「猫と暮らすデメリット」発信したわけ 「大変なところも知り覚悟決めてから迎えて」

 コロナウイルスの影響で、ペットを飼い始める人が増えたという。覚悟のないまま犬や猫を家族に迎え、不幸な結果を迎えないように、動物の可愛いところばかりではなく、家族に迎える「デメリット」を知ることも大切ではないだろうか。

(末尾に写真特集があります)

「猫、こんなに大変?」驚きの声

 『ねこ初心者が感じる、ねことの生活におけるデメリット』。今月5日にツイートされたそんな印象的なタイトルの画像が、ツイッターでひそかに話題になっている。これまでに3.6万件リツイートされ、5.8万件のいいねが寄せられた。

 そこには、「夜中大暴れしたり大きな声で鳴くなどする」「当然のごとく医療費が高い」「懐かないこともある」など、かなりシビアな内容が10項目にわたってつづられている。

猫と暮らすデメリット一覧
ときをさんがツイートした、『ねこ初心者が感じる、ねことの生活におけるデメリット』(ときをさん提供)

 作者のときをさんは、あるニュースがきっかけで、猫と暮らす上でのデメリットを発信する必要性を感じたという。

「あの画像を作ろうと思ったのは、コロナ禍で安易に猫を購入した人が、飼えなくなって手放した、という悲しいニュースを見たからなんです。そもそもメディアやSNSでは“猫はこんなに可愛い”という情報があふれているのに、「猫を飼う大変さ」を伝える発信はあまりない。猫は可愛いだけじゃなく、イメージよりも手のかかる動物。今猫を飼おうか検討している人には、大変なところを知って、覚悟を決めてから家族に迎えて欲しいと思ったんです」

 ときをさんが画像をツイートすると、猫と暮らす人からの共感や、猫を飼うことを検討している人からの驚きの声があったという。

「『こんなに大変だなんて思ってなかった!』というコメントも多く寄せられました。もちろん、個体差はあると思うのですが、命ですから思うようにいかないことは想定していただいた方が、実際に飼ってからのギャップは少ないと思うんです。家に迎えてから、『こんなはずじゃなかった』となってしまうのが、猫にとっては一番不幸ですから」

愛猫との暮らしから実感したこと

 ときをさんは現在、母親と、2歳の保護猫の「雷蔵(らいぞう)」と共に暮らしている。『ねことの生活におけるデメリット』に書かれたことは、ほとんどが雷蔵との暮らしからの実体験だという。

黒猫の子猫
雷蔵は、1人では登れない高さの生け垣の上に放置されていたところを、ときをさんの母親が発見した(ときをさん提供)

「雷蔵は、まだ離乳したての子猫のころ、家の前の生け垣に人間の手で放置されていた捨て猫でした。私も母も、うさぎやハムスターの飼育経験はあったのですが、猫を飼うのは雷蔵が初めて。ある日突然保護してしまったので、猫に関する予備知識もなく、すべてが探り探りでした」

 ときをさんがまず驚いたのは、雷蔵の食の好みの細かさだった。

「日々のごはんは健康維持にもつながるので、家計を圧迫せず、品質もそれなりのものをと考えて選んでいるのですが、雷蔵は好みや食べムラが激しい子で、昨日まで食べていたキャットフードをある日突然拒否することも。色々試して、今はやっと品質と好みの折り合うフードが見つかりましたが、それでも時々食べ飽きて別のフードを要求します。『与えたフードを食べるもの』と思っていると、苦労しますね(笑)」

 また、「猫はおだやかで人になつくもの」というイメージを持っていたときをさんは、雷蔵の神経質で人を寄せ付けない性格にもおどろいたという。

黒猫
1人が好きで、人間は好きじゃないという雷蔵。来客が来ると固まるという(ときをさん提供)

「そもそも、らいちゃんはあんまり人間が好きじゃないんですよね(笑)もう保護して2年経つんですが、はっきり言って今もなついてはいません。かと言って、3日ほど家を開ける事情があり、ペットホテルに預けた時はごはんも食べずにケージで固まっていたそうで、迎えに言った時には文句の嵐!なので、一応家族だとは認識されているようです」

デメリット、もっと発信して欲しい

 気難しくなつかない雷蔵だが、“猫と暮らすメリット”についても、ときをさんは話してくれた。

「やっぱり可愛いですよ。普段は抱っこなんてさせてくれないのに、どういう風の吹き回しか、気が向くと寝る時に足元に寄り添ってくる。そんなツンデレがたまりません(笑)仕事が忙しくてしんどいときも、『家に帰ればらいちゃんがいる』と思ってがんばれる。手がかかるけど、可愛い存在です」

黒猫
画像に記載したこと以外にも、脱走対策などの初期投資が必要だとときをさん(ときをさん提供)

 ときをさんは、雷蔵を家族に迎えたことで、保護猫という選択肢をもっと多くの人に広めたいと考えた。そこで、ツイートした画像には、『保護猫を検討して欲しい』と呼びかけるメッセージも入れた。

「『初心者に保護猫を飼うのは難しい』という反応も多くありました。でも今は、トライアルができる保護団体もたくさんある。その子の性格を知ってから家族に迎えられるのは、保護猫ならではだと思います。そういうメリットももっと広まって欲しいですね」

 ときをさんは、『ねことの生活におけるデメリット』を、もっと多くの人に知って欲しいと話す。

「猫を飼うことを検討している方はもちろん、私のように猫との生活が突然始まる方もいると思うので、『こういうこともある』ということが世の中に浸透していれば、縁があって飼い始めた時に、自分の負担も猫の負担も減らせると思うんです。私のツイートをきっかけに、今後は、影響力のある方やアイドル猫の飼い主さんにも、“猫と暮らすデメリット”を発信して欲しい。『覚悟ができていない人が飼うと、大変なことになる』ということが、きちんと浸透していけばいいなと思いますね」

黒猫
「雷蔵」という名前は、子猫なのにいかつい雰囲気から、響きで決めた(ときをさん提供)

 「命を迎える覚悟を持つ」。そんなあたりまえのことが、ときをさんのツイートを通じて多くの人の心に根付き、生涯の家族に出会う猫が増えることを願う。

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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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