花粉で散歩がつらい!? 専門医に聞く「愛犬家の花粉症対策」
暖冬の日本、花粉症の方にとっては、大切な愛犬のお散歩が最もつらい季節ではないでしょうか?今からできる「愛犬家の花粉症対策」について、島根大学医学部耳鼻咽喉科教授・川内秀之先生にお話をお伺いしました。
花粉症になるかは遺伝的に決まる
実は花粉症の人と、そうでない人は遺伝的に決まっています。両親がスギ花粉症だと、だいたい子供も花粉症になります。でも、遺伝的に遺伝子を持っていても、「そこにアレルギーになるものが無ければ発症しない」わけです。
赤ちゃんは、お母さんのおなかの中から生まれてきて、外界の色々な異物にさらされ、反応します。吸入系のアレルギーのほこりとかダニとかに対しては、みんな生まれてきてから一回反応するんです。反応して体の中に入ってくると、IgE抗体(即時的アレルギーをおこす抗体のこと)というのができます。
IgE抗体が年々身体の中でずっと増えていき、遺伝的にアレルギーを持っている人は、何年か経つと、抗体が急激に上がって、アレルギー症状が出てきてしまいます。ある日突然「アレルギー」になるわけでなく、身体の中で増え続けたIgE抗体が限界値を迎え、身体に「症状」として現れます。
花粉症アレルギーの症状としては、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状です。スギ花粉症は、昔は大人の病気と言われていたのですが、今の時代はスギ花粉症の幼稚園の子供もいますよ。日本ではスギ花粉症の有病者は約25%と言われています。
異物への反応起こりやすい環境に
戦後の日本は、細菌やウイルス、寄生虫などに常にさらされている状態で、アレルギー症状が出る環境ではありませんでした。
今は世の中がどんどんきれいになっていて、「細菌も、寄生虫もいません」というようになり、異物に対する反応が起こりやすい環境になってきました。なんでも除菌、殺菌と言って、細菌やウイルスを除去する時代になったことも、アレルギーの方が増えている理由の一つです。
また、ディーゼルパーティクルという、「油の粉じん」もアレルギー症状がでる理由の一つです。粉じんの粒子がスギ花粉と一緒になると、相乗効果が出てしまうんですよね。
現代の食生活の変化も関係しています。食品添加物、着色料など、ナチュラルなものでない食物の摂取が、現代社会で増えてきていますよね。食事による体内状態の変化が、アレルギー症状を起こしているのです。
ヨーグルトで乳酸菌を摂取しよう
哺乳類は、おなかの中に腸内細菌を持っています。要するに善玉菌がいっぱいいるわけです。小腸に、善玉菌が多く悪玉菌が少ないと、体質的にアレルギーになりにくいですね。腸内細菌はとても大切です。日ごろからヨーグルト、乳酸菌飲料などで乳酸菌をとっていると、アレルギーになりにくいと言われています。
愛犬の散歩は朝がオススメ
まず、お散歩に出る時間が重要です。スギの木は午前中は活動が少ないので、スギ花粉があまり飛散しません。ですので、お散歩に行くのは、花粉があまり舞っていない「朝」がおススメです。天気の良い日の午後になると、スギ花粉の飛散は多くなります。ちなみに、雨の日は雄花の開花が少ないので、スギ花粉は飛びませんが、次の晴天の日は多くなります。
そして、以下のことを意識することで、だいぶ症状を軽減することができます。
① 顔にぴったりフィットするマスクをする。花粉症にしてもアレルギー性鼻炎にしても、その原因物質に触れなければ症状は出ません。
② ゴーグル眼鏡をする。花粉症用のメガネが薬局などで安価で売られています。通常のメガネと違い、メガネの上や横にカバーがあるものなので、目に入る花粉を約90%抑えられます。
③ 帽子をかぶる。ナイロン製のつば付きの帽子を選んでください。毛糸など、花粉をくっつけてしまう素材のものは避けましょう。
④ レインコートのような、ナイロン系の花粉を吸着しない上着を着る。帽子と同様、毛糸などの素材は避け、花粉がくっつかないような素材の上着を着ましょう。
そして、帰宅したら身に付けていたものを全部脱いで、犬と一緒にシャワー浴びて、花粉を洗い流すのがベストです。当然ながら、犬の毛にも花粉が付着しますよね。着ていたものはすべて洗濯しましょう。
外出から戻ったら、着衣を玄関に置いておくことや、すぐに花粉を洗い流すことで、家の中に花粉を持ち込むことを防げます。
初期療法が大切、早めの対策を!
スギ花粉症の方は、症状が悪くなってから病院に行くのではなく、早めに診察を受けて薬を飲むことをお勧めします。大切なのは初期療法です。「鼻がむずむずしてきたな」と思ったら、受診して、なるべく早く薬を飲み始めるのが良いでしょう。
長く花粉症とお付き合いされている方は、毎年2月の頭くらいには受診されて薬を飲み始めています。重度のアレルギーの方は初期療法をすることで、アレルギー症状を最小限に抑えることができます。ひどくなってから来ても、すぐに薬で改善することは難しいので、早め早めに対策をしましょう。
飼い主も愛犬もストレスをためずに
ストレスがたまるとアレルギー症状が悪化します。自律神経のコントロールができなくなるからです。「副交感神経」が優位になると、アレルギーの症状が出やすくなります。
実際に、プロゴルファーなどが、練習ラウンドなどでは花粉症の症状に悩まされるのに、本試合のときには、アレルギー症状が出ないということもあります。本試合では緊張して「交感神経」が優位になるから症状が出ないのです。飼い主も愛犬も、ストレスをためずに過ごせるといいですね。
- 監修:川内秀之先生
- 島根大学医学部耳鼻咽喉科教授、日本鼻科学会元理事長。スギ花粉症に関する薬物療法、免疫療法のメカニズム、スギ花粉症治療米による免疫療法の研究について多くの論文を発表している。
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