乃木坂46 北野日奈子さん 愛犬「チップ」の発病、そして夢への第一歩

乃木坂46・北野日奈子さんと愛犬「チップ」
北野日奈子さん、愛犬「チップ」と(北野さん提供)

 動物愛護センターで運命の出会いを果たしたチップ(雑種・メス)と暮らす、乃木坂46の北野日奈子さん。シニア期に入り、病気を患ってしまった愛犬に寄りよりそう毎日の中、今、北野さんには生涯をかけて追い続けたい夢が生まれたと話します。

チップが引き出した家族の意外な素顔

 それぞれが「いつか犬か猫を飼いたい」と思いながらも、北野さんのご家族の間で動物の話題が出ることは、以前はほとんどなかったとか。ところが、チップを迎えてからというもの、家族全員の動物愛がダダ漏れになってしまったといいます。

「私と母はもともと愛が重いタイプなのですが(笑)、チップが来てからは、それまで気づかなかった父や兄の動物への愛情も感じるようになりました。野良猫の出産シーズンに、橋の下でダニまみれで鳴いていた衰弱した子猫たちを拾ってきて、動物病院で処置した後に、私と兄で譲渡先を探しきったこともありました。

 また、以前、家族で出かけた時に、前を走っている車が動物を轢いてしまう場面に出くわしたのですが、そういうときは、父と兄がテキパキと役割分担をして、遺体がそれ以上傷つかないように安全な場所に移動してあげたり、警察に連絡をしたり。二人とも口数は多くないけれど、行動で動物への愛情を見せてくれるんです」

一緒に過ごす時間、介護でさえもうれしい

 そんな動物大好き家族に囲まれて育った愛犬のチップですが、実はこのところ、あまり体調が思わしくないようです。

「クッシング症候群(※)と、そこから来る糖尿病になってしまい、今は週に1回、動物病院で診察を受けています。糖尿病を発症した影響で、両目ともあっという間に失明してしまいました」

乃木坂46・北野日奈子さんの愛犬「チップ」
泡乗せチップ。かわいい!

 声をかけると振り向いてくれるなど、以前と変わらない反応を見せますが、もうその目に自分が映ってないと思うと悲しくなってしまうという北野さん。けれど、チップの病気をきっかけに、家族の絆はますます強くなっているといいます。

※クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)……ホルモンの分泌異常による病気で、皮膚炎や膀胱炎を発症したり、糖尿病を併発することがある。よく見られる症状として、水を飲む量や尿の回数が増える、腹部が膨らむなどがあげられる。

「なるべくお留守番をさせないよう、私もオフの日はできるだけチップといるようにしていますし、学生の妹も、学校が終わるとどこにも寄らず、真っすぐ家に帰ってきてくれます」

 新型コロナウイルスの影響で仕事が休みになることが多かったというこの春、チップと過ごす時間が増えたことで、「(仕事が忙しくて)一時期下がっていたチップの中の私の順位も、以前のポジションに復活したみたいです」と、うれしそう。

 目が見えなくなった不安からか、室内でおしっこをしなくなってしまったチップのために、家族全員が交代で外に連れ出すといったこともしているそう。

取ります! 動物介護士の資格

 この10月で14歳になるチップ。犬種にもよりますが、人間におきかえるとだいたい70代半ば。この先は老化も進み、ますます介護ケアが必要になってくるかもしれません。今、北野さんは、そんなチップのためにひとつの決心をしています。

「動物介護士の資格(民間資格、複数種あり)を取得するための準備を始めました。動物病院に勤める友人から、愛玩動物飼養管理士を勧められていたのですが、まずはチップに必要な資格から挑戦しようと思って」

 愛犬の世話をしながら、アイドル活動も資格の勉強もとなると、時間的にも体力的にも大変そうですが、「一発で取ろう!などと力まずに、自分のペースでじっくり前に進んで行きたい」とあくまで自然体。

「あまり遠くにゴールを作らず、努力をしたら手が届く範囲に目標をおいて、たどり着いたらまた次、というように、やれる範囲で頑張ろうと思います」

乃木坂46・北野日奈子さんと愛犬「チップ」
北野さんと一緒にいるチップは、とても幸せそう(北野さん提供)

夢を実現できる「強さ」を持ちたい

 実は北野さん、そう話しながらも「遠いゴール」もちゃんと見すえているようなのです。ただ、どうするのがベストなのか、今は葛藤もある様子。

「もちろん、動物愛護について、ファンのみなさんや世の中の人に話をしていきたい気持ちはあります。でも、いろいろな考えの方も、いろいろな立場の方もいる中で私が発信していくには、言葉選びも難しいですし、乃木坂のメンバーとしての顔もあります。考え込んでしまうことがたくさんあって……」

 けれど、入学する高校を決めるときや乃木坂46に加入するときでさえ、誰かの助言やサポートがあったこれまでの人生の中で、唯一、自分一人でできたのが「動物愛護の立場に立とう」という決断だったのだとか。

「たくさんの分かれ道の中から今に至る選択をしてきたけれど、『自分で運命を切りひらいてきた』という実感はあまり持てずにいました。だからこそ、小学生の頃からずっと考えている動物愛護については、何があろうとめげずに、自分でその道を作っていきたいと思えるんです」

 そのためにも「強くなりたい」と話す北野さん。

「命の重さはみんな同じで平等だということを伝え続けることで、なにか少しでも変えられることがあるならうれしい。そのためには、資格取得の勉強もそうですが、自分の強みをたくさん作っていきたいんです。私とは違う意見を持つ人からも、『でも、北野日奈子はああいう人間だから、彼女の考えもアリかもね』と認めてもらえるように。資格の取得はその第一歩かな」

 目を背けたくなるような現実はたくさんあるけれど、目指すのは、その実体が正しく伝わる世の中、人が動物に手をさしのべられる世界。いずれ活動を続けていく中で、「同じ思いを持った仲間達とそんな理想について語り合う日が来るのも楽しみ」と、しなやかな笑顔を見せてくれました。

北野日奈子さん プロフィール
アイドルグループ「乃木坂46」メンバー。2013年3月、2期生オーディションに合格し、2014年4月発売の8thシングル「気づいたら片想い」で正規メンバーに昇格。現在は選抜メンバーとして活躍中。
北野日奈子さん 公式ブログ

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阿部志穂
フリーライター、国家資格キャリアコンサルタント。これまでもっぱら“ヒトの働き方”について執筆。黒柴・古太(8歳)がやってきてイキモノと過ごす日常に目覚める。もの書き歴25年なれど、イキモノ書きとしてはビギナー。日々学びながら発信していきます。

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