猫との日々の心得とは 短歌&エッセー集「これから猫を飼う人に伝えたい11のこと」

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』

 猫歌人・仁尾智さんの短歌とエッセー本「これから猫を飼う人に伝えたい11のこと」(辰巳出版)が発売された。

 同書には、猫との一生に当たる「二十年」、猫のために飼い主ができることの「心がけ」「去勢・避妊」など、猫と暮らすための心構えとしての11項目が、仁尾さん独自の優しい語り口のエッセーと短歌でつづられている。

 ぬくもりのある水彩画と手書き文字は、イラストレーターの小泉さよさんの手によるもの。2人は猫専門誌「猫びより」で人気連載中の「猫のいる家に帰りたい」でも長くタッグを組む人気コンビだ。

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』
エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』

 この本は、猫の保護や譲渡活動を行う「NPO 法人東京キャットガーディアン」で開催されたパネル展で作られた冊子がもとになっている。その冊子は私家版として、2015 年の発売から現在まで、2000部発行のロングセラーとなった。

 今回の書籍化で、短歌とエッセーを加筆修正し、イラストを描き下ろした。初版限定ふろくとして、仁尾さんの短歌と小泉さんのイラスト付きの「命名書」がついているのも魅力だ。

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』
初版限定ふろく「命名書」。色々な使い方ができるのがユニーク

 同書について、仁尾さんと小泉さんそれぞれに制作秘話を聞いた。

仁尾さん「生き物と暮らす覚悟を伝えたい」

――「11項目」は、どのように決まったのでしょうか?

仁尾さん:もともと保護猫施設での「これから猫を飼う人に伝えたい10のこと展」という展示から始まったので、ただ「猫を飼うことは楽しい! どんどん飼いましょう」というスタンスだけじゃなくて、少し「生き物と暮らすときに必要な覚悟」みたいなことも伝えたいと思いました。

 猫の一生の長さである「二十年」と、看取りに関する「別れ」はすんなり決まりました。その他の項目は、猫との暮らしで気をつけたいこと、楽しいこと、気づいたことなどをシーンごとに切り取ってタイトルに落とし込みました。

 書籍化の際に「去勢・避妊」を追加しましたが、展示イベントを行った東京キャットガーディアンでは去勢・避妊手術をしてから譲渡することが前提だったので、特に書く必要がないと思って入れていませんでした。

 イベント終了後に増刷して、他のお店で販売していただき始めて、だんだん「これ、いちばん大事な前提が欠落しているのでは……」と気になりはじめて、書籍化するときには加えよう、と思っていました。

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』
11 のこと①「二十年」

――「猫を飼おうと思っている人」たちに語り掛ける前提として、心掛けたことはありますか?

仁尾さん:僕自身、何匹もの猫と接してきているだけで、専門的な勉強をしたわけでも、資格があるわけでもない、いわば「ただの頼りない猫好きのおじさん」で、その目線の高さ(低さ)はちょっと大事なのでは、と思っています。

 獣医さんや保護猫団体のスタッフの方から直接言われるとちょっぴり威圧的に感じてしまうようなことも、ここに書いてあるような感じだと受け入れてもらいやすいかな……とは考えています。実際、私家版は動物病院に置いていただいたり、保護猫団体さんが譲渡の際に渡してくれたり、という形で使っていただけることもありました。

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』
11 のこと①「二十年」

――小泉さんのイラストや、小泉さんご自身の印象を教えてください。

仁尾さん:もともと僕が小泉さんのイラストのファンで「これから猫を飼う人に伝えたい10のこと展」のときに、お声をかけさせていただいてから5年、ご一緒するお仕事が多くて、ありがたいです。小泉さんの描く猫のイラストは、かわいいのにかわいすぎないところが好きです。

 あと、小泉さんの描く猫はみんな「なにかを思っている顔をしている」のがすごくいい。シンプルな線なのに、ポーズ、表情が生き生きとしていて。手書き文字もかわいいのにかわいすぎなくて、とてもいいですよね。小泉さんご自身は、とてもざっくばらんで、おたがい思ったことを言えるので、すごくやりやすいです。

小泉さん「仁尾さんとは猫への距離感が近い」

――完成した本への想いを教えてください。

小泉さん:東京キャットガーディアンでのパネル展で、初めて仁尾さんの短歌とエッセーを読ませていただいたときから、猫への視線に共通するものを感じ、とても共感できました。

 私家版と今回のイラストでは、かなり印象を変えましたが、月日を経てさらに短歌とエッセーに思い入れが増したので、イラストに『伝えたい』気持ちを込めることが出来てよかったと思います。

 おさまりのいいサイズ感のハードカバーなので、愛着の持てる、大切にしたくなる一冊になってくれたかなぁ……皆さんにもそう思っていただける本になっていたらいいなぁ……と思っています。

エッセー集『これから猫を飼う人に伝えたい 11 のこと』
11 のこと④「期待」

――仁尾さんの短歌や文章の印象について教えてください。

小泉さん:仁尾さんとは、猫への視線の向け方や距離感が近いような気がしていて、いつも短歌やエッセーをすんなりと受け入れることが出来るのです。同時にとても普遍的で、猫と関わる人たちの気持ちにすっと寄り添うことが出来る、とても温かい作品を作られるなぁと思っています。長くコンビを続けていますが、猫に関しても、その他のことでも、違和感なくお話しさせていただけるので、まったく長いと感じないのです。

 毎回イラストには特に指定はなく、わたしが思ったように描かせていただいていますが、なるべく仁尾さんが見ている風景を再現できるように、というのは考えています。ほとんど「とてもいいです!」と速攻でお返事をいただくことが多くて(笑)、ありがたいです。

――小泉さんにとって、猫とはどんな存在ですか?

 30年ほど猫との暮らしをしているので、もういなくてはならない存在です。その間に半年ほど猫のいない時期があったのですが、禁断症状(?)でとてもイライラしてしまったので(笑)、いた方がいいなぁと思います。

 描けば描くほど、猫は本当に「美しい」生き物だと感じます。その美しさを少しでも表現出来るように、ずっと見続けていけたらいいなぁと思っています。

猫を飼う前に家族でシェア

 最後に、編集担当の宮田さんにおススメコメントを聞いた。

「猫を飼いたいと思ったとき、本書を家族でシェアしてもらえたらと“ふりがな"を振りました。現在、学校図書館の関係者の方への献本キャンペーンを実施していますので、ぜひ子どもたちにも読んでほしいです」

これから猫を飼う人に伝えたい11のこと
著者:仁尾 智
イラスト:小泉 さよ
出版社:辰巳出版
サイズ:四六判/48ページ
価格:1,300円+税
安田有希子
2015年からsippoにて「猫アレルギーですけど」の連載開始。2匹の元保護猫と暮らして4年目に猫アレルギーが発覚するも、平和に暮らす。猫の好きなパーツは、小さく並んだ門歯。幼少の頃「うちのタマ知りませんか?」のすごろくに大ハマりした年代。栃木県出身。

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