愛するペットとの別れ、飼い主はどう受け入れたら? 供養を行う寺の住職に聞く

住職と猫
寺にいついた猫をあやす成田淳教住職

 飼っていた猫(メス)が昨年末、虹の橋を渡った。19歳10カ月と長寿だった。彼女の最期に立ち会えたことは飼い主、いや「飼いしもべ」としてよかったと今でも思う。

このあとどうすれば?

 亡骸(なきがら)を愛用のベッドに横たえ、花を供えてから、ふと思った。このあとどうすればいいんだろう? 「もう永くはない」とわかってからも、その後のことを調べたり準備したりするのは彼女に悪い気がして、何もしていなかったのだ。

 かかりつけの動物病院に相談すると、ペットの火葬や供養をしてくれるお寺を紹介された。電話をかけると予約が入っていて「3日後なら」とのことだった。そのまま亡骸とともに数日暮らすのは、悲しみが増すばかりに思えた。急きょネットで見つけたのが、感応寺(東京都世田谷区)だった。

 翌日、寺が提携している火葬場で荼毘(だび)にふした。遺骨は持ち帰った。妻と相談し、後日、寺で供養してもらい、合同埋葬してもらうことにした。家がもう少し広かったり、庭があったりすれば、埋葬や部屋の一画に安置する選択をしていたかもしれない。

 感応寺でお経をあげてもらい、埋葬に立ち会うと、なぜかほっとした。

 読経のあと、住職の成田淳教(なりた・じゅんきょう)さんが「極楽浄土にいったペットたちは、こちら(現世)を見たり行き来したりできます。我われが気づかないだけで、そばに来てくれているかもしれません」という話をされたのもあったのだろう。

 だが、考えてみれば感応寺は浄土宗で、筆者の実家とは宗派が異なる。いま暮らしているマンションには仏壇すらない。それでも一種の安心感があったのはなぜだろう。飼い主はペットとの別れをどう受け入れるべきなのか。成田住職にあらためて話を聞いた。

「お葬式は待ち合わせのための儀式」

 感応寺は、2002年ごろからペットの供養を始めた。ある朝、門前に新聞紙にくるんだ猫の亡骸が置いてあったことや、「カメを埋葬したい」という親子が訪れたことなどがきっかけだったという。犬、猫のほか、フェレットなどの小動物や鳥も供養する。

 具体的な件数は把握していないとのことだが、筆者が供養してもらった時は、うちの猫のほかに20匹以上のペットの名前が読み上げられた。

住職はペットの供養を「待ち合わせの儀式」だという。供養によってペットは極楽浄土にいく。仏教(浄土宗など)では飼い主もいずれ極楽浄土にいくので、「いつかそちらで会いましょう」ということになる。

「宗派や宗教が異なってもご供養することは問題ありません。当寺の儀式作法は、『この世のお気持ち』を来世にいった子に送るものですので、『その子』のためになります」(成田住職)

 住職自身、飼っていた猫を2頭、病気で亡くしている。一時はペットロスのような状態になり、泣くに泣けないまま頭痛ばかりがひどくなった。しかし今では「彼らの向こうでの姿を想像しながら過ごしています」という。

「向こう(極楽浄土)から見てくれている、ときどき来てくれているという実感があれば、何もわからないよりはよいと思います。亡くなったあともつながりを感じられる場面があるということですからね」(同)

住職
「仏教には『やらなければいけないこと』はない」と住職はいう

 一方で、ペット供養の「現実的な意味合い」として次のように語る。

「人間と同じようにご供養することで、『家族と同じように送ったんだ』という安心感はあると思います。今は(ペット供養について)『自分たちなりの方法で』とおっしゃる方も多いんですけど、あとになって『あれでよかったのか』と不安を抱いてご供養にいらっしゃる方もいます。宗教のことなので難しいですけど、お嫌じゃなければご先祖と同じようなやり方でお送りしておいたらよいのではと思います」

 ただ、お経をあげて供養しなければならないということでもないと住職はいう。

 仏教の考えでは、ペットと飼い主は「縁」が強いため、ともに生まれ変わった場合でも親子であったり、ペットと飼い主であったりといった関係性で出会うことがあるのだという。ただその場合、お互いにすでに知った仲であると認識できない。それもそれでいいかもなとも思う。また彼女(うちの猫)と出会う喜びがありそうだ。

「亡くなったんだな」という思いかみしめた

 彼女の供養から約1カ月が経った。自分はペットを失ったことによる悲しみを乗り越えることができたようだ。これは感応寺で供養してもらったことが大きいと思う。ひとつは、悲しみを和らげてもらい、その一部をお寺に担ってもらったように感じたからだ。

 そしてもうひとつは、「確認」できたからではないだろうか。火葬、供養、埋葬という過程のひとつひとつで、「ああ、この子は亡くなったんだな」という思いをかみしめた。

 ペットとの別れにおいては、どんな方法をとるにしても、こうした「確認」、いわば自分に言い聞かせることが重要なのだろう。

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土井大輔
ライター。ゲーム会社で武将がいっぱい出てくるゲームを作っていたはずが、いつのまにかフリーランスに。小学生の頃に飼ったイカついシェパードを、漫画『北斗の拳』から「北斗」と名付けるも、父はその名を恥ずかしがって、予防接種のとき「ポチ」で押し通した思い出。

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