知っていれば早く気づけたかも… 愛猫の病を「もう後悔したくない」と学ぶ飼い主の今

寝ているときは飼い主でさえ「どっちがどっち?」と思うほどそっくりな、白猫きょうだい
寝ているときは飼い主でさえ「どっちがどっち?」と思うほどそっくりな、白猫きょうだい

 言葉を話せない動物の不調や異変を感じ取ってあげられるのは飼い主だけ。病気の知識があれば早く気づき、救えることもあるかもしれない。愛猫をみとったことで、学び、知ることの大切さを痛感したという大橋さんの経験をうかがいました。

愛猫に余命宣告 「後悔したくない」と電話した先は……?

 岡山県で17歳の愛猫、ニャーと暮らす大橋さん。猫を飼い始めたときにはもう一匹、ニャーのきょうだい猫のチビが一緒でした。
 そのチビが亡くなったのは今から3年前のこと。膵臓(すいぞう)のリンパ腫でした。

ニャーになめてもらうのが大好きだったチビ。いつも寄り添う仲良しきょうだいでした
ニャーになめてもらうのが大好きだったチビ。いつも寄り添う仲良しきょうだいでした

「猫を飼ったのはこの2匹が初めて。始めの10数年は、家の中と外と、自由に出入りさせていましたが、チビがエイズになってしまって……。その数年後、今度はがんが見つかったんです。膵臓リンパ腫と再生不良性貧血と判明しました」

 下された診断は「余命3カ月」。獣医師の誤診を疑ったわけではありませんが、「あきらめたくないし、後悔したくない。何かできないか」という思いが募ったといいます。遅くなって帰宅すると、留守番していたニャーが珍しく大暴れしていました。

「ニャーが本棚から雑誌を落として床に散らばっていました。そして古いファッション雑誌の上に座っていたんです。その本に獣医師の服部幸先生の記事が載っていて。『この先生なら助けてくれるかもしれない』と、すぐにお電話したんです」

 大橋さんは後日、チビは連れずひとりで、東京猫医療センターの服部先生の元へ相談にいきました。

「どんな治療の選択肢があるか、何度か訪問したりお電話で相談したりしました。主治医のところでは『選択する』ことがほとんどできなかったんです。自分の猫だし、どんな可能性があるのか知って、自分で選択して進めたかったんです」

猫と飼い主 両方に寄り添える治療を

 主治医と服部先生とでは、治療に対する考え方が違いました。末期となってごはんが食べられないチビに、服部先生は「シリンジで与えてみたら」とアドバイスをくれました。

 どちらが正しい・間違っているという話ではなく、あくまでも取り組み方の違いだったと大橋さんは振り返ります。

「助かる見込みのない猫に少しぐらい食べさせたからと言って、回復するわけではありません。でも、私にもできることをアドバイスして頂けたのがうれしかった。当時の主治医は猫を飼った経験がなくて。病気の知識はあっても、猫のこと、猫の飼い主の気持ちは分からないんだな、と思いました」

 愛猫にできる限り寄り添いたいと願う大橋さんに服部先生がかけた言葉は「思う存分、思うようにやったほうがいい」。
 「そのおかげで後悔はしていません」。大橋さんの声は晴れやかです。

病気が分かってから完全室内飼育に変更。外に出たがるので、チビに服を着せ、リードをつけてお散歩させていました
病気が分かってから完全室内飼育に変更。外に出たがるので、チビに服を着せ、リードをつけてお散歩させていました

「生きて!」と思うのは飼い主のエゴなのか?

 懸命な治療にもかかわらず、チビに残された時間はどんどん短くなっていきました。

「服部先生の言葉には何度も励まされ、ときには気づかされました。抗がん剤を使うべきかどうか選ぶとき、『何を選んでも、飼い主のエゴのような気がする』って、思わず泣いてしまったことがあったんです」

 服部先生からかけられた言葉は、「猫を飼い始めたときから、もうエゴは始まってるんですよ!」。

「はっとしました。だったら最後まで全うしなきゃ無責任だと。『その時飼い主が選んだ道が、いつだって正しいんです』とも言ってくださって、それで迷いが吹っ切れました」

 いよいよ最期のときが近づき、精いっぱいやったという思いが強かった大橋さんは、亡くなる2週間前には手作りのひつぎ、好きだったタオルやおやつ、おもちゃ、写真も準備しました。

 ただ、大橋さんが心配したのはきょうだいのニャーのことでした。

日なたぼっこもいつも一緒だった2匹
日なたぼっこもいつも一緒だった2匹

「チビが亡くなる様子をニャーに見せていいものか。1匹だけになってしまったら、ニャーは大丈夫なのか」

 服部先生からのアドバイスは「見せない方がいい」でした。それに従って、最期が近いとわかったとき、ニャーを別の部屋に隔離しました。臨終の間際にチビが苦しんだ時、離れた部屋のニャーは床に頭をこすりつけ、今まで聞いたこともないようなうなり声をあげ、泣き叫ぶように身もだえしていたといいます。

「きっと何かを感じたんでしょう。あんなニャーを見たのは初めてです。亡くなるところに立ち会わせていたら、もっとパニックになっていたと思います」

飼育スタイルを変更「悔いのないように」

 チビのエイズが分かってから、飼育方法を完全室内に変えました。少しの異変も見逃さないよう、毎日スキンシップでニャーの体にさわり、注意を払っているといいます。

 17歳になったニャーはますます甘えん坊に。しかし心臓に病気が見つかり、現在は闘病中です。

チビが亡くなってから、すっかり甘えん坊になって抱っこが大好きになったニャー
チビが亡くなってから、すっかり甘えん坊になって抱っこが大好きになったニャー

「知らないことの恐ろしさを思い知りました。最初から完全に室内で飼育していれば、エイズにかかることもなかったはずだし、がんだってもっと早くに発見できたかも」

 そう振り返る大橋さんは、チビが亡くなってから猫の飼い主向けセミナーにも参加するようになりました。今はニャーの心臓病と向き合いますが、「チビの時よりも数段冷静に取り組めています」と語ります。

 愛猫を健康に、少しでも長生きさせてあげるには、飼い主がしっかりした知識を持つこと。その大切さを痛感した大橋さんは、今も勉強を続けながら、悔いのない日々を送ろうと決心しています。

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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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