住職の大塚さんと寺猫のムーンちゃん=2021年6月、高松市の80番札所・国分寺、木下広大撮影
住職の大塚さんと寺猫のムーンちゃん=2021年6月、高松市の80番札所・国分寺、木下広大撮影

灯籠の中でくつろぐアイドル猫 道でないていた満月の夜

 出会えたらご利益があるかも? 香川県の由緒ある寺にすむ1匹の猫が、訪れる人の間で人気となっている。

猫たちが本作りをお手伝い 7匹の「社猫」がいる同人誌印刷所

 四国遍路の札所の一つ、国分寺(高松市)にすむメスの「寺猫」ムーンちゃん(10歳)。人なつっこい性格で、参拝に来た人の足にすり寄るほどだ。

 ムーンちゃんが寺に来たのは10年前。住職の大塚純司さん(48)がある日の夕方、寺の近くで犬を散歩させていると、道端で鳴いている子猫を見つけた。よちよちと歩く姿は、生まれたてのように見えた。近くに親の姿はない。気になったが、親が戻ってくるかもしれないと思い、その時は引き返した。

 数時間後、子猫が気になった大塚さんは車で元の場所に戻った。まだ鳴いていた。車にひかれて死ぬかもしれない。寺で飼う覚悟を決めた。抱えると、地平線のすぐ上に大きな満月が浮かんでいるのが見えた。ムーンちゃんと名づけた。

 今では「寺のアイドルかマスコットみたいな存在」と可愛がる。大きな病気もなく、すくすくと育った。最近では、おやつを持ってくる人や、わざわざ「ムーンちゃんはいますか?」と尋ねるファンもいるほどだという。

 日中は寺の周辺を歩き回っているが、夕方には納経所の近くに戻ってくる。お気に入りの灯籠(とうろう)の中やお堂の縁側で涼むことが多い。参拝に訪れたお遍路さんは「こんなおとなしい猫は珍しい」「ご利益がありそう」となでる。

 住職の優しさが救った寺の人気者が、今日も人々の心を癒やしている。(木下広大)=朝日新聞デジタル2021年08月15日掲載+09:00>

朝日新聞
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