから餌をもらって生きています。なので、私たちは、新たに誰かに適切に餌をやってもらうというよりは、すでに餌を与えている人たちにきちんとマナーを守ってもらうということをお願いしています。

 餌を置きっぱなしにすると、周辺から猫が集まってしまうだけでなく、カラスや害虫も集まってしまいます。正しい餌やりというのはとても大切なことなのです。

 自分の庭なら問題ないですが、他人の敷地などでは許可無くできませんので、ご理解をいただいた場所であることが大事です。餌やりの場所を決めて、時間も決めます。すると猫は決まった時間に集まるようになりますので、猫の頭数に合わせて適切な量の餌を与えます。終わったら片付けて、清掃をします。

子猫
「ねりまねこ」のシェルターで保護した子猫(ねりまねこ提供)

――地域の方への広報は、どうしたらよいでしょう。

 オフィシャルな活動であることを、出来るだけわかるようにした方が賛同を得やすいんですね。練馬区ならば、区が野良猫対策のチラシを作っているので、それを元に説明をします。

 地域猫活動をしていない地域の場合、まずは近所の方にお話しするのがよいのではないでしょうか。「野良猫が家に来て、自治体などに相談したら不妊去勢手術はしたほうがよいとアドバイスを受けたので、やってみようと思うんだよね」と。その時に自治体などからもらったチラシを手渡すとか。そんなふうに、小さなところから地域猫活動を始めてもらったらいいのかなと思います。

「ねりまねこ」の理事長と副理事長
NPO法人「ねりまねこ」理事長の亀山知弘さん(右)と副理事長の嘉代さん(ねりまねこ提供)

――1人でやるよりも、周囲と協力してやったほうがよいのですね。

 みんなの理解と協力を得ながら進めたほうが活動も楽しいし、続けられると思います。私が11年前にボランティア登録して自分の庭で地域猫活動を始めようと思った時に、まず近隣の方に説明したんです。そうしたらみんな賛同してくれて、周りの人が捕獲をしたり、動物病院に連れて行ったりしてくれたんですね。私は声をかけただけで、町のみなさんが自発的に動いてくれた。みんなと一緒にやっていけたら、楽しいし、続けられるのかなと思います。

――地域猫活動で大事なポイントはなんでしょうか?

 自治体のホームページで、野良猫対策を調べてみてほしいと思います。自分のオリジナルの活動ではなく、自治体のガイドラインを見て、公益的な活動になるよう進めていくことをお勧めします。

 地域猫というと、みんなでかわいがるとか、みんなで飼うとか、そういう誤った表現がメディアでもされていることがありますが、そうではないです。地域のなかで適切に管理しているから地域のなかで面倒をみているように見えるけど、それは結果としての話であって、一番の目的は地域の中でのトラブル解決のためにやっているのです。

捕獲器の中の猫
捕獲器で捕獲された猫(ねりまねこ提供)

――地域猫活動を知っているけど始めてはいないという方、野良猫のトラブルで困っている方もいらっしゃると思います。メッセージを送るとしたらどんなことでしょうか?

 あまり難しく考えず、まずはできることからやってみましょうと伝えたいです。自治体や地元の動物愛護団体のホームページを見てみるとか、そんなところから始めてもいいと思います。

 全部自分で解決しようとしなくていいんです。自分が主体的に動かなくても、だれかの手伝いから始めたっていい。

 みんな一人一人で悩んでいるんですね。だけど野良猫トラブルを何とかしたいと思っている人は、実はたくさんいます。その一人一人がつながると、対策がどんどん進んでいきます。まずは地域の中で同じように猫のことを気にしている方と、つながっていけたらいいなと思います。 

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◆亀山さんへのインタビューの様子は、sippoのポッドキャスト「犬猫だらけの夜」で配信しています。spotifyApple Podcastsのほか、Google Podcastなどでも聞くことができます。

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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